【鳳凰委員会・京都異聞】

6月の京都、天気は雨。静かな雨。
昔ながらの町屋が並ぶとある静かな通りに、1人の制服を着た女子高生が迷い込んでいた。
彼女の名前は、大野木彩音[おおのぎ・あやね]。

【大野木】「はぁ…、すっかりはぐれちゃったなぁ…」

…そう、彼女、迷子なのである。


            【鳳凰委員会京都異聞】


そもそも、彼女は京都の人間ではない。修学旅行で京都に来ている学生のうちの1人。自宅は千葉。
5人程度の班に分かれて好きなように京都を回る、修学旅行お約束の「班別行動」の途中だったのだが、ものの見事に仲間とはぐれてしまったのだ。

【大野木】「みっちゃん、ゆっち、高幡、江西…みんなどこ行ったんだろう…」
と、班の仲間の名前をつぶやきながら歩く。さしている傘がいかにも寂しげだ。
平日の昼間、観光地でもない場所ということもあり、通りを歩く人はまばらで、とても静かである。


京都の街は、平安時代からの名残できれいな碁盤目のように通りがある。
東西南北に通じる通りの名前さえ覚えてしまえば、すぐに場所が分かるという利点がある反面、逆に通りの名前を把握していないと迷いやすい。
特に場所によっては町屋が並ぶ似たような風景が続くためなおさらである。

当然、今回が初めての京都である大野木に、通りの名前など覚えられるはずもない。
天才や京都好きならともかく、彼女はどこにでもいるごく普通の女子高生である。


さて、京都には、通りの名前を覚えるための「覚え歌」がある。
前述の通り、通りの名前をある程度覚えないと迷いやすいことから、子供や慣れない人でも覚えやすくするために歌となり、現在まで歌い継がれている。
バスガイドや事前学習等で一度は聞かされる修学旅行生も多い。が、やはり一度で覚えるのは無理な話。

但し、大野木は少し違った。
事前学習で何回か繰り返し聞いたため、少しだけ覚えていたのである。
彼女は何気なく、小声でぽつりとつぶやくように、覚えてる限りを歌いだした。
【大野木】「…まる・たけ・えびす・に・おし・おいけ、あね・さん・ろっかく・たこ・にしき、えっと…何だっけ…」

…最も、通りの名前を覚えたところで、今いる場所がどの通りか分からないことにはどうにもならないのであるが。


歌詞が途切れたところで、彼女はまた少し心細くなった。
そして、かばんについているチャオのキーホルダーを、少しだけぎゅっと握り締めた。


…その時、どこからともなく男性の声が聞こえた。
【男性】「し・あや・ぶっ・たか・まつ・まん・ごじょう、せった・ちゃら・ちゃら・うおのたな、ろくじょう・さんてつ・通り過ぎ、ひっちょう・越えれば・はっ・くじょう、じゅうじょう・とうじで・とどめさす…やな。
      最も、魚の棚以降は実際の通りの順序と微妙に違うさかい、異説がかなりあるんやけど…っておーい、姉ちゃーん!」
【大野木】「に、逃げないとーっ!」

突然見知らぬ男に続きを歌われて気味悪がらない人がいるだろうか。大野木は慌てて全力逃走。男性が止める間もなく、視界から消えてしまった。

【男性】「おいおい、そんなに気味悪がらんでも…って、ん?」
彼は、ある『落し物』に気がついた。―――チャオのキーホルダー。


約10分後。相も変わらず雨は静かに降り続き、人の姿も少ない。
そこに、傘をさした女子高生が、きょろきょろと辺りを見回しながらやってきた。大野木である。

【大野木】「うう…よりによってチャオのキーホルダー落とすなんて最悪…宝物なのに…」

ちなみに相変わらず迷子である。ここに戻ってこれたのがある意味奇跡的だ。
大野木はさっきの怪しい(?)男性のこともあり、慎重にキーホルダーを探していく。視線はほぼ地面。


…そして、先ほど男性に声をかけられた場所の周辺で、彼女は再び声をかけられた。今度は女性。
【女性】「ひょっとしてあなたが探しているのって…これですか?」
と、自らが右手に持っているものを見せる。

ビンゴ。彼女が探していた、チャオのキーホルダーである。
【大野木】「こ、これです!ありがとうございます!とっても大事なものなんで!」
【女性】「いえいえ、礼には及びません。」
大野木はそこで顔を上げて、ようやく女性の顔を見た。リムレス(縁なし)の角眼鏡をしていてロングヘアー。そして顔つきを見るに、恐らく自分と同年代。

