04-3

「おっと、雑談はここまでのようだ」
人を起こしておいていきなり話を遮った。
「襲撃だよ。全く、ある程度呪力が溜まったら保存、それで無茶苦茶に呪力を使う―魔導師の名が泣くね」
「優輝はここで休んでなさい。良いわね」
有無を言わさない瞳、というのだろうか。
とにかく優輝はうなずき、二人は壁から飛び出した。



「なあ、ナイト」
取り残された優輝は、ナイトに訊ねる事にした。
「なんですか?」
「俺、なんだか蚊帳の外だよな。……なんだろうな、役に立ちたい、とは違うと思うんだけど……何ていうのかな」
思いと言葉が一致しない。
自分のそれを表す言葉を、優輝は分からなかった。
「僕はこちらで生まれたから、ユウキとは少し違いますが」
と、ナイトは言う。
「もしユウキの世界で生まれていたら、魔力を使って格好をつけたいと思うかもしれませんね」
「あははは……」
情けなく笑う優輝。
ふうと溜息をついたナイトは、本を置く。
「では、行きますか」
「ですね」
にやりと優輝が笑った。



住宅街を右往左往しながら、乙姫は工藤と連携を取っていた。
こういう場合は、強力な“行動停止”の魔力をかけてしまうのが手っ取り早い。
だが、相手の数が多すぎて、“行動停止”させている暇がなかった。
だからといって、殺すわけにはいかない。
何せ、相手は何らかの組織を組んで動いている可能性があるからだ。
情報を聞き出すためにも、生きて投獄しなければならないのだが……。
「もうっ、雑魚ばっかなのに、面倒くさいわね!」
「全体に“行動停止”をかけてしまえば良いだろう」
「出来るわけないじゃないの。そんな事したら即座に後ろから食らうわよ」
二対多数。あまりにも多勢に無勢だった。
ゆえに、防戦一方である。
「栢山のやつ、いるんなら手くらい貸せば良いのに」
「他人頼みかい? らしくないな、プリンセス」
悪かったわね、とふてくされた声を出す。
そのときだった。
住宅街に張り裂けるような大声が響き渡ったのは。



「響かせるには風雲属性の魔力で、空気を集中させてしまえば良いのですよ」
というナイトの提案を聞いた優輝は、円形を保つ街の一番高い場所で何といおうか考えた。
考えたのは一瞬で、優輝は思いっきり格好をつけて叫ぶ。
「てめええええええらああああああああ!」
思わず飛び上がるほどの大声だった。
「俺が目的なら、俺のところに来い! 相手になってやるぜえええええ!」
その声の発信源は、塔の上だった。
それに気がついた刺客らは、何事か呟くと、すぐさま優輝の場所へ飛び立つ。
これで良い。ふふふふふふ。
「多勢に無勢……つまり、多勢の方を一点に集中させればよい、とは考えましたね、ユウキ」
「思い付きだけどな」
「それで、これからどうするつもりですか」
その質問には考える隙も見せず、優輝は即答した。
「逃げる」
「…………」
すでに囲まれてますが、と言おうとしたのだろう。
だが、優輝はそんな事も気にせず、右手をぎゅっと握り締める。
「“時間移動”!」
優輝の姿は塔の上から一瞬で消え、刺客らは戸惑う。
その当人はというと、悲鳴を上げながら社長室のような乙姫の部屋に戻っていた。
「よし」
あ、しまった。
ナイトを連れてくるのを忘れていた。



「全くもう、何やってんのあいつ!」
乙姫が喋りながら走っている。
どうやら呪力が足りないようだった。
「さてね、僕は風雲属性の魔力が使えないので良く分からない」
「そうじゃなくて、もう、一気に“行動停止”しなさいよあんたが!」
「無理だね。僕はチャオと契約していない」
という理屈で走っているわけである。
「君がやったらどうだい、プリンセス」
「アメジストが回復してないのよ。ここんとこ、忙しかったんだから!」
ふう、と溜息を一つつく工藤。
「……僕が一肌脱ぐ必要も無いようだね」
「は?」



塔の上で、囲まれているナイトだったが、華麗に応戦していた。
攻撃と言う攻撃を風やら氷やらで防いでいる。
このようなチャオ一匹に何十人もいる自分たちが苦戦するのを、不思議がっている事だろう。
だが、ナイトは実際、他のチャオとは格が違った。
契約を嫌い、支配を嫌い、ある意味奔放に生きていたナイトについた通称は“夜想”。
その知識では誰にも負けず、蓄積された呪力に関しては言うまでもない。
セカンドミリオンの契約者。
それだけで通じるナイト=ノクターンの強さであった。
しかし、それを知らない刺客らはさぞかし疑問に思っていた。
「遅かったですね、ユウキ」
走ってきた優輝が到着した時には、すでに刺客の数人が力尽きて逃げ去っていくところだった。
「すごいな、お前」
「相手が弱いだけです。謙遜ではなく、事実として」
それでは決めましょうか優輝と、ナイトは本を手渡す。
「317ページ、上から六番目」
癖がついていたので、すぐ開ける事ができた。
「あなたにぴったりの魔力です」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第290号
ページ番号
16 / 51
この作品について
タイトル
魔法のサンクチュアリ
作者
ろっど(ロッド,DoorAurar)
初回掲載
週刊チャオ第286号
最終掲載
週刊チャオ第332号
連載期間
約10ヵ月26日