第3話 ~偵察任務~ (続き)
草むらの道を進んでいくと、ふもとが見えてきた。同時に人影も少し見える。
「あれは・・・噂に聞いた山賊かな?」
「多分・・・ね。」
「でも今回の任務はあくまでも『実行部隊が速やかに侵入できる道を探してくる』ことだからね!」
「わかってるよ。どこかにいい道はないのかな・・・」
「それを探すのが任務なんだよ。」
「なぁ、山賊に見つからない程度に近づいてみないか?なにかいい情報が聞けるかも知れないぞ?」
「えぇ、山賊に?」
「・・・行くぞ。嫌とは言わせないからな。」
「嫌って言っても行くくせに・・・」
山賊にそろりそろりと近づいてみる。すると、山賊たちの会話が聞こえてきた。
「・・・ところで、『奴』はどこにいったんだ?」
「『奴』か? さぁな。あいつは気配もなく現れて気配もなく消える。『人形』とはよく言ったものだよ。」
「はっはっは。よく言ったものだな。さらにこの先、『奴』のような『人形』がたくさん創られればオレ達も犯罪をすることはないんだ。
なんたって、『人形』にさせればいいんだからな!」
「おいおい、あれはまだ研究中だぞ?『奴』は試験的に創られた人形だからあそこまで行動できるわけで、今の技術では『奴』のような人形は絶対に作れないぞ?」
「『奴』は素体の中ではいい体技を持っていたらしいからな。」
「だから改造された『人形』なんだろう?」
山賊たちが話しているところに、ウェルナーが見たあの時の大柄なチャオが現れた。
「あっ!あいつっ!あの時のチャオに間違いないよ!なんたって肩にあのマークがもごもご・・・」
ウェルナーは思わず叫んでしまった
「馬鹿野郎!そんなに騒いだら見つかるだろ!」
リディアがウェルナーをおさえつける。
「ごめん、でも思わず・・・」
「見つからなけりゃいいんだ。話を聴くのをを続けようぜ」
二人はまた山賊たちの話の盗み聞きをはじめた。
なにやらさっきの山賊と大柄なチャオが話している。
「・・・そこをどけ」
「えっ、あっ、これはこれはどうも・・・」
「挨拶はいい。どけと言っている。」
山賊たちがどくと、大柄のチャオは行ってしまった。
「・・・どうも奴からは変な気配を感じるな。流石は『人形』といったところか。」
「まぁ、奴は正確にはチャオじゃないんだから当然といえば当然か。」
そのとき、リディアが音を立ててしまった。
「おい、そこに誰かいるのか?」
「やべ、見つかった。逃げるぞ」
「え、ちょっと・・・」
先に逃げ出したリディアを追うようにウェルナーが続いて逃げる。どうやら見つかってしまったようだ。
「おい、向こうに誰かいるぞ!」
「なんだとっ!」
続々と山賊たちが集まってくる間に二人はなんとか逃げ切った。
「ウェルナーが声を出すからだっ!」
「リディアが音を立てるからだっ!」
「てことはどっちもどっちだな」
「・・・そういうことにしておくよ。」
「ところで、今の話だけどな・・・」
「あのときの大柄なチャオは『チャオとは別の生き物だ』って言ってたね。道理であの時変な気配がしたわけだ・・・」
「チャオではないってなると・・・なんだろうな。」
「『人工生命体』なのかなぁ。でも僕たちチャオも元々は人工生命体だし・・・」
「『素体』がどうのとか『もっと創られれば』とか言ってたから、もっと奴のようなのがいっぱいいるってことかな。」
「でもさ、そんな奴をいっぱい作って何をするつもりなんだろうな?」
「まだわからないけど・・・どうなんだろう。」
ふえた謎を前に、二人は呆然とした。