…その女性は、そこでふとつぶやいた。
【女性】「それにしても、チャオのキーホルダーなんてありましたっけね…」
それは、独り言ではあるが、大野木にわざと聞こえるように。
【大野木】「!!?
      チャオを…知ってるんですか!?」
その大野木の反応は、女性の予想通りだった。2010年にもなって、もう何年も新作が出ていないゲームキャラなど、知っているだけで既に「ただの人」ではないのである。お互いに。

【女性】「その身なりから察するに…おおかた修学旅行で迷子にでもなったんでしょう。
     後で道案内しますから、どうです?少し休憩していきませんか?…もちろん、お代はいただきませんから。」
【大野木】「は、はい!」
大野木は二つ返事で彼女の提案に応えた。
最も、「チャオを知っている」というだけで、信用してついていってしまう大野木も大野木であるが…


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2人は、先ほど出会った通りから、細い路地に入った。昔ながらの街並みが残る京都ではこうした路地も非常に多い。
しばらく路地を歩き、到着したのは、並ぶ町屋のうちの1つ。
先導する眼鏡の女性がガラガラと、昔ながらな音を立てて中に入っていく。続くように入る大野木。

…そこで大野木は少し驚いた。
10人近くの男女が、わいわいと話しているのだ。
「ちょっとー、あたしのWiiリモコンどこやったのよー!」
「知るかよー!それより誰かモンハン手伝ってくれる人いねぇ?」
「っていうかよりによってここでモンハンやるなよ!せめてファンタシースターやれよ!」
「いいじゃんかよー、どうせそっちだってマリオやろうとしてるんだしさー…」
「おーい、ゲームやってないで誰かかわりの店番頼むー!」

そんな中、一番最初に大野木の視界に入ったのは、先ほど覚え歌の続きを歌っていた男性であった。
【男性】「おう、戻ったか。」
【女性】「ええ、連れてきましたよ。」

【大野木】「あ、あの…」
【女性】「ああ、この人ですか?変人ではありますけど、怪しい人ではないですから安心してください。」
言葉に詰まる大野木に対し、説明する女性。

【男性】「へ、変人って…」
そこに、別の女性が話題に入った。年齢は20代後半から30代前半だろうか、室内なのに大きな黒の帽子をしている。
【帽子の女性】「変人には違いないでしょうが。歌の続きを勝手に歌われたら誰だって逃げ出すに決まってるわよ。」
【男性】「うっ…」
返す言葉に詰まる。

男性は逃げるように、大野木に対して説明をはじめた。
【男性】「あぁ、わいらは別に危ない集団とちゃうで。わいは宝蔵寺明彦[ほうぞうじ・あきひこ]。」
【帽子の女性】「私は田名部文絵[たなべ・ふみえ]。よろしくね。」
【眼鏡の女性】「え、えっと、天ヶ瀬聡美[あまがせ・さとみ]です。よろしくお願いします!」
それにつられるように、大野木も慌てて自己紹介をした。


【宝蔵寺】「…で、単刀直入に聞く。大野木はん、チャオ、好きなんか?」
町屋の一室。雨ということもあり、昼でもやや暗い。
そんな部屋に宝蔵寺と田名部が並んで座り、机を挟んで向かい合うようにして大野木。机にはお茶が注がれた湯のみが3つ、そして灰皿。
先ほどの騒がしさはどこへやら、とても静かである。

【大野木】「え!?あ、は、はい!えっと、小学生の頃から大好きで、今でもソニアド2で遊んでるぐらいですし、それに、このキーホルダーも…」
【田名部】「ふふっ」
田名部がニコリと微笑む。何かマズいことでも言ってしまったかと、慌てて弁解する大野木。
【大野木】「あ、あの、すいません!私、チャオのことになると止まらなくなっちゃって、それで…マイナーなキャラだから、分かってくれる人もいなくて…」
【宝蔵寺】「いやいや、構わへんで。」
宝蔵寺はそう言いつつ、トントン、とタバコの灰を灰皿に落とした。

