9話(2) 命令
「能力を持つチャオを探せ…か。具体的にどうやって探せって言いたいがねぇ」
「殺さないように、なおかつ相手が本気になるぐらいの加減…。それぐらいできなきゃ駄目…とでも言われているみたいで面白いじゃないか」
「そういうもんかねぇ…」
ダークノーマルチャオのフェルスが呟く。彼と同じくチャオキラーのダークチカラチャオは腰にある二本の刀を見てにやりとしながら話している。
「ん…?なんだあいつ」
フェルスは切り株に座っているアメジストのニュートラルノーマルチャオを指さす。彼は二人に背を向けている状態だったが、念のため二人はそれぞれ別々の木に隠れた。
「アメジスト…か。ジュエル色のチャオの多くは結構レアなタイプの能力を持っているって聞いたことあるが、どうなんだかなぁ…」
「ちょっと待て、フェルス。あいつの武器、見えるか?」
「は?刀…だろ?だからなんだってんだ?」
フェルスはやけに真剣な顔のダークチカラチャオを見ながら言う。ダークチカラチャオもフェルスの方を向きながら話す。
「あいつと戦うのはまずいぞ。あいつの名前はギャラクシー。能力は光をある程度の時間キャプチャーし、右手からレーザー光線を放つという能力。最強とすら言われたことがある」
「れぇ…ざぁ?…ってか、なんでお前が知ってるんだ?ははぁ、まさかストーカー…」
「違う」
「チャオキラー…か」
「しまっ…!!」
アメジストのニュートラルノーマルチャオ、ギャラクシーはダークチカラチャオが隠れていた木に向けてレーザー光線と呼ばれる物を放つ。ダークチカラチャオは素早くフェルスのいる方に飛び退けたので無事だったが、木には大きな穴が空いていた。ダークチカラチャオは素早く二本の刀を鞘から引き抜く。フェルスは赤と緑のカオスドライブを一個ずつキャプチャーしてから姿を現した。ギャラクシーも二人に向かって走りながら刀を鞘から引き抜いた。
「フェルス。わかってるとは思うが、あいつは走りながら光をキャプチャーして、いつでもレーザー光線を出せるようにしている。気を抜くなよ…?」
「ほんじゃ、レーザーは対処しようがないからお前はあいつの刀での攻撃を防いでろ。俺がその間に本体を撃つ」
「いい能力持ってるやつなんだから、殺すなよ…」
「それはこっちの台詞だ。間違っても切り裂くなよ?」
二人はそう言うと同時に、左右に分かれる。ダークチカラチャオはギャラクシーから見て左に少し動くと、ギャラクシーに向かって刀を振り上げながらジャンプした。ギャラクシーは刀で防御する。その間にフェルスがギャラクシーの背後に回り込む。
「…!一本の刀で俺の攻撃を完全にっ…!!」
「俺に勝とうとして、二刀流で挑んできた奴は山ほどいるさ。だが、流石チャオキラーだ。そう簡単にはいかなそうだな」
「見切られたか…」
「俺が一人の相手しか注意できないほど熱くなるタイプだとでも思ったのか?」
ダークチカラチャオは二本の刀で連続攻撃を試みるが、全てギャラクシーは刀で防ぐ。その隙にとフェルスが銃口となった右手から緑色の弾を撃つ。緑色の弾は細かく分裂し、広範囲への攻撃をするが、ギャラクシーは弾を撃った瞬間から行動を始めていたので一発も当たらなかった。さらに、ダークチカラチャオの行動を一時的に封じてしまい、フェルスの攻撃は自分達を不利にしてしまった。ダークチカラチャオはその場に止まり、目を瞑っている。
「まずはお前からだ」
「一筋縄では勝てないことはわかった…」
弾に囲まれて動けないダークチカラチャオに向けてギャラクシーはレーザーを撃つ。しかし、ダークチカラチャオは今まで以上のスピードで弾を避けながら走り、レーザーを回避した。
「こうなったらとことんやっちまえ!ブレイブッ!!」
「おぉうっ!!任せろぉぉぉっ!!」
ブレイブと呼ばれたダークチカラチャオはギャラクシーの方へ走る。その間にも走るスピードは上がってきている。ブレイブはさきほどと同じように二本の刀で交互に攻撃をする。だが、ギャラクシーはさきほどは全く動じていなかったのだが、今度は少しずつ退いている。
「ちっ…どんな能力だかは知らないがっ…」
「フェルスゥゥッ!!こいつの右手を撃てぇぇぇっ!!」
ギャラクシーはレーザーで攻撃しようと右手をブレイブに向ける。それと同時にブレイブは大声で指示をする。それを聞き終わるとほぼ同時にフェルスの右手から赤い弾が放たれる。その赤い弾は見事にギャラクシーの右手に当たり、大げさな爆発音と共に赤い光が広がる。ギャラクシーの右手はその痛みでまともに動かせなくなったようで、右手に力をいれるのをやめた。
「くらえっ!師匠直伝『V』!」
ブレイブは刀で「V」を作り、それをギャラクシーの刀に叩きつけようとする。だが、ギャラクシーは素早くその攻撃を横に避け、ブレイブの真横から腹部を切ろうとする。