その5

<その5>

さて、話は空中に戻る。
【水猫】「あなたが噂に聞くエルファ嬢ですか…さすがですね!」
と褒めているが、さすがは水猫。オモチャオーと生身のチャオの圧倒的な体格差を活かし、戦闘経験が豊富なエルファをも追い詰める。
【エルファ】「くっ…やはり分が悪すぎる…っ!」

【水猫】「これでどうです!?」
と、オモチャオートマホークを振り下ろすと、耐え切れずに、クアトレスパーダの大剣にヒビが入る。
【エルファ】「!!」
慌てて剣を引くエルファ。木更津のような魔術師とは違い、デバイス式の魔法はデバイスが壊れるとしばらく戦闘不能になってしまう。

【エルファ】「まだいけますか!?」
『OK, Master.』
【エルファ】「ならば…TwinGun!」
エルファはクアトレスパーダに確認を取ると、二丁拳銃に変形させ、連射しながら距離をとった。そして。

【エルファ】「はぁ…まさか本当に最後の手段を使うことになるとは…まぁ週チャオ最後の舞台ですし、やるしかないでしょう…!」
すると彼女は、衣装(デバイス使用時)のポケットから小さなキャンディーのようなものをパクリと飲み込んだ。

次の瞬間、突然彼女が光に包まれ、さらにその大きな羽で自らの体を包む。
【水猫】「!?」
しばらくすると、光が収まり、羽も解けた。そこに現われたのは…
【水猫】「ほほう…実に興味深い!人間に変身するとはね!」
【エルファ】「人間化[ヒューマナイズ]です…これで体格差を埋められればいいのですけどね…」
紫髪のツインテールに、黒と青の2色で構成された服、そしてトレードマークの角眼鏡。
【エルファ】(まったく…まさかラグオルとグラール以外でこの姿になるなんて思ってもみませんでしたよ…!)
そこで再びクアトレスパーダは大剣の形へと変形し、彼女の右手に収まった。
【水猫】「これは面白くなってきましたね…いざ勝負!」

と、互いにぶつかろうとしたその時、
【エルファ&水猫】「!?」
両者は衝撃的な光景を目にすることになる。


さて、時間は少し遡る。
【ルーティア】「さすがに速いねー…どうしよっか…」
【きょうじゅ】「これ、これじゃあ!この感覚じゃーっ!!」
猛スピードでもつれるようにドッグファイトを繰り広げる2機。

【ルーティア】「うん、これでいこう!」
と、軽く操作する。次の瞬間、腰の部分から隠し腕が伸び、バジュラもどきを捕らえた。
【きょうじゅ】「!」
【ルーティア】「これでどう!?」
と、すかさずバトロイドに変形し、本来の腕でビームの刃を形成、斬りかかるが、
【きょうじゅ】「ところがぎっちょん!!」
なんと次の瞬間、きょうじゅのバジュラもどきも変形したのである。
【ルーティア】「!?」
バジュラもどきが変形する、という予想外の出来事で、さすがのルーティア嬢も反応できない。逆に掴まれると、
【きょうじゅ】「時空共鳴砲じゃあーっ!!」
変形後の機体の背部にある2つの砲身が伸び、バルキリーもどきを挟むと、砲身から放たれる次元波により4次元レベルでの振動を起こした。

…と、日本語で説明するのも大変なので、要は「とにかく強烈な一撃を撃った」のである。
【神楽坂】「っつーかこれの元ネタ解る奴この世に5人もいねーだろっ!!」

【ルーティア】「きゃあああっ!!」
強い衝撃を受けた彼女は気絶。バルキリーもどきも大破し、力なく地上へと墜落していった。


【エルファ】「そんな、まさか…!!ルーティア嬢が敗れるなんて!」
エルファ達が驚いていたのは、ルーティア嬢が敗れる瞬間が目に入ったからである。


そして、その様子は、地上にいた紀流院にも。
【紀流院】「る、ルーティアちゃん!?」
その瞬間、紀流院の中で様々な感情が渦巻き、そして、
【紀流院】「うおおおおおおっ!!!!」
突如叫ぶと、墜落したオモチャオーに再び乗り込み、気合で再起動させ、飛び上がった。