少しだけ間が空いた後、田名部が上着の右ポケットからあるものを出して、机に置きながらこう聞いた。
【田名部】「大野木さん、これは見たことあるかしら?」
カタン、と軽い音が響く。それは、鳳凰の羽をあしらったピンバッジ。
【大野木】「いいえ、見たことないです…新しいチャオグッズですか?」

【宝蔵寺】「…鳳凰チャオ躍進委員会京都支部。それが、ここの正式名称や。」
ようやく宝蔵寺が『その名』を口にした。
【田名部】「もっとも、表向きはそこでお土産屋さんやってるんだけどね~」

そしてそのまま、宝蔵寺と田名部が、委員会の説明を大野木にはじめた。話すこと数分。

【大野木】「そ、そんな委員会があったんですか!?」
【宝蔵寺】「ああ。大野木はん、修学旅行でこっちに来たそうやけど、住所はどこや?」
【大野木】「えっと、千葉です。」
【宝蔵寺】「千葉…なら本部の範疇か。ったく、かなり暴力的な手段使うとる割には節穴やなぁ…こんな子を見つけられへんなんて。」
と、誰に向けて言う訳でもなくつぶやいた。
【大野木】「へ?本部?暴力的?」
一瞬大野木の表情がやや固まる。
【宝蔵寺】「ああ、こっちの話や。気にせんといて。」

【田名部】「つまり、チャオが好きな人が集まってチャオを広める活動をしてる組織なのよ。
      どう?あなたも入ってみない?」
【大野木】「は、はい!」
大野木は二つ返事でうなずいた。


そこで、1人の少年が入ってきた。
【少年】「田名部さーん、卸業者から電話っすよー。土産の新商品の売り込みみたいっすー。」
【田名部】「はーい、りょうかーい」
少年と交代するように、田名部は立ち上がって部屋から出ていく。少年の方はといえば、そのまま部屋の隅に立ちっぱなしで、宝蔵寺に聞いてきた。
【少年】「…この子がキーホルダー落としたっていう例の子っすか?」
【宝蔵寺】「ああ。どうやら本当にチャオ好きみたいやし、今度ウチに入ることになると思う。」
そう言うと宝蔵寺は大野木の方を向きなおし、今度は少年について紹介する。
【宝蔵寺】「こいつは那賀川悠平[なかがわ・ゆうへい]。ほら、挨拶しときや。」
【那賀川】「よろしくっす。」
【大野木】「大野木彩音です、よろしくお願いします!」

【那賀川】「それにしてもおっさん、この子修学旅行で京都にきたんすよね?…自宅のある場所の支部か本部に入れるのが普通じゃないんすか?」
那賀川が単純な疑問を口にする。先ほど宝蔵寺がつぶやいたように千葉は本部の管轄なので、本来なら本部に入るべきなのだが、宝蔵寺は直接京都支部に誘っているのだ。
【宝蔵寺】「あぁ、それなら構わへん。」
すると、宝蔵寺は那賀川に対してこう耳打ちした。
【宝蔵寺】(…無限のジィさんにこんな逸材取られる訳にもいかへんしな)

【大野木】「でも、私千葉だし、どうやって活動すればいいのかとか…何せ新入りですし。」
大野木があらためて尋ねる。当然耳打ちの内容など聞こえるはずもないし、仮に聞こえても訳が分からないだろう。
【宝蔵寺】「あぁ、そういうのは今はネットあるし大丈夫やろ。
      とりあえず、しばらくは『研修生』として、委員会やチャオのことについて勉強してもらう。まずはそこからやね。」

そこに、電話を済ませた田名部が戻ってきた。
【田名部】「どう?話は進んだ?」
【宝蔵寺】「まぁな。今活動について説明してるところや。」

その後、いくつか説明や手続きを受けたあと、田名部がこう補足する。
【田名部】「もし高校を卒業した後の進路が決まってなかったら、京都にいらっしゃい。色々と面倒を見てあげるわ。
      親御さんの許しが必要かも知れないですし、よければ、で構いませんよ。活動そのものはどこでもできますしね。」
【大野木】「ありがとうございます!実は、まだ進路が決まってなくて悩んでたんです…」

【田名部】「それじゃ、最後にこれ。」
と、田名部が渡したのは、委員会のピンバッジ。
【宝蔵寺】「研修生用だからショボいけどな。正式に委員会のメンバーになれば、会員番号と名前が彫られたええもんがもらえるで。」
【大野木】「あ、ありがとうございます!」

