第六話「怪物」
目の前には怪物的なロボット。
中央制御室は扉が無い。
ウィリーシスは武器といった武器は持っていない。
何とも絶望的だ。
どうこの危機的状況を切り抜けるかを考えていると、
施設内スピーカーからマザーの声が聴こえてきた。
『ヴァークロス、その者・・・を破棄し・・・ろ・・・。必・・・ずだ。』
この合成ロボットは『ヴァークロス』と言うらしい。
「クロス」は「重なっている」という意味だろうか。
「ヴァー」は今一分からない。
そんな事考えているうちにヴァークロスの眼差しはこちらを向いている。
『グルゥゥゥ・・・ゴォォォオォォオオォォ!』
と、脳を揺らすような咆哮を二度三度した後、ウィリーシス目掛け飛び掛ってきた。
ウィリーシスは間一髪、飛び掛るヴァークロスを屈んで避けそのまま廊下を走り出した。
「あ、あんなの居たら入れるわけないじゃないか!」
そんな愚痴をこぼしながらウィリーシスは逃げていった。
ヴァークロスは勢いあまり、ウィリーシスがいた後ろの壁を半壊させてしまった。
転がる破片を踏み、ヴァークロスはライオンの前足と蜘蛛の八本の後ろ足を巧みに使いウィリーシスを追った。
とにかく逃げた。
体力が尽きるまで逃げるつもりだった。
少しでも気を抜くと、次の瞬間目に映るのはあの世の光景だろう。
そう思った。
「どうすれば・・・ん?」
夢中で走っていて気付かなかったのだが、今走っているところは破損の特にひどい通路だ。
大きな壁の破片やら落ちた天井やら、ひたすら走りにくい。
それを気にしながら走っていると今度は目の前に天井の破片が落ちてきた。
少し驚いたが、すぐに平静を取り戻して走ることを続けた。
今の音に気付いたのか、ヴァークロスの足音が近くなったような気がする。
どうする・・・。自分の中でその言葉だけが響き続ける。
そのうち、壁も天井もほぼ完全に崩れてチャオ一人がやっと通れるという箇所があった。
何とか通ろうとしても、背負っているノートパソコンが邪魔になる。
どうしよう・・・。
そんなことを考える間もなく、脅威は迫ってくるばかりだ・・・。