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「よかった~エミちゃんが来てくれてー。台風直撃なんてまいったよ~」
店長大喜び。
「店長ぉ~着替え着替え~!!イベント用のTシャツとズボン借りますよ~」
「奥のロッカーに入ってるから使っていいよー。でさ、悪いけどS町の店の看板が傾いたらしいんですぐ応援いかなきゃならないんだ。ちょっと一人で留守番しててねー」
「えー!!看板ってソレヤバイですよ。店長すぐ行ってあげてください」
「エミちゃんってホントにいい子だなぁ、なんかあったらすぐテルしてねー」
ってこの暴風豪雨の中でS町まで車でいけるのかな? けど看板はマズイ、外れたらって思ったらそんな事いってられないか。大人は大変だなぁ。命がけだ・・・・。
私はさっさと着替えてメイク軽くしてレジのポジションについた。
外はどんどん雨と風が強くなってるみたい。お客はゼンゼンこない。
まぁ台風は勤務時間が終わるころには過ぎてるだろうし~ってのんきにかまえてた。
にしてもあの水色の動物。
ちゃんとなんか食べたのかなぁ。
ホントにあれはなんの新種動物なんだろう。もしかしてちょーレアな珍種のなにかとか~。
あ~やっぱり彼に会いたいなぁ。どこに住んでて何歳で…そいで彼女いるのかなぁ。あんな素敵な人にいないわけないかなぁ。でもでもぉ~。
アッ!
私の執念が天に届いた!
今まさに彼が店に入ってきたのだ。あの写メの動物をわきにかかえて。
これは夢? ううん、現実よ。やったぁぁ☆
けどなんか様子が変。前も変だったけど、比較になんないくらい変みたい。
ずぶぬれの彼は真剣な顔で私のレジに走って直行してきた。
「やぁ! 君がいてくれてよかったっ」
「えっ。はっ、はい。あの、私もですっ」
「追われてるんだ。かくしてくれないか」
「へっ??」
「チャオだよ、コイツをどこかにかくしてくれ、すぐにっ」
そう言って水色の動物をレジテーブルの上に置いた。
「わぁ~。ナマのほーが10倍かわいい~♪チャオって名前なんだ。んで結局ナニ食べたの?」
と、店の表に黒いベンツが二台止まった。
「説明あとでするからっ。あいつらにつかまるわけにはいかないんだ」
「えーと、かくすといっても…じ、じゃぁ店長まだ帰らないと思うしこの奥の社員室のデスクの下かロッカーの中にでも入っててー」
「俺がソコ入っていいの?」
「急いでるんでしょ! いいから早くここから入ってそのコとかくれてて!」
「恩にきるぜ」
彼はウィンクするとプリンを一つ手に取った。
「君のカンヒットだったよ。後払いでヨロシク」
チャオはプリンを見て大喜びしてる。
私は・…私は立ってるのがやっとだよ~ウィンク攻撃モロくらってしまったじゃないのーー。プリンなんていくらでもあげる…ってそれはまずいか。
んな場合じゃナイ。車から人が降りて店にむかってきた~。
乱暴にドアが開き、台風の暴風音とともに黒スーツの男達四人が店に入ってきた。
「い、いらっしゃいませ」
声が震えちゃった。すごく怖かったんだもん。
「お嬢さん、今水色のぷよぷよの不思議な動物を連れた小僧がここに来たかね」
ヒゲをはやした太ったおじいさんが大声で聞いてきた。
「来たけどナニも買わないですぐに出ていっちゃいました」
「ほほう?…ふむ…ふむ…」
おじいさんがじーっと私の目を覗き込んだ。私は思わずそらしてしまった。おじいさんはニヤリと不気味に笑って言った。
「お嬢さん、嘘はいかんな。お前ら店ン中くまなく探せ」
「ハイ」
一人の男が奥の社員室に入っていった。
「逃げてーーーーーーー!!!!」
私は叫んで男の後を追おうとしたけど、おじいさんに腕をつかまれてしまった。イタタっ。このおじいさん力あるぅ~。
「困ったお嬢さんだ。我々の邪魔はしないほうが身の為だぞ」
「いったぁーい!さっさと放してよっ!彼とチャオを捕まえてどうする気?!」
「フフフ。我々が欲しいのはそのチャオだけだよ。もともとチャオはワシが見つけたんだ。長年の夢が叶ってやっと手にしたモノを返してもらうだけさね」
「先に見つけたからっておじいさんのモノになる道理はないはずよ。きっとチャオはおじいさんが嫌いで逃げ出したのよ」
「な、なにっキサマー、誰に向かってっ!」
きゃー。おじいさん顔真っ赤にして怒っちゃった~。こ、殺されちゃうかもっ。
その時、社員室に行った男が大声で叫んだ。
「博士ーっ!小僧がどこにもいません!!裏口から逃げたようです!」
「くっそー。すぐ追いかけるぞ!なにがなんでも捕まえるんじゃーーー」
「博士、小僧がまた戻ってくるかもしれませんから私はここに残ります」
社員室から出てきた男が言った。
「そうさな。お嬢さんがサツにタレこむかもしれんしな。よし、お前はここにいろ。まぁこの台風じゃそう遠くに逃げられんて。ヒヒヒッ」
あうー。背筋に悪寒が走った。チャオじゃなくても逃げ出すワナ。
ヒゲのおじいさんと男達はドヤドヤと一台の車に乗り込んで走り去って行った。