第4話「牢獄」

街は静寂していた。

二人はそれに気づかず、会話を続ける・・・。
ドアの前には何とアンドロイド、そして後ろにはチャオが居た。
アンドロイドが足を上げ、ドアを勢い良く蹴り飛ばした。

バキャッ!

ドアは粉々に壊れ、中にアンドロイド数体が入ってきた。
「誰だ!」
「おやおや、ずいぶんのお気楽な人なんだね。ディン。」
アンドロイドの後ろに、黒いチャオが居た。目は赤く、腕には機械がついている。
「何故俺の名前を・・・!」
「アンドロイドが名前と共にデータ―を送ってきてね。死に際に何処に居るかも教えてくれたよ。」
ディンは腰からセイバーを取り出すが、同時にアンドロイドがディンに銃口を向けた。
「ムダだよ。完全に捕まるとまだ分らないかい?」
「ふざけぇっ・・・」
ディンの首筋に電撃が走り、意識が闇の中へ消えていった・・・。
「・・・、情けない奴だ。そこの二人を連れてゆけ!」
そう言うと、アンドロイドは二人を乱暴に抱えて去っていった・・・。

ディンが目を覚ますと、辺りは薄暗かった。どうやら牢獄に閉じ込められているらしい。
顔がやっと出せる部分には鉄格子がはまっていた。
「畜生・・・。どうしてやられたりしたんだ・・・。」
自分の無防備さに腹をたて、石で出来ている地面に思い切り拳をぶつけた。
だが・・・。何も起きない。伝わってくるのはじわじわと襲う痛みだけだった・・・。

しばらく呆然としていると。鍵が開く音が聞こえた。

勿論、セイバーは腰にはついていないため、脱走は不可能だ。
「着いて来い。Dr.シェール様がお呼びだ。」
ディンの腕に手錠をつけ、アンドロイドが引っ張るように牢獄から出した。
コツンコツン、と寂しく歩く音が聞こえ、やがて光が見えてきた。
その先には―・・・。

その先には白いホールだった。天井は高く、奥には重そうな扉がついている。
扉の上には・・・。ガラス張りの部屋が見え、そこにはあの黒いチャオ・・・Dr.シェールが居た。
「やぁ、目覚めはどうだい?」
マイクを通してシェールが話し掛ける。
「俺をどうするつもりなんだ。早く此処から出せ!」
「それは後回しだ。こっちには、君の仲良しさんが居る。人質だよ。」
といい、ガラスの向こう側からクロマが現れた。どうやら手に手錠が掛けられているようだ。
「クロマを放せ。さもなくば・・・。」
「まぁ、こっちにも開放条件はある。先ず君の剣を銃を返そう。」
アンドロイドがディンに銃とセイバーを渡した。
「俺にどうしろって言うんだ?」
「ある実験体の試験をしてもらいたい。戦えば良いんだ。」
そう言うと、重そうな扉がぎしぎしと音を立てながら開いた。
扉の奥からは何かの目が見えた。その目は赤く、丸で生きていないような感じがする。
次第にその実験体は姿を見せ始めた・・・。

一方クロマの方は・・・。

丁度ディンが牢獄から出ている時、クロマは既に研究所の方に居た。
ディンと同様手錠をつけられたまま。逃げ出す事もまず無理だ。

アンドロイドが連れて行った先は、この後ディンが来るであろうあのホールだった。
「どうだい、クロマ。」
「何が何だか分からないままでね・・・。僕は貴方とは正反対のマヌケだ。」
「ルモワール族でもそういうことを口走るのか。ずいぶん落ちぶれた物だな。」
「どうして僕の民を知っているんだ!」
銃があるのなら、すぐにクロマは銃口をシェールに向けていただろう。
「滅ぼしたのは『私の実験体』だ。」
シェールがその事を言った瞬間、クロマに衝撃が走った。
「おや、呆然としているね。全てを教えてあげようか。」
そう言い、シェールが口を開いた・・・。

ルモワール族が一瞬にして滅んだ理由・・・。それはその実験体にあった。
新型、寧ろ普通じゃありえないような力を持ったその実験体は、全てを破壊した。
数時間後には、民の家は全壊し、いたるところに動かないチャオがうつ伏せになっていた。
逃げ惑う人も殆ど居ない。つまり、大半のチャオが命を絶たれたのだ。

其中で、クロマを逃がしたのは唯一の誤算だっただろう。
シェールが狙った物・・・。それはルモワール族の身体だ。
死んだ身体にも依然として、普通のチャオの何倍もの気力が蓄えられ、それを全て回収するつもりだったのだ。
気力は癒しの力もあるし、破壊の力も大きい。
それに目を暗め、実験体を作り出したのだった・・・。

「アンドロイドが襲ったのはディンではない。君なのだよ。」
「そんな・・・。貴方が僕の民を滅ぼしたのですか!?」
「そうだ。何度も言っているだろう。」
「・・・。全てのチャオの苦しみを後で貴方は受けるだろう。」

バキッ!

シェールの拳がクロマの頬にあたり、大きな勢いでクロマは倒れた。
「帝王は私に最大の力をくれた。苦しみなんぞ受けてたまるか!」
クロマの口からは血が流れ、頬には赤く跡が残っていた。
「まあいい。そんな事よりだ・・・。アンドロイド、この日記を奥にしまって置け。イプシロンやデルタのデータが入っているからな。」
シェールがそう言う

このページについて
掲載号
週刊チャオ第120号
ページ番号
5 / 8
この作品について
タイトル
Machine-Chao
作者
MASUO(ますお,ます)
初回掲載
週刊チャオ第117号
最終掲載
週刊チャオ第122号
連載期間
約1ヵ月5日