第3話・兵器

そして、翌日。

2人と2匹のチャオが向かった先は、
「軍の基地・・・?」
「ええ。あ、構える必要はないですわよ。リラックスして。」

そう言って、基地の中へ入っていく。

それから賢一は、その「場所」に着くまでの事をよく覚えていなかった。
軍の基地に入る、緊張とか恐怖とか、そういうものが原因であるのはハッキリしていた。

そして、最後の扉が開く。

「これですわ。」

彼女が指した先には・・・

             「壊れた虹の向こう」第3話 『兵器』


「こ、これは・・・・ロボット!!??」

彼が見たのは、ちょうど前いた世界ではアニメにしか出てこないような巨大な人型ロボット。
それが今、目の前に10機程度並んでいる。高さは、10m程度だろうか。
当然、すぐには信じがたい光景であった。

驚く賢一の横で、奈々は説明を始める。

「これは『人型兵器』。10年程前に実用化されて、実戦で活躍。
 それ以降、この国はもちろん、世界各国で主力として様々なタイプが生産されています。
 ヤヌスでの生産は確認されてないんですけど、噂は絶えませんわ。」
「ノラ、生で見るのは初めてなのら!」
「すごいらら~!」

「でも・・・こんなの、ミサイルとか当たったらおしまいだろ?
 だから俺の世界では実用化されてないんだけど・・・」
「ミサイルは巨大です。ですから、かなり遠い距離からでも察知でき、回避できるのです。
 ただ前に進むだけじゃありませんからね。
 ・・・そう、『巨大な歩兵』だと思って頂ければ。」
「そんなもんなのか・・・」

彼はただただ驚くばかり。
そんな賢一をよそに、説明を続ける。

「これはこの国で最もポピュラーなタイプ、『ヴィクトリー』です。
 他にも、様々な状況に対応するため、現在この国では6種類の人型兵器があります。」


「お、お嬢ちゃん、来てたのかい。」
「あ、隊長、こんにちは。」
扉の方から、一人の軍人らしき男が入ってきた。
どうやら、彼女の所属する隊の隊長らしい。
「そこにいる彼は?ひょっとして、彼氏かい?」
「いえ、親戚です。ちょうど今、ウチに遊びに来ているんです。」

「・・・あ、初めまして、こんにちは。親戚の相原賢一です。」
慌てて挨拶する。
「へぇ、親戚かぁ。どうだい、人型兵器を生で見た感想は?」
「いや・・・もう、凄い迫力で、ただただ驚いてます。」
「・・・どうだい、コイツに乗ってみねぇか?」
「・・・え?」

唐突の問いかけである。
その質問がどういう事を意味するか、彼は分からなかった。

「いやね、聞いてるだろ?ヤヌス攻撃が近いって噂は。」
「え、ええ・・・。」
「それで、軍の上の方も兵力の増強を図ってるって訳だ。
 ・・・どうだい、志願してみる気はないかい?」
「あ、はぁ・・・」

返す言葉に困る。
それを横で見てた奈々が口を挟んだ。

「・・・隊長には、真実を話してもいいでしょう。
 実は・・・」

と、全てを話してしまった。

「・・・もちろん、これは秘密の話です。マスコミもうるさいですしね。
 ですから、一緒に行動しないといけないんですけど・・・そろそろ私も召集がかかると思いますし・・・どうしましょう?」
「そうだなぁ、君の父親に頼んで何とかしてもらうってのはどうだい?」
「やはりそうなりますわね。・・・頼んでみますわ。」
「少なくとも、同じ戦艦には乗らないとダメだろうな。」

本人そっちのけで話は進む。
そして数日後、いきなり彼は召集されるハメになった。

「そ、そんなのありかよっ!「戦争する感覚」すら全く分かんねぇってのに!」
「心配する必要はないですわ。
 父親の計らいで、名目上は補給部隊。実際には何もする必要のないように、上手く仕組んでありますわ。」
「そ、そんなことできるのかよ・・・」
「それに、「戦争する感覚」なんて、誰も実戦に出るまで持てませんわよ。
 私だって、まだ実戦に出た経験はありませんし。」
「・・・ノラとララは、やっぱり留守なのら?」
「ララ、寂しいらら・・・」
「いいえ、ノラもララも、チャオ部隊として入隊させておきましたわ。
 但し、ノラとララは戦わなければなりませんよ。覚悟はいい?」
「ノラ、頑張るのら!」
「ララもらら!!」
「それでは、出発しましょうか。」

そして、彼女達が家を空けてから数週間後。

ステーションスクエアの電光掲示板に、アナウンサーが映った。

『臨時ニュースをお伝えします。
 軍司令部は今朝、ヤヌスへの攻撃を開始したと発表しました。繰り返します・・・・』


                              続く

このページについて
掲載号
週刊チャオ第81号
ページ番号
3 / 9
この作品について
タイトル
壊れた虹の向こう
作者
ホップスター
初回掲載
週刊チャオ第80号
最終掲載
週刊チャオ第85号
連載期間
約1ヵ月5日