22話 脱走者
???は銀チャオで、ダークハシリヒコウタイプである。
クリーム色の半袖シャツを着ている。
頬と頭の玉に赤いくの字の模様がある。
そして、先端に赤く光る珠が付いた杖を持っている。
何かに怯えているのか、全身震えている。
???「・・・・・・・・・・・・」
その時、後ろの空間がバチバチと音を立てて歪んだ。
???「・・・・・・!!」
???は立ち上がって杖を構えた。
そして、空間に歪んだ穴が開いた。そこから出てきたのは・・・
クルス「やっぱここかい、クレイ。」
クルスであった。
クレイ(♂)「・・・・・・なんだ・・・君か・・・」
クレイは力が抜けたように座りこんだ。
クルスもその近くに座りこんだ。
クルス「何で逃げ出したんですか?」
クレイ「・・・・・・怖いんだ。みんな・・・」
クルス「そっか。あれだけ酷い目に会ったんだもんね・・・」
それは5年前。クレイは親から虐待を受けていて、それを理由に他のチャオからも凄くイジメられていた。
ある村にある洞窟。
クレイ(当時6歳)「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」
チャオ1「おらおら、追い詰めろー」
チャオ2「そっち行ったぞー」
チャオ3「この先は行き止まりだぞー」
クレイは行き止まりに追い詰められてしまった。
クレイ「・・・・・・!」
チャオ1「へっへっへ・・・」
チャオ1はレイプの頭を掴んで壁に叩きつけた。
クレイ「ぅ・・・く・・・」
チャオ1はクレイを地面に叩きつけた。
チャオ2、3はナイフを取り出した。
チャオ2「くらいな!」
チャオ2はクレイの腹にナイフを刺した。
クレイ「ぅぁぁ・・・・」
チャオ3「オウオウ、そんなかすれた声じゃなに言ってんのかわかんねーぞ!」
チャオ3はナイフをクレイの右腕に刺した。
クレイ「うう・・・・・ああ・・・・」
チャオ1「そろそろ死なすか。」
そう言うとチャオ1はトンカチを取り出した。
チャオ1「頭かち割ってやる!」
ザシュワア!!!
チャオ1は背中を斬られて倒れた。
チャオ2「ヒッ!?」
チャオ3「だ、誰だ!?」
???「・・・・・・・・・」
そのチャオはなぎなたを振るい、チャオ2、3も切り捨てた。
???「・・・・・・・・・」
クレイ「あ・・・・・ぁ・・・・・」
クレイは全身震え、怯えきっていた。
???はゆっくりクレイに近づいてきた。
???「・・・・・・・・・」
???は手を上げた。
クレイ「ひっ!」
クレイは目を瞑った。しかし???は優しい笑みを浮かべてクレイの肩に手を乗せた。
???「大丈夫ですか?」
クレイ「え・・・・・・?」
クルス「僕はクルス。あなたは?」
クレイ「・・・・・・クレイ。」
クルス「クレイかぁ。いい名前ですね♪」
クルスはクレイに刺さっていたナイフを抜いた。
クルス「これは酷い・・・リカバリー!」
クルスの魔法でクレイの身体の傷は完全に消えた。
クレイ「・・・!?」
クルスは少し間をおいて話し出した。
クルス「あなたは、いつもああいう連中に、あんな目に遭わされてるんですか?」
クレイは頷いた。
クルス「やり返そう、とは思わないんですか?」
クレイ「・・・どうせ・・・僕は無価値だから・・・何をやっても認めてもらえないんだ・・・・・・」
クルス「あなたはこの村では確かにそうかもしれません。でも、外の世界へ出てはどうですか?」
クレイ「外・・・?」
クルス「僕も昔、狭い世界で生きてました。でも、外に出て色んな物を見て、色んな事感じて、そうしたら・・・なんていうか、自分の居場所を見つけたんです。だから、あなたも外の世界を見て、自分の居場所を探したらどうです?」
クレイ「・・・そっか・・・・・・・・ありがとう・・・・・」
(回想終わり)
クレイ「そう言って、君はこの杖を僕にくれた・・・」
クルス「まだ持ってたんだ、その杖。」
クレイ「誰も僕を分かってくれなかった・・・でも、クルスは少しだけど、僕のことを分かってくれた・・・」
クルスは立ち上がった。
クルス「あなたの居場所はあなたが見つけるものです♪行くのも戻るのもあなたの自由です♪僕は帰るから、あなたは自分の道を探してください♪その道によっては・・・また会えると思います♪」
クルスはまだ残っていた歪みの穴をスルッと抜けた。
クルス「・・・・・・・・・そうだ、「暗部」に気をつけて下さいね・・・」
歪んだ穴は消えた。
タタタタタタタ・・・
カイト「あ、あのチャオかな?」
クレイ「・・・・・・!!」
カイト「君は・・・?」
クレイは杖を振り上げた。
すると、杖の珠から光が溢れ、クレイはそれに包まれて消えた。
カイト「・・・?」