4話 ~増える謎~

次から次へと増える謎を前に二人は唖然とした。
そもそもなんで『山賊達』が巣くう山にあの『大柄なチャオ』が現れるのか。

設立されてまだ一ヶ月と少ししか立たないこのコロニーで一体何が起ころうとしているのか。
地球に住んでいたチャオ達が宇宙のコロニーへ移住してまだ時間はそんなに経たないというのに。
元々地球でのチャオ達は住んでいる数こそ多いが実際は住めるように開放された範囲が狭く、苦しい思いをしていた。
そんなチャオ達を救うために「セプトコロニー制作計画」がスタートしたのである。

一体これから何が起こるのか、今の二人には知るよしもなかった。
少なくとも、今は・・・

「ねぇ、ひょっとして僕達は大変な事に首をつっこんじゃったんじゃないの?」
「かも知れないな。」
「あの『人形』って何なんだろ?」
「チャオじゃないとすると・・・なんだろうな。」
「・・・」
「とりあえず今は任務に集中しよう。わからないのに立ちすくんでたら時間の無駄だ。」
「・・・だね」
「とりあえずさっきの山賊のところ・・・。あの辺に何かあるかもしれないな。行ってみるか」
「それしかなさそうだね」

二人はまたさっきの場所へと向かった。体が隠れるほど伸びた草で周りはほとんど見えないが、山の方へ向かえばいいのはわかる。
少しづつ道無き道を進んでいくと、道があった。どう見ても明らかに誰かが道を作った跡がある。

「この道・・・、怪しいな」
「誰が作ったのかなぁ、こんな道」
「とりあえず、山の方へ続いてる道を歩けばよさそうじゃないか?」
「でももしここが山賊達の通る道だったら・・・」
「なぁに、出てきたら片っ端から潰していけばいいんだ」
「暴力好きじゃないんだけどな・・・」

気の進まないウェルナーをリディアが無理矢理ひっぱるようにして山を登った。道はかなり長く、10分以上歩いてもまだ道が続いていた。
山に吹く風が気持ちいいが、二人とも気分は最悪だった。


・・・嫌な予感がしたから。


もうしばらく歩いていくと、突然リディアがわき道にある木の陰に隠れた。
「リディア、何して・・・」
「しっ!お前もこっちにこい!」

なぜリディアが隠れたのか。その理由はウェルナーにも勝手にわかった。
『大柄なチャオ』と同じ雰囲気をもつチャオが上から歩いてきたからだ。

「ちょっと、無関係者のふりをして奴らに近づいてみる」
「何をする気?」
「奴らと話をしてみる。情報を聞くまではできないだろうけど・・・」
「なら僕も・・・」
「お前は待っててくれ。」
「なんで?」
「もしもの時の連絡係が必要だろう?もし俺に何かあったら・・・後を頼む」
「・・・わかった。気をつけて」

ウェルナーは危険だと言いたかったが、リディアにも何か考えがあると思い、何も言わなかった。
リディアは護身用に渡された剣をもって、剣士のつもりで近づいた。

「ちょっとすいませ~ん」
「・・・」

『大柄なチャオ』と同じ雰囲気をもつチャオは何も言わなかった。
ここで、リディアは直感した。

(やっぱりな、あの時山賊が言ってた『喋るだけの技術をもった人形は今では絶対に創れない』と言ってた意味がわかったぜ・・・)

「ちょっと聞きたいんだが、いいかな」
「・・・」
「この辺に誰かいたら教えてくれ・・・うわっ」

次の瞬間、異様な雰囲気をもつチャオは何も言わずにいきなりパンチで攻撃してきた。
拳を振りかざし、無表情な顔は一つも動かさずに。
リディアは驚きながらもなんとかかわすと剣を構えて反撃に出た。
しかしリディアが振った剣は相手にことごとく止められ、そこへまた反撃のパンチが飛んでくる。

「・・・」
「くそっ!いきなり襲い掛かってくるなんてありかよ!」
「っ!リディア!・・・このやろーっ!」

隠れていたウェルナーが出てきて相手を斬りつけた。
相手は斬りつけられたというのに表情を変えず、また襲い掛かってくる。

「ひゃー!」

反撃されそうになったウェルナーが木の後ろへ逃げる。
しかし異様な雰囲気をもつチャオはそんなことはおかまいなしに木を殴りつけた。

すると、木がものすごい音を立てながら折れてウェルナーに覆い被さるように倒れてきた。

「うわわわ、なんだよ!木を折るほどの力があるなんて聞いてないよ!」

ウェルナーは慌ててまた逃げようとして、石につまづいて転んだ。
そこへとどめを刺しに相手が歩いてくる。

もう駄目だとウェルナーが思った時、そこへリディアが剣で相手を斬りつけ、とどめをさした。

「甘いな、後ろの気配に気づけよ」

リディアが吐き捨てるように言った。

異様な雰囲気をもつチャオは地面に倒れ、そのまま動かなかった。
しかし、リディアが近づこうとするととけてしまい、跡には水だけが残った。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第115号
ページ番号
5 / 10
この作品について
タイトル
~石の記憶~
作者
まさ
初回掲載
週刊チャオ第113号
最終掲載
週刊チャオ第117号
連載期間
約29日