16-1


「なんだあれ」
セントリーナス上空—そこに辿り着いた一行は、驚愕した。
上空に、雲に隠されたそこに、巨大な城が浮かんでいたからだ。
間違いなく、本拠地だと、優輝の直感が告げる。
探す手間が省けたようだ。
「よし、ここで止めてくれ」
「了解」
船長が答えると、優輝はすぐに甲板に出た。
乙姫が待っている。
「さあ、助けに行くんでしょう」
「うん」
「全く、優輝といると、侵入経験が豊富になりますね」
「最もだ」
それぞれの思いを乗せた船から、彼らは飛び降りた。
風が運ぶ。


 魔法のサンクチュアリ 16 -父親-


間違いなく、城である。
このような城が上空に浮かんでいるのは不気味だったが、とにかく考えている暇なんて無い。
侵入に気がついた相手が、行動を起こしている頃合だろう。
「行くわよ」
難なく城に入った優輝は、不気味な気配とは別に、何かの寒気を感じていた。


「わっかんないわね、どこかしら」
「乙姫、一人でも大丈夫?」
「もちろんよ」
うなずく乙姫。
「俺とナイトとスカイで向こうを探す。乙姫は向こうを頼む」
「分かったわ。何かあったら叫びなさい」
「分かった」
二手に別れ、優輝はそそくさと走り出した。
それにしても、城内は静かだ。
音一つしない。
「罠、でしょうか」
「だろうな。だが、いや……」
考え込むスカイ。
裏腹に、優輝は目をこらし、神経を集中させていた。
「ナイト、この建物って……」
どこかでみた事があるような気がして、優輝は訊ねようとしたが、首を横に振る。
「なんですか?」
「なんでもない。それより、縦に長かったから、上の階があるんじゃないか?」
「そうですね、最上階に行ってみましょう」
どうやって、とは訊ねなかった。
行くといったからには行く。
優輝は天井に向けて右手を突き出した。
「“圧縮する風圧”!」
天井を突き破って、優輝は上へと進んで行った。


すたん、と着地した場所は、真っ暗で何もなさそうなところ。
「まだ最上階じゃないのかな?」
「おそらく、まだ上がありますね」
「行こ—」
「侵入者か」
声がして、優輝は振り向く。
誰だ、と訊ねる前に、炎が放たれた。
とっさに身を捻って避ける。体をそのまま回して、体制を整えた。
「“Full winding”!!」
風が優輝の後ろから飛んできた。その風は声の主に向かっていく。
しかし、割れる音がして、風は別方向の壁に激突した。
「乙姫、なんでここに?」
「魔力の気配を辿ったのよ。それより、まだ上があるんでしょ。ここは私がやるから—」
すっと右手を出して、
「あなたたちは上に、行きなさい!」
風が優輝とナイト、スカイを天井へ放つ。
そうはさせまいと、声の主は炎を放ったが、それは風にかき消された。
「あなた、誰?」
「名乗る名はない」


「痛っつっつー」
頭から激突したせいで、頭に激痛が奔った。
すぐきょろきょろと見回す。
ナイトも探すが、なにぶん暗闇だ。ナイトの“保存機(コンサーヴァス)”程度しか役に立たない。
「どなたですか?」
「人がいるぞ、優輝」
優輝は声を頼りに、その方向へ向かった。
「助けに来ました」
「助けに……? わたくしを…?」
「はい」
その女性はわずかに泣いて、優輝に飛びついてきた。
いい匂いが鼻をかすめて、優輝は戸惑う。
「急いで、はやく、逃げます!」
「「“Full winding”!」」
ナイトとスカイが同時に叫んで、優輝たちを飛ばした。
一気に階下まで落ちた優輝らは、乙姫がそこにいるのに苦笑いして、すぐ走る。
「とりあえず拘束しておいたわ。問題ないでしょう。とにかく、逃げるわよ」
抱えた女性の表情が、段々と見えてくる。
真っ白の中にも、やわらかそうな肌が目に入る。
いやいや、魔法界には美人しかいないんですか、と優輝は思った。
「乙姫、この子を!」
抱えた女性を乙姫に受け渡すと、先に船に乗らせた。
優輝も、上空に浮かぶそれから、船に乗ろうと足を出し—
「手遅れだ」
声がした。
「優輝! はやく!」
まさか、と優輝は思って、振り向く。
有り得ない。
あいつがここにいるはずがない。
「“空間切断”」
そう言った男は、自ら城を砕いた。
崩壊した法則が、その城を上空に留まらせない。
足場を失った優輝は、慌てつつも何とか岩の破片にしがみついた。
「優輝!」
「落ち着いてください、優輝」
「落ち着け。まず船へ—」
「なんで、なんで!!」
優輝は叫ぶ。
「俺はメシア=フォース、第三の冠…江口、」
男が言った。
「敬三だ」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第332号
ページ番号
49 / 51
この作品について
タイトル
魔法のサンクチュアリ
作者
ろっど(ロッド,DoorAurar)
初回掲載
週刊チャオ第286号
最終掲載
週刊チャオ第332号
連載期間
約10ヵ月26日