エピソード2「サースとズフラ」
勇は、自分の部屋にこっそりチャオを連れていった。
そして、ベッドの下に隠しておいた、『チャオの基本』という
分厚い本を引っ張り出す。
勇の母の口癖はこうだった。
「チャオなんかに興味持ってるなら、
私立の中学に行くために勉強しなさい!」
昔から、チャオが欲しかった勇。
母に気づかれまいと、いつもここに隠していた。
あるページを開くと、こう書いてある。
「チャオは、きれいな水のある所でないと住めない」
そこで、試しにタライに水道水を入れて持ってきたのだが・・・
「何で?」
チャオは、いっこうに近づこうとしない。むしろ弱っているようだ。
「!!!」
勇は、この頃の水には有害成分が入っている事を思い出す。
そこで、弟の飼っているオタマジャクシのために
一日おいてある水をしっけいしてくる。
「チャオ!チャオ!」
ようやく、チャオはタライに入ってくれた。
「ふう・・・。そうだ。名前を考えないと。ありふれた名前は
やだなあ・・・」
部屋を見まわす勇。星が好きな勇は、
部屋いっぱいに天体写真をかざっている。
「そうだ!ピュアチャオの方は、太陽のサンと
地球のアースでサースにしよう!」
そう言って、サースをなでる。ハートがポンと出る。
そして、金チャオをなでながら、また考える。
「どうしよう・・・・・。よし!こっちはズフラだ!」
ズフラのポヨがクエスチョンマークになる。
「科学者のおじいちゃんが言ってた。
ヒスワリ語っていうケニアの言葉で金星って意味だって。
うん。ぴったり!」
気が付くと、2匹は寄りそって眠っている。
勇は、その様子を優しく眺めていた。