第五話「暴走文明」
ウィリーシスが見る限り、施設内はボロボロだ。
だが奥へ行けば行くほど破損は少なくなっていく。
中央にマザーのメインコンピュータがあるからだろう。
ウィリーシスはそこを目指し走り続ける。
途中警備のロボが何体か道を塞いだが、
思考プログラムが単純なので曲がり角に隠れるだけで凌げた。
道の途中にはサポートロボが何体も転がっている。
そして遂に、中央管理室へと辿り着いた。
「ここが中央管理室・・・。簡単には入れそうにないな。」
その理由は『扉が無い』ということだった。
ちゃんと目の前の室名を表記している札には「中央制御室」と書かれている。
だが、扉が無い。
これではどうしようもない。
カードキーを通す所も無い。
パスワードを入力することも出来ない。
「く・・・。どうやって開けろって言うんだ・・・。」
悩んでいるウィリーシスに追い討ちをかける様に不幸なニュースが舞い込んできた。
「ピリリッ、ピリリッ。」
PCの呼び出し音だ。
新しくニュースが更新されたか、メールが来たかである。
ウィリーシスは素早くノートパソコンを開き、ニュースの欄を見る。
何も更新されていない。
ではメールだろう、とウィリーシスはメールBOXを開いた。
すると大統領からメールが。
送信者:ハルルハッツ大統領
件名:オモチャオの暴走発生
内容:単刀直入に事を説明する。
各地のオモチャオが暴走を開始。
原因は不明。情報局からオモチャオの人工知能に悪影響を及ぼすとされる電波が放たれているとの噂。
早々にマザーのICを更新、もしくは破棄しろ。
既に幾つかの都市が壊滅している。
最早この国が滅びるのは時間の問題。
この国には軍隊も無いのだ。対抗手段は君達のみ。
武運を祈る。
最早後には引き下がれない。ウィリーシスはそう思った。
まずは中央管理室の入り口を見つけなければいけない。
ウィリーシスは別の場所に入り口があるのではないかと推測し、周辺を捜索し始めた。
その時だった。
「ズドォォォォン・・・。ガラガラガラ・・・。」
ウィリーシスのすぐ横の部屋の壁が吹き飛んだ。
そして崩れた壁の向こうから歯車の音と共に一体の巨大なロボットが。
よくよく見ると、何体かの警備ロボット、サポートロボット、コンピュータが混ざり合い、組み合わさって出来ている。
上半身は獰猛な獣の奇形を連想させるような形で、赤く光る目、頭は鳥、前足はライオン、更には蜘蛛の様な足まで生えている。
まるでグリフォンに更に動物を合成したような姿だ。
下半身は完全ではなく、途中で途切れて触手の様になっている。
どうやらマザーが強制的に組み合わせたようだ。
奇妙な動物の姿は、動物の情報を元に形成された結果である。
「侵ニュウ者発ケン・・・。排ジョ対象ツイ加・・・。
ノートパソコンヲ所持・・・。奪イ吸収セヨ・・・。」
つづく