第6話「脱出」

デルタが消えた後、しばらくは沈黙が続いた。
「イプシロン・・・?誰なんだ、一体・・・。」
独り言を言った時に、ふっとクロマのことを思い出し、奥のほうを向いた。
シェールが唖然とした顔でこちらを見ている。どうやら考えもしなかったようだ。
「さぁ、シェール!クロマを返してもらおうか!」
「何のことかな、忘れてしまったよ。」
その言葉を聞いた瞬間、ディンの中でプチン、と言う音がした。

「そうか、其処まで惚けるなら・・・。」
ガチャッと言う音と共に銃口をシェールに向けた。
「こうするまでだ!」

バジュンッ!

レーザーはガラスを割り、シェールの心臓部を貫いた。
「クッ・・・!おのれ・・・!」
そう言うと、バタッと言う音と共にシェールは倒れた。
「自業自得だ。」
そう言うと、ディンはガラスが割れた部分から研究所内に入り込んだ。

研究所は意外に広く、フラスコの中の液体がコポコポと言う音が聞こえる。
壁には幾つ物本棚があり、中には読めない文字で書いてある本もあった。
クロマを見つけるのはそう難しくは無かった。研究所内の端に居たからだ。
「大丈夫か?クロマ。」
「うん、大丈夫だけど・・・。ディン、腕に怪我してるよ?」
「これくらい平気さ。」
そう言いながらクロマの手錠を外した。
「そう言えば・・・。シェールがあることを言っていたんだけど。」
「あることって?」
「いや、イプシロンとかデルタとか・・・。奥の部屋にそれをしまえとか。」
何かが立ち上がる音がした。二人以外にはいないはずだ。後ろを振り向くと・・・!

「ディン・・・。いや、イプシロン。よくも撃ったな・・・!」
死んだかと思われていたシェールが再び立ち上がった。
息苦しそうにぜーぜー、と呼吸をしているが・・・。まるでかすり傷程度の痛み方に見えた。
「な・・・!確実に撃った筈・・・!」
「そんな物じゃ私は倒せん。それより、ここを見られてしまったからには・・・!」
シェールは目の前にあるコンピューターのスイッチを押した。
次の瞬間、あの白いホールの奥が爆発した。
「ふははは!お前らもここで惨めに散るが良い!」
大きな笑い声を上げると、何とシェールは消えてしまった・・・!

「やばいな・・・。クロマ、早く逃げるぞ!」
「奥の部屋のものはどうするの!?」
「しまった・・・。」
研究所ももうすぐ爆発する筈、ディンは考える暇もなく奥の部屋へと走った。

奥の部屋には誰も居なかった。ただ、日記帳が置いてあるだけだ。
それ以外の物は何も無い。ディンはその日記帳を取った。
戻ろうとしたが・・・。何と扉が開かない!
「ちぃ!此処に来ると分って・・・!」
「どうするの!?ディン!」
爆発音は近くまで聞こえる。このまま爆発に巻き込まれるしかないのだろうか。
ディンは急にセイバーを取り出し、壁を切り始めた。
鉄とは違い、ギギギと耳を引っ掻く音が聞こえる。
円の形に斬り、思いっきり壁を蹴飛ばすと・・・。何と壁の向こうの通路が見えた。
「自棄だ。此処を進もう!」
クロマの手を引っ張り、階段を上る。

出口の向こうは明るい光が見える外だった・・・。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第121号
ページ番号
7 / 8
この作品について
タイトル
Machine-Chao
作者
MASUO(ますお,ます)
初回掲載
週刊チャオ第117号
最終掲載
週刊チャオ第122号
連載期間
約1ヵ月5日