第一話「過ちの連鎖」
ここはハルルハッツの街のなかの一つ、「カリアード」
人間世界で言う「西洋風」のレンガ造りの家が立ち並ぶ、
コドモの頃の夏を思い出しそうになるような、とても静かな街。
この物語の主人公が住む街でもある。
「ふ・・・ぁぁぁ~あ、暇だ・・・暇すぎる」
このもの凄く暇そうな少年ナイツチャオがこの物語の主人公、
『ウィリーシス』だ。
この世界は犯罪も起きないし、
天変地異なども科学の力で治められている。
要するに、『事件が無い』ってことだ。
なので刺激が無く、好奇心旺盛なチャオには耐えられないような
暇な世界だ。
ウィリーシスの楽しみといえば、街に配備されているオモチャオと
話しをすることぐらいだ。
「αー238、調子はどう?」
「僕ノ調子ガ悪イコトナンテ、ナイチャオ!」
「あっそ・・・何かギシギシいってるけど?」
「コ、コレハ何デモナイチャオ!」
この『αー238』はウィリーシスの友達である。
よく故障するし、ドジだけど意地っ張りというオモチャオには
珍しい性格の持ち主だ。
ほとんどのオモチャオは任務を完璧に遂行するが、
αー238はたまにサボったりする。
まるで本物のチャオのように。
情報送信が仕事なのに、
この街が静かすぎて仕事がなく、拗ねているのかもしれない。
「オモチャオってさぁ・・・中央情報センターの
マザーコンピュータの指示で動いてるんだったよなぁ?」
「ソウチャオ。ダカラ調子ガ悪イコトナンテナイチャオ!」
「いや、それとこれとは関係ないだろ・・・」
「ウィリーシスハ何カスルコトナイチャオカ?」
「特に何も・・・
でもマザーの指示で動くんだったら誤差なんか生じずに
作業するはずだよなぁ・・・」
「まざーニハキッチリ動クヨウナ、
機械ミタイナぷろぐらむハナイチャオ。
まざーも人格ガアルチャオ」
マザーにも人格があるのだ。
なので強制的に仕事をさせるということもない。
だが・・・その人格を与えた結果は
好ましくないことになるのであった。
それは『精神崩壊』という結果だった。
マザーコンピュータに知能を持たせすぎた為、悩み始めたのだ。
自分の存在に。
「チャオの役に立っている」それもある。
だが自分に何の得があろう。そう考えた。
そして結果、『精神崩壊』までになってしまった。
センターの役員がマザーにマザーの存在のことを説明していた。
しかし逆効果だった。
皆が皆、違うことを言うので段々混乱してきていた。
そして遂に・・・人格プログラムが崩壊してしまった。
・・・今後、情報は闇に消えることとなる。
一切住民の耳には届かなくなる。
メディア会社も次々に倒産していった。
都市中心部はパニックに陥った。
その混乱の中デマが流れ、
何百匹ものチャオたちの尊い命が失われた。
決定的だったのは、マザーの配下のオモチャオたちの反乱だった。
もうお分かりだろう。
彼等は武器を持っている。
しかし人間の過ちを繰り返さないと決めたチャオたちは無防備だ。
武器も守るものも持ってはいない。
かくして・・・機械とチャオたちの戦いは始まった。