11話 絶滅という予想
「もうすぐ城だな」
「うん。この調子だとあれだねぇ。待ち合わせに間に合うにはあまり奥まで行かない方がいいみたいだよぉ」
「うむ。さらに厄介なことだ。敵がいるようだな」
「えぇぇ!?」
銀色のニュートラルチカラチャオ、ウェルクが指を指した。そこには青い腕輪をしたチャオがいた。よく見ると、シャドウチャオなのがわかった。
「ねぇ、あれってもしかしてぇ…」
「うむ。ラ・ダ・クオスとかいうやつだな」
「ラ・ダ家って最強って聞くけどさぁ、実際どうなのぉ?」
「まぁ、最強の四人組とか呼ばれている集団もいるくらいだしな。強ければなんでも最強って言いたがるやつがいるんだろうな」
そう言っている間に、ラ・ダ・クオスの近くまでやってきた。二人はその場で止まる。緑のニュートラルヒコウチャオのアスはウェルクより少し前で止まった。
「お前がラ・ダ・クオスとかいうやつだな?」
「あぁ、そうだが何だ?」
「大人しくしてないと痛い目にあわせますよぉ」
「面白い。返り討ちにしてやる…」
「面倒なことになりそうだな。とっとと終わらせるぞ」
ウェルクはそう言うと後ろに下がりながら赤いカオスドライブをキャプチャーする。だが、ラ・ダ・クオスとアスは何もしない。
「まずはお前からだ」
「でぇぇぇいっ!!」
突然ラ・ダ・クオスがアスに向かって突進していく。だが、アスは両手を前に突き出した。すると、その手から暴風が吹き出す。その影響で、ラ・ダ・クオスは前に進めなくなる。そのままウェルクがその追い風を利用しながらラ・ダ・クオスに猛スピードで殴りかかった。
「下がればすむ話だな…」
「あまいな」
ウェルクの攻撃ははずれたのだが、ウェルクの右手からは赤い巨大な弾が出てきていた。それがラ・ダ・クオスに当たり、ラ・ダ・クオスは本来の着地地点よりはるか遠くまで飛ばされた。その時にはアスは風を出すのをやめていた。ラ・ダ・クオスは立ち上がると同時に緑のカオスドライブをキャプチャーし、再び走り出す。
「貴様、今度はこっちの番だ」
「アス、頼むぞ!」
「イェッサー♪」
ラ・ダ・クオスがさきほど以上の速さなのを確認したウェルクはアスに風を出すように要求する。それに素早くアスは反応して再び両手から暴風を吹かせた。ウェルクはラ・ダ・クオスの横を猛スピードで通り抜けた。ラ・ダ・クオスはそのままアスの方へ行く。この暴風に逆らえるほどウェルクが速いとは思っていないからだ。
「フハハハハー、近づけないだろぉ」
「ならば、こうする」
ラ・ダ・クオスは紫のカオスドライブを取り出し、キャプチャーした。ラ・ダ・クオスの頭のラインが黄色く変化し終えた瞬間、ラ・ダ・クオスは飛び上がった。取り出す時に走るのをやめていた上、それを取り出すまでに時間がかかったため、距離はさきほどより開いていた。だが、ラ・ダ・クオスにとってはその程度の距離などたいして戦況に影響しなかった。ラ・ダ・クオスはまずジャンプして暴風が当たらない高さまで飛び上がった。そして、彼の能力により異常なまでに高くなった飛行能力を利用してアスがどんなに必死に両手を彼に向けようが、風が当たる前に避ける。
「ぬおっ…」
「ナイスウェルクゥ」
アスに上空から接近するラ・ダ・クオスの動きを一瞬封じたのは、ウェルクの放った二枚の紫色をしたカード状の物。それはラ・ダ・クオスの真下から急上昇してきた。ラ・ダ・クオスは再びアスの放つ暴風の回避をし始めるが、ウェルクの放ったカードは再びラ・ダ・クオスを狙って戻ってきた。ラ・ダ・クオスがそれを回避しようとした瞬間、二枚のカードは挟み打ちをしようとしているのか、二手に別れた。
「なんなんだ、この…まるで意志があるような…」
「追加するからな。覚悟しとけよ」
そう言ってウェルクは紫色のカオスドライブをキャプチャーし、ラ・ダ・クオスに向けて届かないパンチをした。すると、右手からあの二枚のカードが飛び出した。ラ・ダ・クオスはアスの出す暴風に当たらないようにしつつ、四枚の様々な行動をするカードを避けなくてはいけないという状況になってしまった。
「しぶといやつだな」
ウェルクはとにかく避け続けているラ・ダ・クオスを見ながら呟く。そして、緑のカオスドライブをキャプチャーし、さきほどと同じようにして緑色をした弾を放つ。その弾は無数にあり、網のようにラ・ダ・クオスの行動範囲を狭くしてから、一斉にラ・ダ・クオスの方へ集まってきた。
「ぐあっ!」
緑色の弾に囲まれたラ・ダ・クオスにカードが背中に当たった。そして、暴風に吹き飛ばされ、彼の背後にあった無数の弾にぶつかっていく。さらに残りの三枚のカードは、背中、アゴ、頭、と連続でぶつかっていった。この連続攻撃により、ラ・ダ・クオスは地面に落下していった。
「しっかし、すげぇな。お前の出す風は」
「うん。だってあれ、ある国でよく見られる、タイフウっていうやつをキャプチャーしたやつだからねぇ」
「ふむ。……ここで二手にわかるか」
「了解~」
「奥まで行き過ぎるなよ。戻れなくなるからな」
そう言い、二人は別れる。ウェルクは近くの町で休憩をすることにした。その町にあった廃墟になったビルに彼は身を隠した。しばらくして、物音が聞こえた。外からではなく、彼のいる廃墟からだった。