4話
「しまった・・・!」
眩い光が扉から漏れてきた。
奥に居たのは皆、白衣の研究着を身につけた科学者達であった。
突然のアクシデントはお互い様。
慌てふためく連中とは裏腹にユウヤだけは例外であった。
右手に収めていた銃を瞬時に両手に構えなおし戦闘態勢を整えていた。
しかし、ユウヤの予想は大きく狂った。
科学者達は侵入者に対して悲鳴をあげるどころか歓喜の声を漏らしていた。
「た・・助かったぞ!」 「これで自由の身だ!!」等と。
「どういう事だ?中佐!」
「私にも分からん! 何者達だ?」
「皆、科学者の格好をしているが・・・・」
「科学者だと?」
「あぁ・・・。」
理由を飲めずに混乱していたユウヤと中佐。
どうも侵入が事前にばれていたとしか思えない。
そんな科学者達の中の一人がユウヤの目の前に移動してきた。
明らかに他の人とは違う雰囲気を放つ 彼。
不精髭が目立つが顔立ちは整っている方であった。
でもやっぱり老けて見える。
「CIAのエージェントだよ・・・な?」
「お前は?」
「レイヴァンだ。」
「何故ここにいる? そしてどうして俺が来る事がわかった?」
「ん~とな、ここの情報を伝えたのが紛れもない俺達。 情報提供者って訳だ。」
「・・・どうもこの様子だと簡単に外と連絡を取り合えるとは思えないが。」
「CIAが所有する【ある周波数】に望みを賭けてCALLしたのさ。 通信機は・・・奪った。」
「奪う?誰から?」
「誰も何も見張りの連中からさ。」
「馬鹿な。」
「馬鹿じゃない、ついでに言うと通信機を盗られた事も、あんたがここに居ることも敵さんには知られていないはずだ。」
「好都合だ。」
どうやら俺の目の前に居るレイヴァンも、周りの研究員も皆敵ではない。
更に侵入に気づかれていないということはユウヤにとってかなり都合が良い。
改めて銃をホルスターにしまい込む。
警戒を緩める事は流石に無謀であり、ユウヤは充分に心得ていた。
そんな彼とは裏腹にレイヴァンは気楽に煙草を咥えていた。
「ここで何が行われている?」
「あっ?」
「アメリカ政府を打倒するプロジェクトとはいったい何だ?」
「・・・・あんたは何だと思う?」
この問いに周囲の科学者達に動揺の様なものが走った。
隣と話すもの、うつむくもの、平然といるもの。
反応は個々それぞれであるが、皆、同じ事を思い浮かべている。
そうに違いない。
「・・・大量破壊兵器か?」
ユウヤの答え、瞳。
表情から息遣いまで、真剣そのものであった。
しかしその答えに対する返事は、大口開けて発せられる笑い声。
わははは と人を小ばかにするというのが妥当。
いや、むしろそれの方が的確である。
「いや、そうだよな。アメリカみたいな大国ひっくり返すならそうかんがえるよな。」
レイヴァンは一呼吸、間を開ける。
息を吸い込んだ時にはもう真面目な表情に切り替わっていた。
「大量破壊なんて物騒な言葉、あれには似合わなくてな、悪魔というより天使、いや妖精という存在に近い。」
「妖精?」
「まぁ仮にあれが悪魔の様な部類に入っても・・・・デビル程度の・・・悪戯好きって所だ。」