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 今日も今日とて散歩をする。太陽が昇っては落ちるように散歩をする。休日は散歩なのだ。休日でなくても散歩はするが、とにかく散歩だ。
 そして、二度あることは三度あるのだ。とにかくそういうことにしておこう。例によって美紀に遭遇する。
「……君とは毎週ここで会っている気がする」
「不思議なことに過去に二回くらいここで会っている気がする。運命かも?」
「運命の出会いなら遅刻寸前で走っている時にぶつかるとか……」
「三回連続で」
「それはそれでむかつくなあ」
 出会いとは一発勝負であると二人は感じた。普通の出会いをしてしまう前に曲がり角でぶつからなければだめなのだ。全力で曲がり角で待機するべし。
「随分黒くなったね、チャオ」
「嘘を言わない」
「お世辞だから」
「お世辞だったかー。あはは。殺すぞ」
 いつも通りのダークトーク。文人はマンネリを感じた。ヒーロー方向でも話すべきだと判断し、実行した。
「あなたはまるで天使だ」
 チャオの手を取って。
「それは普通女性に向けて言うセリフじゃないんですかね?ですかね?」
 無意味に語尾を繰り返すことでちょっとヒロイン度を上げて対抗。
「だってチャオ可愛いしなあ」
「可愛いよねー」
「可愛いなー」
「可愛いー」
「可愛い」
「可愛い」
 無意味に繰り返しながらチャオをなでる。なでまくる。
「しまった、無意味に時間を経過させてしまった」
 先に我に返ったのは美紀だった。チャオを飼っていた経験のおかげである。これがなければ今頃二人はチャオの可愛さの捕虜になっていたに違いない。
「君はよく散歩をするね」
「ん、まあね」
 文人はまだチャオをなでている。色が変わる気配はない。まだその時期ではないのか、彼がニュートラルな人間なのか。
「なんかさ、散歩をしてれば何かを見つけられる気がしてさ」
「何かって?」
「わからない。でもきっと大切な物だよ、それは」
「見つけたら散歩をやめるのかな?」
「かもね。実際そんな感じになりつつあるし」
「そんな感じって?」
「通るルートが固定化されつつあるな、って」
「……」
 彼の言っていることが何を意味しているのか、なんとなく美紀はわかった。単なる思い込みかもしれないが、女より男の方が思い込みは激しいそうだし、おそらくその予感は当たっているのだ。さて、ここで問題になるのはそれが美紀自身にとって迷惑かどうかである。どうなんだろう。わからないという結論しか出ない。時間をかければ答えは出るのだろうか、と不思議に思った。
「機械になるのは問題ですよ、文人君」
「メカ文人っていうのも悪くない。ああ、悪くない!」
 無意味に両腕を広げ、高らかに言う。演劇な感じで。
「君は人間だ!」
 無意味に演劇風に返す。会話はノリが命だ。
 数秒、間を置いて二人は正気に戻った。
「人間ってなんだろうね」
「鞭を用いてエロいことができる生き物」
「ひどい定義だ」
「哲学的なことを言う=ネタ振り」
「それにしたってひどい。そういう趣味じゃない人は人間じゃないのか」
「そうかも」
「肯定しちゃうのかよ」
 哲学は爆発だ。
「ところで文人君、自然の綺麗な散歩ルートはあるかね?」
「え?うん、いくつかあるけど」
 突然の質問だったが、印象に残っているスポットはすぐに浮かんだ。
「ここをうろつくのは飽きてきたから、そこへこの子を連れていきたいなあ」
「ああ、いいよ。今から?」
「んー、来週でいいや」
「ういっす」
 この後文人は頭に浮かんだスポットのいくつかを見て回った。チャオにとっていいスポット、となると自然多めの方がいいのだろう。自然は文人も好きだ。水辺があり、チャオが遊べそうだった場所を確認した。

このページについて
掲載日
2010年7月16日
ページ番号
4 / 9
この作品について
タイトル
きっと楽しい。
作者
スマッシュ
初回掲載
2010年7月16日