第二話「謎の男」

その夜、ウェルナーはなかなか眠れなかった。あの飛び掛る豹を見るとどこか悪い気分になる。それにあの気配・・・

ボク達「チャオ」とは違う。どこかが違う。雰囲気?態度?・・・
そうだ、気配だ・・・。あの気配はチャオのものとは・・・違う・・?
まさかあいつは、チャオのカタチをした全く別の・・・生き物・・なのか?・・・


次の日の朝、ウェルナーは目を覚ました。昨日のなんともいえない気持ち悪さがウェルナーを襲う。
ふと時計をみると、10時を過ぎていた。
「わっ、事務所に10時30分集合なのに!」
急げば間に合いそうだと思い、ウェルナーは簡単に用意を済ますと家を飛び出した。
途中、「豹」が頭に浮かんだが、それでも振り切って走った。

事務所に着いたのは10時40分ころだった。完全に遅刻である。
「よぅ、遅いぞお前」
待ちくたびれたと言わんばかりにリディアが言う。
すると、一人の人物が近寄ってきた。
「君がウェルナー君かね?」
「ええ、そうですが。」
「良かった。私はドルス。セプトコロニー隊に勤める少佐だ。君の事は聞いていたが、遅刻をしてしまったようだね。
これからは気をつけてくれ。」
「はい、すみません・・・」
「少佐、挨拶はその程度にして次の行動に移るべきです!」

コロニー隊士官が口を挟む。口調が慌てているので悠長な用事でないことは二人にもわかった。

「うむ、ではこれから作戦の説明をしよう。これから我々はトールマウンテン周辺に巣くう山賊の掃討をしたいと思う。
掃討部隊が速やかに進攻できるように道を探さねばならない。だから君たちに偵察をお願いしたいのだ。」
「偵察ですか。トールマウンテンというのは・・・」
「コロニーの西側にある山だよ」
コロニー全体の地図を見ながらリディアが言う。どうやら結構な大きさのようだ。

「という事で君たちに任務をお願いしたい」
「了解です。」
「あ、もしも敵に発見された場合の為に武器を持っていくといい。こちらで用意はしておいた。」
やたら準備がいい。
「作戦開始時刻は午後一時!それまで各自休息を取るように」
「はっ!」

コロニー隊士官がいなくなった後、二人は食堂に行って昼食を取っていた。
「ラーメン二つ」
リディアが注文をしている間、ウェルナーはテレビを見ていた。ニュースがやっている。
そこから流れてきた放送にウェルナーは驚いた。
「今日午前9時頃、コロニーシティで強盗事件がありました。目撃者の証言によると犯人は肩に豹のマークがついており・・・」
「・・・!これって・・・」
「なお、犯人は西の方に逃走したという目撃情報もあります。」
「西といえば・・・トールマウンテン・・・?」
「よう、ウェルナー。食えよ」
リディアがラーメンを持ってきた。二人とも食べ始める。
食べながらウェルナーはリディアにテレビで見た事を話し始めた。

「・・・ふむ。とするとトールマウンテンにヤツがいる可能性はあるかな。」
「どうする?」
「今ドルス少佐に言っても無駄だと思うよ。何せヤツと何かあったわけじゃないし・・・。今はただの強盗犯だ。」
「そうだね・・・」

そうこうしてるうちに行動命令が出た。
二人は不思議な気持ちを胸にトールマウンテンへ向かった。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第113号
ページ番号
2 / 10
この作品について
タイトル
~石の記憶~
作者
まさ
初回掲載
週刊チャオ第113号
最終掲載
週刊チャオ第117号
連載期間
約29日