その3
<その3>
12月23日、正午。ステーションスクエア中心部の某高級ホテル、大ホール。
【ルーティア】「それじゃ、チャオ10周年を祝って!かんぱーいっ!!」
【参加者】「かんぱーい!!」
彼女の掛け声とともに、パーティーが盛大に始まった。
【ルーティア】「みんなー、ゆっくりしていってね!!」
【神楽坂】(色んな意味でゆっくりできねぇよ!!)
その頃、月の裏側でも。
【きょうじゅ】「だーっはっはっは!!いよいよ準備は整った!!これから地球へと突撃じゃーっ!!!
…プロフェッサー・向島が命じる!!全力で地球のこのホテルへと突撃せよ!!」
【紀流院】「イエス・ユア・チャオネス…ってギアス持ってねーだろ!!どうせ命令されなくても乗るっつーの!」
いずれにせよ、乗らないと地球に帰れない。
かくして、きょうじゅと愉快な仲間たちは月を出発。地球へと向かった。
—かつて、栄光があった—
【ぱある】「では、再びこのパーティーの司会を務めさせて頂きますぱあるより一言!
今日はあのボケじじいがいなくてまことに清々しい!いい気分でパーティーを楽しめそうだ!!」
【ルーティア】「そういえば、きょうじゅの他にも呼んだはずなのにいないチャオがいるような…ま、いいか☆」
—当時の人々は、繁栄の果てに数々の名キャラクターを生んだ—
【神楽坂】「…にしても、きょうじゅが月から攻めてくるってのに、本当に大丈夫か?」
【川島】「リネージュ先輩が大丈夫って言ってるんだから、大丈夫でしょ。あたしらにまで害は及ばないわよ。」
—そして、10年—
【紀流院】「チャオ10周年か…そういえばルーティアちゃん、今頃何やってるんだろう?」
【タキオン】「そういえばこのアルバイト、結局ヤルキナシノミはもらえるのかなー…?」
—白き空のさなか、月は漆黒に染まり—
【きょうじゅ】「よーし、目標が見えてきたぞい!!総員、攻撃開始じゃーっ!!」
—忘れられたチャオは、舞い降りた—
【ペンチャ】「…って、これファンタシースターゼロのプロローグだろーっ!!!」
午後1時30分。
轟音と火柱が、突如ホテル周辺に上がった。
「きゃああああっ!!」
「うわああああっ!!」
叫ぶ人々。そして、彼らが空に見たのは、ホテルに向う6機のオモチャオー(?)の姿であった。
【木更津】「え!?なになに!?」
【神楽坂】「マジで…きやがった!!」
ここら辺の人は、一応状況を飲み込んでいる。
【ナッちゃん】「おやおやおねーさん、この前ぶりですね。」
【霜月】「ええ、お久しぶり。…にしてもきょうじゅ、本当にやる気だったのね…」
【ナッちゃん】「まだまだ、これからですよ…」
霜月とナッちゃんも、この真相を知っていたようだ。
【ルーキ】「うわっ、なんだ!?」
【プロン】「マジヤバイって感じじゃない!?」
【バーブ】「バブー、バブー!」
【マッハ】「こ、こんなイベント、母さん聞いてないわよ!?」
タキオンファミリー一同。この隣には、ルーキのお友達であるしぃぷもいた。
【ルーティア】「来たわね…ぴーた君、あれをお願い!!」
【ぴーた君】「了解シマシタ…新型ヲ起動シマス。」
ルーティア嬢はぴーた君にそう頼むと、壇上のほうに向かい、何が起こっているのかサッパリ分かっていないぱあるからマイクを取り上げると、こうアナウンスした。
【ルーティア】「みんな落ち着いて!ちょっと外の騒ぎを収めてくるから、ぱある君、その間をお願いね!」
そう言い残すと、ルーティア嬢はあっけに取られているぱあるに再びマイクを渡すと、パーティー会場から走り去っていった。
【川島】「あたしらもいくわよ!!」
【神楽坂】「あ、ああ!」
【木更津】「ほ、ほへ~!?」
追うように、この3人。
【エルファ】「はぁ…仕方ありませんね…」
さらに彼女も。
【ナッちゃん】「さてさて、どうします…?」
【霜月】「歴史の証人ぐらいには、なれるかしら…?」
不敵に笑いながら、霜月も歩いて出て行った。
そうやって何人かが会場から出て行くのを見た他の参加者も、ある者は興味本位、またある者は避難経路だと思い込み、次々と会場を飛び出した。
【ぱある】「何が起きてるのか分からないが…ここは!この私が皆を落ち着かせて…って、あれ?」
既にだ~れもいません。
ルーティア嬢が真っ先に飛び込んだのは、極秘に存在する地下の格納庫。
【ルーティア】「システムオールグリーン…VF-1998、出撃!!」
戦闘機のような機体に乗り込むと、一気に出撃。これで彼らを迎え撃とうという訳だ。
【エルファ】「まったく、生身のチャオで巨大ロボット相手に戦えだなんて、作者の顔が見てみたいですね…まぁ私の相方ですけど!
