第13話「その後を、追って」・前編
・・・永川ペアと木更津ペアが、技術界に向かっていた、その頃。
天麗高原のふもとを歩く、女性のペアがいました。
魔術師狂想曲(マジシャン・ラプソディ)・第13話「その後を、追って」
神楽坂たちが以前会った、木原真由&カテナ=アルザスのペアです。
【木原】「ったく、慶十郎は一体何処に行ったのよ・・・」
【カテナ】「でもあれでしょ?魔術界も広いんだし、なかなか見つからないわよ。」
どうやら、永川ペアを探しているようです。しかも、名前で呼ぶということは、恐らく知り合い。しかも、かなりの。
【木原】「・・・というか、もうこの名前、やめてくれない?」
・・・そうですね。タネ明かししましょうか。
彼女たちの本当の名前は、神野由希恵(じんの・ゆきえ)とトリシャ=エスペラ。
そしてその正体は、永川の魔術高校時代のクラスメートで、永川ペアなどと共に「四天王」と呼ばれていたペアなのです。
その実力は、永川ペアに次いでナンバー2。
魔術高校時代は、最強のライバルであると同時に、いい友達でした。
(永川には箕島という彼女がいて、男女間の友情が成立するのか、と思われるかも知れませんが、少なくとも彼らはうまくやっていました)
そして、永川の当時のパートナーであるエストが死んでサリアがパートナーになった今、ひょっとすると魔術界最強かも知れません。
ただし、神楽坂ペアと戦った時は、魔力を抑えていました。
神野のバトルスタイルは、とにかく豪快。
大きな剣を振り回し敵を圧倒します。
その豪快さと強さから、「太陽女王」(ヘリオクイーン)という二つ名を持ちます。
一方のトリシャは、神野の「盾」。
防御技を持たない神野の代わりに、強力な盾で敵の攻撃を防ぎます。もちろん攻撃も多彩。
二つ名は、「光の女神」(レイゴッデス)。
ちなみに、永川は「皇帝」(ザ・エンペラー)という二つ名。
一連の二つ名は魔術高校時代につけられたもので、当時箕島のパートナーだったサリアに二つ名はありません。
さて、神野とトリシャ。
しばらく歩いていくと、ある場所に到着しました。
【トリシャ】「あの上が、天麗高原か・・・」
天麗高原の、あの崖の下です。
【神野】「確かあそこで、クリムゾンポールを奪おうとしたSEVENTH HEAVENの吉川を、慶十郎とサリアが倒したんだっけ・・・?」
一応倒したのは神楽坂ペアと木更津ペアですが、噂というのは所詮そんなもんです。
【トリシャ】「ねぇ、由希恵、あれ・・・」
【神野】「ん?」
そこでトリシャが、あるものを見つけました。
【神野】「これは・・・クリムゾンポール!?」
あの時、永川が崖から投げたクリムゾンポール。壊れずに、そのまま落ちていたのです。それも、誰にも気づかれずに。
そんな奇跡あるのかと言われそうですが、あるんだからしょうがありません。
【トリシャ】「どうする?」
【神野】「・・・ったく、いつも慶十郎は詰めが甘いのよ・・・そんなことだから、エストだって千紗だって死んじゃうんじゃない・・・!」
ふと、怒りがこみ上げてきました。
彼女はそれを、クリムゾンポールにぶつけました。
魔術で巨大な剣を作り、
【神野】「はあぁぁぁっ!!」
振り下ろしました。
クリムゾンポールは粉々に砕け散りました。もう問題ありません。
【トリシャ】「・・・ところで、これからどうする?」
【神野】「魔術高校のある街へ戻るわ。そろそろ、『大会』がある・・・慶十郎が出ないはずがないわ・・・」
【トリシャ】「あたしらも出るの?」
【神野】「もちろん。今度こそ、慶十郎を倒せるかも知れないし・・・」
【トリシャ】「パートナーはサリアでも、強いしね、あのペアは・・・」
【神野】「ええ・・・それに、バーミリオンの手がかりも、掴めるかも知れないわ・・・」
【トリシャ】「確かに、慶十郎とサリアだけに手柄を持っていかれるのもね。」
そう話しながら、歩いていきました。
さて、時も場所も変わって、技術界。
【神楽坂】「ふぁ~・・・」
【カナル】「おい、何あくびしてんだよ。・・・やっぱ一騒ぎないと暇か?」
【神楽坂】「そんなつもりは無ぇんだけど、やっぱりそうなんだろうな・・・」
教室で、暇を持て余していました。
そこに、川島ペアが。
【川島】「来たわよ、メール!」
【神楽坂】「メールって、何の?」
【川島】「忘れたの!?永川さんと香織ちゃんよ!」
そう、川島のケータイに、あの空メールが届いたのです。詳しくは12話参照。
【カナル】「まだ1週間しか経ってねぇのに!?」
【サララ】「とにかく、行ってみましょう。」
2組は急いで裏山へ向かい、走り出しました。
<中編へ続く>