【川島】「気合で再起動できるもんなの!?」

【紀流院】「おおおおおおっ!!ギアスがなんだああああっ!!!」
紀流院は気合できょうじゅのギアスをあっさり解くと、きょうじゅのバジュラもどきへと一直線。
【川島】「オモチャオーで!?リネージュ先輩でも勝てなかったのに!!」
【神楽坂】「っていうか全部気合で何とかしやがった!!」

【紀流院】「バジュラもどきは!金縛りにする!!ディストーションフィールドーっ!!!」
前方にディストーションフィールドを展開させ、バジュラもどきに突撃。ビルの壁に自らの機体ごと叩きつけた。
【紀流院】「向島きょうじゅ!!刺し違えてでも、その命貰い受ける!!」

…だが、きょうじゅも黙ってはいない。
【きょうじゅ】「この紀流院すごいよ!さすがタキオンのお兄さん!!」
【川島】「どっちが兄か不明なんじゃなかった!?」
バジュラもどきが押し返そうとするが、今の紀流院はその程度では下がらない。

【紀流院】「(ファンタシースター)ユニヴァース!!!」
【神楽坂】「いやそのカッコいらねーだろっ!!」
そう紀流院は叫ぶと、最大出力でプロミネンスブレイザーをぶつけた。目の部分からエネルギーをぶつけるオモチャオーの必殺技である。
だが耐えるバジュラもどき。そして、

【きょうじゅ】「月光蝶であーる!!!」

【エルファ】「!?」
【水猫】「このモロパクリな展開でもしやと思ったが…バジュラもどきなのに月光蝶を使う気かっ!!」
【神楽坂】「もう何があっても驚かねぇぞちくしょーっ!」

バジュラもどきは、その左腕を空に掲げる。すると、その先端から、次元の裂け目のようなものが生まれ、そして———


【バン】「おめでとさん!」
【セリオ】「コングラッチュレーション!オメデトウ、ね!」
【ライホワイト】「うむ、めでたい!」
【ライブラック】「………。」
【ライゴールド】「おめでとうございます!」
【ライシルバー】「なんやブラックの奴、こんな時も何も言わんのかい。2人分まとめでおめでとさん!」
【ライパープル】「おめでとうッス!」
【オーム】「お、おめでとうございます!」
【ギリアム】「………めでたい。」
【ラン】「…おめでとう。」
【コナッツ】「10周年おめでとーう!」
【アムセレ】「チャオも10年か、おめでとう。」
【ゴルメ】「真におめでたいことだ。」
【ブゲル】「非常におめでたい!」
【バルカ】「めでたいが、これからも精進するのじゃぞ。」
【ポポロン】「お、おめでとう…」
【ファルネイミュ】「おめでとう!」(小声)
【ウェルフォン】「めでたか~!」
【ザコダー】「めでたいでゴス。」
【キョーバ】「チャオ10周年おめでとう!」

…次元の裂け目から、作者の技量不足で本編に出せなかった第1期キャラクター達が一言づつおめでとうを言って消えていった。

【キョーバ】「って、俺を混ぜるなー!!!」


【おぉる】「だあああああっ!!」
【エルファ】「な、なんというやっつけ…!それも既視感たっぷりの…っ!」
【川島】「しかも名前が違う同一人物が混ざってるんですけど!!」
【神楽坂】「どうでもいいツッコミは後だ!きょうじゅはっ!?」

【紀流院】「…いない!?」

きょうじゅのバジュラもどきは、その場から忽然と姿を消していた。


【木更津】「…!あそこ!」
【神楽坂】「いたっ!!」
木更津が見つけたのは、この激戦で廃墟になっている場所。その先には、

【川島】「っ!バルキリーもどき!」
【エルファ】「まさか!?」

そう、大破したバルキリーもどきが。その中には、まだルーティア嬢が。
そこに、きょうじゅのバジュラもどきがまっすぐ向かっていく。
【きょうじゅ】「これでワシの勝ちじゃーっ!!」

誰もが「もうダメだ」と思った瞬間、———歌が流れた。


♪星を廻せ、世界の中心[まんなか]で…♪


【神楽坂】「今度はライオンかよ!?」
【川島】「この歌声…まさか!?」

そう、声の持ち主は、他でもない、ルーティア=リネージュ。

♪くしゃみすれば どこかの森で蝶が乱舞♪

すると、きょうじゅのバジュラもどきが、突然挙動がおかしくなり、その場で狂ったように蠢きだした。
【エルファ】「ほ、本当に…効いてる!?」
【ロルフィーヌ】「これが…噂の超時空プリンセスって奴か…!」
いや厳密には違いますが。

