第十五話 ~地獄ランニング~
アナウンスが流れてから十分が経過した。
チャオたちがざわつき始める。
「おい・・・どういうことだ・・・?」
「何もおこらねえぞ・・・?」
そんなざわつきを吹き飛ばすかのように、突然部屋の扉が開いた。
ユリカゲ達が入ってきたのと反対側についている扉だ。
「あんなところに扉なんてあったんだな・・・」
アスカナが始めて扉を見たかのように言う。
「しっかり隅々まで見渡して状況を把握しねえからそうなるんだよ。」
ユリカゲがけなす。
扉の向こうに立っているのは受付係のチャオだった。
「お待たせいたしました。試験開始の前に団長のお話がございます。私についてきてください。」
それだけ言い放つと受付係はくるりと踵を返すと、ツカツカと歩き始めた。
それにつられてチャオたちも尾いていく。
「団長とご対面か・・・」
ベニマルがめずらしく声を出した。そして人の波についていく。
「アスカナ、ユリカゲ。俺たちも行くぞ。」
シラウズも歩き始めた。
部屋を出ると他の部屋からも同様にチャオの大群が出てきた。
各部屋のグループは合同し、同じペースで歩いていた。
いつの間にかマイクを取り出した受付係の一人が、声を響かせる。
「えー、本来は専用の飛行船で目的地に向かう予定だったのですが、被り物団側の都合により試験は一回のみ行うことになりました。
そのため試験会場への移動中に受験者を絞り込む、という形をとらせていただきます。
試験会場まで無事にたどり着きたい、という方はどうか私どものそばを離れませんように。」
受付係は走り出した。相当速い。
曲がり角を右に曲がり、建物を抜けると、巨大なトンネルだった。
電灯は天井に数個づつついている程度だ。
「うひゃ~~~っ!こんな速いペースで会場まで走んのかよぉ!」
アスカナが半泣き顔で必死に走っている。一方のユリカゲは流石カケチャオ、といったところか涼しい顔で足を運ぶ。
「ふん、こんなとろいペースで数絞ろうってか。
上等だぜ!」