第7話「出発。」
次の日、ディンは腕に包帯を巻いていた。流石に浅い傷だとは言え、怪我には変わりなかった。
クロマには怪我が無かったのは安心だが、気になるのはあの日記だ。
しばらくの間ディンはクロマの家へ泊まっていた。
ある日、二人がテーブルに座り茶を飲んでいた頃・・・。
「あの日記、読んでみない?」
クロマがディンに唐突に話し掛けた。
「そうだな、読んで見るか・・・。」
ここしばらく、ディンも日記を読もうとした。
だが、不安感と言うのだろうか。そのせいで開けなかったのだ。
ディンは決心し、テーブルにおいてある日記を開きその文を読んでいった。
そう、この日記こそがこの物語が始まりだったのだ・・・。
・・・20XX年。5/13
ついに地球が滅んだ。私の手によってだ。
あのアンドロイドを作り、核を誘導し、全てを滅ばせた。
勿論、私にとってあんな星はいらない。欲しかったのは『支配』だ。
シャトルが同じ環境を探している間に、私はある計画を進めていた。
究極のアンドロイド・・・。『カオス』だ。
それには4つのアンドロイドが必要だった。
『デルタ』・『オメガ』・『オミクロン』・『イプシロン』・・・。
デルタ、オメガ、オミクロンはただの部品にしか過ぎない。
重要なのはイプシロンだ。これが居なければ私の計画は完成しない。
どうやら同じ環境の星はそう遠くは無いようだ。
期待を胸に、今日はもう休むとしよう・・・。
日記に書かれていたのはこの文だけだった。
裏は途中で切られてある。他の一部は散ばっているのだろう。
「何だこれ・・・。わけがわからないよ。」
「イプシロン・・・。何で俺と関係が有るんだ・・・。」
二人の謎は深まるばかりだった。
たっぷり間を空けて、ディンが切り出した。
「クロマ、この日記を全部集める旅に出ないか?」
「え、急に何を言うんだよ、ディン。」
「確かに謎だけかもしれない。だけど、『真実』が隠されていると思うんだよ、これに。」
「真実なんて・・・。地球が滅んだのは核だったんでしょう?」
「それはそうだ。だけど、この日記には自分が滅ぼしたと書いてある。そして同じ環境の星・・・。もしかしたらここかもしれない。」
「確かに・・・!でも、あの帝王はチャオだよ?人間が居る筈は・・・。」
「実際に居るかもしれない、デルタは実在しているんだ。他にも『オメガ』と『オミクロン』が残っている。」
「・・・。」
クロマは沈黙し、しばらく無言が続いた。
「・・・、ディン。僕の命を補償してくれるかい?」
「勿論だ。お前を危険な目に逢わせたとしても、死なせはしない。」
「そっか。その言葉を聞いて安心した。一緒に行こう!ディン!」
「そうこなくっちゃ!」
ついに、二人の真実を探す冒険は始まった・・・。
ディンとクロマの旅が始まる頃・・・。帝王も刻々と準備を薦めていた。
シャドウナイツ――星の北半球を殆ど占拠している地域だ。勿論全支配下は帝王の手だ。
中心区には巨大な城が建ち、その下では奴隷が『何か』を作成している。
帝王は長く続く廊下を歩いていた。両方にはアンドロイドが護衛している。
―もうすぐだ・・・。私の計画はもうすぐ完成する・・・。
無言で急ぎ足で歩く帝王はそう思った。
次第に扉の前へ帝王は近づき、ゆっくりとドアを開けた。そこは・・・。
そこは巨大な研究所だった。巨大な筒の様なものの中に、チャオが浮かんでいた。
「もうすぐ完成するぞ・・・。私の片腕を斬り落としたあのチャオに対抗するアンドロイドが・・・!」
そう言うと、帝王は大きな声で笑い出した。