第6話・陥落 ~後編~
後編
その頃陸では、遂にステーションスクエアの軍がヤヌスの防御ラインを突破。
巨大なタワーへ、一気に突き進む。
だが、そこにいるはずの目標とされた人物は、既にいない。
賢一は黒いリムジンを追いかける。
無論、敵の砲撃も激しいが、そんなのは最初から分かっている事。
しかし、敵の反撃は特別激しいという訳では無かった。
あのリムジンに大川が乗っているのならば、当然激しい反撃が予想される。
(可能性として考えられるのは2つか・・・)
1つ目は、大川の移動は極秘でヤヌスの軍には知らされていないのか。
2つ目は、黒いリムジンに乗っているのは大川ではないのか。
彼は、賭けることなく、とりあえず追ってみることにした。
(どうせ、向こうのタワーに奴がいたとしても、軍の連中がやってくれるはずさ。)
一方、空の戦闘でもヤヌスの戦闘機の数は徐々に減り、タワーに肉薄する。
攻撃もタワーに命中するようにはなったが、一発や二発で崩れるタワーではなかった。
リムジンが向かった先は、ニステル郊外のヤヌス最大のチャオ収容所。
ヤヌス全体では数百万匹のチャオが奴隷にされていると言われているが、ここには100万匹近くが収容されていると言われており、
「タワーを破壊したならば、次はここへ向かえ、チャオは絶対に殺すな」と言われている場所だった。
(仮に大川が入ったとして・・・何をする気だ?)
下手に射撃をすると、チャオを殺してしまうハメにもなる。
彼はしばらく上空から様子を見る事にした。
陸軍は遂にタワーに到着した。
破壊命令が出ていたため、徹底的に基礎の部分を砲撃する。
ヤヌス側の反撃はもうほとんど無かった。
「象徴」が徐々に崩れ去ろうとしている。
戦争も、終わろうとしていた。
賢一が上で待つこと10分。
(あそこで大川がやりそうな事といえば・・・・まさか!!!)
その瞬間だった。
轟音と共に、収容所が爆発した。
そう、彼は最後までチャオ差別主義を貫き、百万匹のチャオと共に自爆して果てたのである。
赤く立ち上がる炎。
慌てて賢一は機体を後退させる。
「くそっ・・・気づくのがもう少し早ければ・・・!!!」
彼は自分を責める。
「百万匹のチャオを殺さずに済んだものを・・・っ!!!」
彼は仕方なく、奈々のいる戦艦に報告を入れる。
『・・・こちら賢一、ニステル郊外の収容所で・・・巨大な爆発・・・10分前に黒いリムジンが入る・・・恐らくは・・・』
彼の声は、半分涙声だった。
奈々は答えた。
「・・・分かった、もういいわ。・・・ありがとう。」
戦艦の中は「まさか」という雰囲気が広がる。
「最後までチャオ差別主義を貫くとは・・・・事実上、私達の負けね・・・」
その頃、「独裁者」大川が住んでいた巨大なタワーも、音を立てて崩れ去った。
戦争は、終わったのである。
最悪の結末をもってして・・・
続く