第22話「涙と、消えて」・中編
第22話・中編
【高野】「ブレイズライン!」
【木更津】「アイスキューブ!」
高野の攻撃に対し、木更津はアイスキューブを足場にして空を渡り避けます。
【木更津】(こっから剣で斬れば何とか・・・!)
しかし、それは読まれていました。
【高野】「クロスフレイム!」
【木更津】「!」
再び数歩下がって戻ります。
【木更津】「うう・・・やっぱ簡単に接近戦はさせてくれないか・・・」
【ヴァレイユ】「エレクガイストっ!」
こちらはヴァレイユ。一撃放ちます。
【ドルチェ】「スプラッシュクイーン!」
しかし、ドルチェが発動したのは巨大な水しぶき。雷は分散され、消えてしまいました。
普通に滝のような感じの技で防いでも、雷属性の技は多少ブレるだけでそのまま通過してしまいます。
しかし、水しぶきの中では、ブレが広がって完全に分散されてしまうのです。ドルチェはその特徴をよく知っていました。
【ヴァレイユ】(そっか、ドルチェだもんね・・・この程度じゃ無理だよね・・・)
【ドルチェ】「アクアスレイヴ!」
今度はドルチェの攻撃。
【ヴァレイユ】「くっ・・・でも、水なら!」
ヴァレイユは突然、向きを変えずに後退し始めました。
そしてそのまま、水の攻撃を受けたのです。
【ドルチェ】「!?・・・まさか!」
【ヴァレイユ】(速度を殺せば、中に入ってもほぼノーダメージ・・・そしてこれなら突破できる!)
ヴァレイユは一気に加速し、ドルチェの技を突破しました。
【ドルチェ】「っ!?」
【ヴァレイユ】「ヴォルティック・エターナリィっ!!」
そして、必殺技。しかし。
【ドルチェ】「ディープブルー・インパルス!!」
とっさにドルチェも必殺技を放ったのです。こうなると魔力で勝るドルチェが上。ヴァレイユに直撃しました。
【ヴァレイユ】「これでもダメか・・・何とかしないと・・・!」
元々格上の相手。並大抵の考えでは敵いません。
こちらは、相手の読み合いになってきました。
【木更津】(千佳は剣を持てないから、自分から飛び込むようなバカなマネはしないはず。だったら・・・)
「ブラスティフロスト!」
【高野】「クリムゾンシールド!」
高野は盾で防ぎます。
【高野】(本当は攻撃で相殺した方が剣がある香織には有効・・・でも虚を突く!)
「フレイムブルーム!」
普通、盾で防御すると敵の攻撃を防御してはいおしまい、ですけど、
攻撃で相殺してもし勝てばそのまま敵の方へ攻撃が向かいます。
特に相手が詰めてくる場合には相殺した方が有効なのですが、敢えて高野はそれを選びませんでした。
彼女は木更津が、自らの攻撃の後ろに隠れて詰めてくる、と読みました。
そこで防御技を出してわざと相手に突っ込ませ、盾がなくなった後に木更津の目の前に攻撃が来る。そういう算段でした。が。
木更津は、その更に1手先を打っていました。
【木更津】「アイスキューブ!」
【高野】「!?・・・まさか、アイスキューブ飛び!?」
木更津はこれをたまに使うので高野も知っていました(何よりさっき使ってましたし)が、完全に今の想定からは外れていました。
そして木更津は上から、
【木更津】「アイスサーベル!」
剣を突き立てて飛び降ります。すんでのところで避ける高野。
しかし高野が反撃する間を与えず、木更津は二度、三度と高野に対し斬りつけます。
上体を反らしたり、しゃがんだりして、何とか避ける高野。まるで映画のよう、と言えばいいのでしょうか。
そんな中ようやく木更津の隙を見つけ、左腕を掴み、
【高野】「はぁっ!」
思いっきり蹴り飛ばしました。剣を持てない以上、こうするしかありません。
【木更津】「きゃああっ!」
木更津はその衝撃で、数m飛ばされてしまいました。接近戦は失敗です。
しかし、その瞬間、木更津は見てしまいました。
高野が蹴り飛ばそうと、木更津の左腕を掴んだ瞬間、2人は数10cmのところまで接近しています。
その時、木更津は見ていました。
【木更津】(千佳・・・泣いてる・・・!?)
そう、高野の目が涙で潤んでいたのを、見逃しませんでした。
かくいう自分もこの時点で完全に涙目だったのですが、戦いの途中でそんなことは気にも留まりません。
【木更津】(そっか・・・千佳も、戦いたくないんだよね・・・本当は・・・
だったら・・・あたしが、止めなきゃ!)
そう改めて心に決めると、右手を強く握りしめました。
<後編に続く>