第二話「混乱故戦」
西暦4589年七月二十一日
午後三時二十九分五十二秒
情報データ全消去
この現象に一番驚いたのは各オモチャオだと思われる。
マザーが暴走し、命令がストップ。
都市部のオモチャオは絶え間なく命令を受信している。
それが突然止まったのだ。
それでさえ驚くのに、
さらにマザーは情報の記録を全て消去したのである。
オモチャオは情報局内のデータを一覧出来る。
何故なら、事件などの出来事を新たに起きた事件に照らし合わせ、
前の事件との関連性を図ったりする。
もちろん都市外のオモチャオも例外ではなかった。
例外ではなかったが・・・一体だけ例外がいた。
そう、カリーアドのαー238だ。
異変には気付いたが、慌てる様子はない。
何故なら、命令が途切れるのは
「日常茶飯事」だったのであるのだから。
彼の受信アンテナは故障していたのだ。
なので「サボり癖」がある「ドジ」などと言われていた。
故に命令が途切れる、または途絶えても慌てることなどないのだ。
しかも仕事が少ない=命令が少ない、
ということなので命令が暫く来なくても気にならない。
ちなみに「意地っ張り」は彼の本来の気性と思われる。
こうした情報の途絶えにより、「マザーの暴走」
という事件も他の地域になかなか伝わらなかった。
オモチャオは情報の受信機も兼ねているのだが、マザーの暴走に
よる受信情報の混乱で全く使い物にならなくなっていた。
αー238を除くカリアードの他のオモチャオも例外ではなく、
混乱していた。
カリアードの住民にそのことが伝わったのは二日後だった。
「マ、マザーコンピュータが暴走!?
一体どうしてですか!?」
この日もαー238といたウィリーシスは
一緒にその事件のことを聞いていた。
「何デチャオ!何デまざーガ暴走シタチャオ!」
オモチャオの代わりに情報を伝えに来た情報局の一職員に、
そんなことを聞いても無駄であることは確かである。
そうこうしているうちに、αー238の前に
黒塗りのエア・カーがやって来た。
「ナ、何チャオ!」
静かにエア・カーのドアが開き、
中の人物がガードマンに囲まれながら厳かに出てきた。
「貴方は・・・!」
ウィリーシスが驚くのも無理はなかった。
彼はハルルハッツ大統領、フライ=アルカスーロなのだから。
そして彼の言葉にさらに驚くことになる。
「初めまして、αー238。
突然のこんな来訪に驚かれたことだろう。
実は折り入って頼みたいことがある」
何だろうとαー238は首を傾げていた。
少し首がギシギシ鳴っていたが。
「単刀直入に言おう。
君に・・・マザーを破壊してもらいたい」
つづく