舞えよ四天剣!!クアトレスパーダ!!」
そう叫ぶと、首にさげてる鈴が光り、瞬く間に2本の光の刃に変化した。それを両手に携えると、羽をバサリと羽ばたかせ、開けた窓から空へと飛び立った。
【川島】「香織ちゃん、この靴を履いて!」
と、川島がバッグから1足の靴を取り出した。
【木更津】「へ?」
【神楽坂】「リネージュ財団特製の『空を飛ぶ靴』だ。いいから急いで!」
2人の慌てている様子を見て、木更津は訳も分からず慌てて履き替える。
【木更津】「ど、どこに行くの!?」
【川島】「香織ちゃんの魔術で、攻めてきた敵をやっつけに行くのよ!」
【木更津】「え、ええーっ!?」
ようやく状況が飲み込めてきた木更津。
【神楽坂】「俺たちはこっちじゃ魔術を使えないけど、同じ靴を履いてるからサポートしてやる!準備はいいな!」
2人は木更津が靴を履き替えたのを確認すると、彼女の右手を川島が、左手を神楽坂が持って、
【2人】「せーのっ!」
タン、とジャンプした。すると思い切り、ポーンと跳ねて、開いた窓から空へと飛び出した。2人が木更津を連れて行く形だ。
【木更津】「うわあああっ!?と、飛んでる!?」
【川島】「深く考えないで、自由に空を飛ぶ様子をイメージして!」
【木更津】「う、うん!…こう?」
2人がそっと彼女の手を離すと、クルクルクル、と空中を自在に回ってみせた。
【木更津】「す、すっごーい!!」
【神楽坂】「マジかよ…一瞬で使いこなしやがった…」
(俺がマトモに飛べるようになるまで3日かかったのに…!)
【川島】「それじゃ、行くわよ!」
【木更津】「う、うん!!」
再び川島が加速すると、それを追うように2人もついていた。
【霜月】「今のところ、6対3みたいね…まぁ、個々の能力に差があるから、どうなるか…」
双眼鏡を片手に、そうつぶやく。相変わらず、余裕の表情だ。
===
【ルーティア】「もうすぐ…いた!あそこ!」
発進から2分。ルーティア嬢が、視界に6機をとらえた。だが、すぐに彼女は、自らの目を疑った。
なにせ、相手はあのオモチャオー。本来、『正義の味方』であるはずのロボットである。
だが、もう1つ、驚くべきことがあった。
【ルーティア】「あの1機は…なに…!?」
一番最後尾につけている機体。それは、オモチャオーではなかった。
明らかに異様で、彼女の記憶にも存在しない機体。日本語では表現しきれない、ひたすら異様な雰囲気を放つ。
【ルーティア】「まるで、生物と機械が融合したような…はっ、バジュラ!?」
ルーティア嬢が「パクリ」と結論を出した時、ようやくエルファと神楽坂たち3人が到着した。
【神楽坂】「バジュラだかバジユラだかヴァジュラだか知らねぇが…」
【川島】「PSUの杖だとかPSOの防具だとかそういうレベルじゃないわね…こうやってフォローしなきゃ誰も分かんないでしょうけど…!」
【エルファ】「とにかく…さすがにあれは生身では太刀打ちできるレベルではありませんね…頼みますよ…!」
【ルーティア】「うん…、ホテルには指一本触れさせない!」
そして、そのバジュラもどきに乗っている(?)のは、もちろんこの方。
【きょうじゅ】「だーっはっはっは!ここで出会ったが10年目ぇっ!今度こそケリをつけようぞ、ルーティア=リネージュ!!」
【紀流院】「まったく…さすがにあれの設計図はTOY本部にはないよな…?」
【ペンチャ】「きょうじゅ曰く、大学の文学部の近くを歩いてたらたまたま落ちてたらしいが…まさかなぁ。」
【水猫】「オモチャオーの設計は大体私にも分かるけど、あれは解析不能だった…まさか操縦可能にしてしまうなんて、さすがというか…」
かくして、結局お互い何がしたいのかよく分からない戦いは、いよいよ両者が激突する。
===
その頃、週刊チャオ編集部———
【かいろ】「うおおおおっ!!なんだか熱いぜええええぇぇぇっ!!」
なぜか燃えてるのは、編集部きっての熱血オモチャオ、かいろくん。
【ふうりん】「はいはい、分かりましたから、聖誕祭の準備、早く手伝って下さい!」
冷静にあしらうのが、編集部のツッコミ役、ニュートラル・ノーマルチャオのふうりん。
【かいろ】「いやしかし!とにかく熱い!俺は今猛烈に燃えているうううううっ!!!」
勝手に燃えているかいろくんをよそに、ふうりんは段ボール箱を持ち上げたところで何となく窓の外を見た。
【ふうりん】「今は真冬なんですから、火事でも起こってない限り…って起こってるー!!」
原因は、もちろんきょうじゅと愉快な仲間達。
<続く>