第4話・開戦 ~後編~

後編


彼が出撃した頃には既に、ヤヌス本土まで後数Kmまでステーションスクエアの艦隊が迫っていた。まさに「最後の攻防」である。

出撃直後。
『賢一さん、聞こえますか?私、奈々です。一応、オペレーターをしますので、もしもの事があれば指示に従ってください。』
「ああ、分かった。」
と、その時、予想外の事態が訪れた。

ヤヌスの小型の戦闘機が、次々とステーションスクエア側に体当たりを仕掛ける。
「か、“神風”だと!?」
『恐らく、中にはチャオが乗っているのでしょう。あの独裁者らしいですわね・・・
 仕方ありませんが、撃ち落して下さい。』
「な、なんだって!?
 チャオ解放のための戦争なのに、チャオを殺すって・・・どういう事だよ!」
さすがに「チャオを殺す」という行為に、ためらいが出る。

『・・・よく考えて下さい、この先には数百万匹のチャオが奴隷として扱われているんですよ?
 今ここにいる数百匹のために、数百万匹を犠牲にするのですか!?
 ・・・それに、仕方がないのです。これは戦争なんですから・・・』
「・・・分かったよ。ただ・・・そういう数の問題ではないと思うんだがね・・・」

彼は諦めたように、チャオの乗っている戦闘機を狙い始めた。


ヤヌス側の“神風”戦法で、戦況は再び互角に。
その中で、人型兵器を必死に操る。

「くそっ、アニメのヒーローのようにはいかないかぁっ!」
彼は思った。
そもそもビーム兵器がまだ実用化されてないのに、ビームをバシバシ撃ちまくるあの世界の再現は不可能だ。
兵器は全て実弾系ばかり、さらにロボアニメの華といえる近接戦闘用の武器がない。
まぁ、あれは単なる見世物で、実戦では無意味に近い、という事は分かってるのだが・・・

そうこうしているうちに、
『危ないっ!』
「うわぁっ!」
砲弾を間一髪でよける。

そしてその次の瞬間、
「・・・見えた!?」
味方の弾幕をかいくぐり、戦艦に迫ろうとする1機のヤヌスの人型兵器。
その動きが、見えた。
彼は向きを変え、狙いをつけると、
「ええいっ!」
一発、弾を発射。

その僅かに後、その人型兵器は轟音と共に光の輪になり散った。
『その調子です!』
「っしゃ、だんだんコツが掴めてきたぞ!」

戦艦で賢一との通信を担当していた奈々は、その様子を見て安心した。
(・・・これで、何とかなりそうですわ。
 今、戦況は互角ですが、あの命知らずの突撃も、数に限界があるはず。
 その時が勝負ですわね・・・)

ただ、もちろんこれで終わった訳ではない。
今回ステーションスクエアの艦隊が攻めたのは、ヤヌスでも北にあたる。
南は首都のニステルがあり、防衛が固いため、北から攻略、上陸してから南下という方法をとった。
(上陸した後は、ただひたすら数の勝負・・・そして『独裁者』大川に気づかれるまでの、時間との勝負・・・)


一方、戦況は。
「陸までもう少しっ!行ければ・・・っ!!」

再びステーションスクエアが盛り返し、ヤヌス海岸に迫っていた。
しかし、その時である。
『!!』
敵の砲撃が、なんと賢一の人型兵器に命中したのである。
『賢一っ!?』
「うわぁぁぁっ!!」

幸い、コクピット直撃は免れたが、「足」の部分をもがれ、そのままバランスを失い、海に墜落。
通信は途絶えた。


彼女の乗っている戦艦は、彼女の父親の計らいで、極秘に『異世界の人間』である賢一に対する特別措置がとられている。
そのため、すぐに救助隊が向かった。

「大丈夫だといいんですが・・・」


その数時間後、ヤヌスの艦隊は壊滅、海兵隊がヤヌス本土に上陸。地上戦が始まった。


                              続く

このページについて
掲載号
週刊チャオ第82号
ページ番号
5 / 9
この作品について
タイトル
壊れた虹の向こう
作者
ホップスター
初回掲載
週刊チャオ第80号
最終掲載
週刊チャオ第85号
連載期間
約1ヵ月5日