♪キミが守る ドアの鍵デタラメ♪

【川島】「よく『10年早い』って言うけど、きょうじゅがリネージュ先輩に対してテロなんて10年どころか1万年と2千年早かったってことね。」
【神楽坂】「実際に10年経って無理だったからな…まぁ1億と2千年経っても無理な気がするけど…」

♪恥ずかしい物語 舐めあってもライオンは強い…♪

【きょうじゅ】「で、デカルチャーっ!!」
きょうじゅがそう叫ぶと、バジュラもどきは力なく落下し、バルキリーもどきの隣に落下した。
のそのそと、コクピットのようなところからきょうじゅが出てくる。
【きょうじゅ】「ワシは…ワシはただ…こいつを渡したかっただけなのに…」
そう言い、右手に持っていた小箱を開けた。中には、『祝!チャオ10周年』と刻まれた宝石。

【ルーティア】「え…?」
サビに入ろうとしたところで、ルーティア嬢の歌が止んだ。静まり返る周辺。

【神楽坂】「いや待て!それじゃあイマドキVHSの爆破予告は何だったんだよ!」
【きょうじゅ】「爆破予告?ワシはプレゼント予告のビデオなら送ったが…しかもVHSではなくベータじゃぞ?」
【エルファ】「べ、ベータ!?」
【木更津】「…って、なに?」
【きょうじゅ】「It's a SONY!
ぐっ!と指を立てるきょうじゅはさておき。

【川島】「それじゃあ、あのVHSは…ニセモノ!?」
【神楽坂】「ベータが伏線だったのかよ!!っていうか、それじゃあ摩り替えた奴は誰なんだ!?」
【エルファ】「わざわざきょうじゅを偽装させていたことから、今回のきょうじゅの計画を知っていて、かつそれを阻もうとした者…」


そこで、パチパチパチ、と手を叩いて、どこからともなく現われた人物。

【ホップ】「いやー、いいもの見せてもらったよー。」

【川島】「作者っ!!」
【エルファ】「まぁほぼ予想はついていましたが…」

【ホップ】「折角のチャオ10周年だから、どーんっとドンパチやるのもいいじゃないか、って思ってね。摩り替えさせてもらったよ。」

【木更津】「つまり、今回の黒幕は…」
【神楽坂】「今回っつーかコイツの話、いつも大体自分が黒幕じゃねぇか…その時点で気付けよ…っ!」

【ホップ】「さすがにきょうじゅが月光蝶発動した時はどうなるかと思ったけど、いやー、めでたしめでたし。
      …あれ?なんかみんな怒ってる?」

【エルファ】「当たり前です…こっちはどれだけ大変な目に遭ったと思ってるんですか…!」
【紀流院】「折角のルーティアちゃんとのパーティーを逃したんだぞこっちは…!」

【ホップ】「る、ルーティアさん…」
チラっとルーティア嬢の方を見る。彼女はニコニコと笑いながら、こう答えた。
【ルーティア】「頭…冷やそうか…?」

【ホップ】「こりゃまずいっ!」
【ペンチャ】「あ!逃げる!待ちやがれ!」
逃げる作者。追いかける一同。

【神楽坂】「俺たちのチャオ世界をメチャクチャにしやがって!」
【川島】「滅び行く者は滅びよ!これがあたしの貴方へのせめてもの手向けの言葉よ!」


還らざる時の終わりに、彼らは一体何を見るのだろうか…

<おしまい>


【ホップ】「って、このオチの元ネタ分かる人いるのかよーっ!」


【けいりん】「事態の沈静化を確認、これ以上の記録は必要ないと判断しました。
       『刻が未来に進むと、誰が決めたんだ?』…以上、報告を終了します。オーバー」

このページについて
掲載号
チャオ生誕10周年記念特別号
ページ番号
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この作品について
タイトル
【Lost Decade Chronicle】
作者
ホップスター
初回掲載
チャオ生誕10周年記念特別号