これで大まかな手続きも全て終了。あとは、迷子になってる大野木を帰してあげるだけ。そこで、那賀川が根本的疑問を口にした。
【那賀川】「というか、ケータイあるのになんで迷子になるんすか?」
【大野木】「…あ。」

…この時代にすっかりケータイの存在を忘れるなど、ある意味相当やる子である。


かくして、無事に大野木も仲間を見つけて、修学旅行の続きを楽しんだとか。

…が、話はそこで終わらなかった。


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京都の夜は、静かである。
さすがに繁華街の周辺は12時ぐらいまでは賑やかではあるが、少しそこを外れると途端に静かになる。

そんなとある夜道に、3人の少女が現れた。そのうち1人は、大野木である。
昼間降っていた雨はすっかり上がり、雲さえ消えて晴れわたっていた。
【大野木】「や、やめようよ…バレたら怒られるどころじゃないよ…」
残りの2人は、大野木の友達。
大野木が迷子になった際につぶやいた名前、「みっちゃん」こと大倉と、「ゆっち」こと嶋原である。
【大倉】「へーきへーき!簡単に部屋から抜け出せるような構造の旅館が悪いんだって!」
【嶋原】「まー、さすがに旅館のせいにするのはどうかと思うけど…大丈夫でしょ。」

どうやら、旅館をこっそり抜け出してきたらしい。現在時刻、午後11時半。就寝時間は過ぎている。
今日は新月で、月明かりもなく暗い。嶋原が部屋から持ち出した懐中電灯片手に歩く。

【嶋原】「それにしても雰囲気あるわねー。さすが京都って感じ。」
【大倉】「ひょっとして…出ちゃったりして!」
【大野木】「や、やめてよみっちゃん…」
大倉が幽霊のポーズをして大野木をビビらせる。


…と、その時。

どこからともなく、女の子の声がした。

「まる・たけ・えびす・に・おし・おいけ…」

『!?』
背筋が凍りつく大倉と嶋原。

「あね・さん・ろっかく・たこ・にしき…」

その声は、通りの覚え歌を歌いながら、少しづつこちらへと近づいてくる。

【嶋原】「きゃあああああーっ!!」
【大倉】「出たーーーーーっ!!」
それを察した嶋原と大倉は、叫びながら慌てて逃げ出した。

「し・あや・ぶっ・たか・まつ・まん・ごじょう…」

…しかし、大野木は逃げなかった。
昼間の一件があったからかもしれない。あるいは、恐怖で逃げられなかっただけかもしれない。
とにかく、逃げなかった。

「せった・ちゃら・ちゃら・うおのたな…」

声はゆっくりと、近づいてくる。
大野木はその声が、自分の後方から聞こえてくることに気付き………振り向いた。

「ろくじょう・さんてつ・通り過ぎ…」

するとそこには、着物を着た5歳くらいの女の子が、ゆっくりこちらに向かって歩いてくる姿が。

そこで大野木は、思わず、こう続きを口ずさんだ。先ほど宝蔵寺が歌ったものだ。
【大野木】「ひっちょう・越えれば・はっ・くじょう…」


…その瞬間、女の子が豹変した。
それまで無表情で歌っていたのが、突然鋭い目つきに変わり、声にならない声をあげつつ、いきなり大野木の方へ向かい猛スピードで向かってきた。といっても走ってきた訳ではない。『浮いて』迫ってきたのだ。かなり無茶な例えなのを承知で書くと、リニアモーターカーの如く。
それに対し大野木は反応するどころか何の感情も持つ猶予すらなく、ただその場に立ち尽くしていた。

そして、いよいよ女の子が大野木まであとわずかというところまで迫った時―――


大野木の背後から、日本刀を持った男が飛び込んで、女の子を一刀の下に斬り伏せた。

女の子は、血が吹き出る訳でもなく、ただ斬られた部分からユラユラと姿を消していく。

「十条・東寺で・止め刺す…とな。」
そう日本刀を持った男はつぶやきつつ、日本刀を鞘にしまった。


そこで、ようやく大野木の反応が追いついた。しかし、何が起こったのかは把握できていない。
【大野木】「え?え!?えっ!!??」
リアルにハテナマークを連発しそうな勢いの大野木に、声をかけたのは、日本刀を持った男―――宝蔵寺だった。
【宝蔵寺】「…大野木はん、大丈夫か?」

そして、さらにその後ろから、田名部と天ヶ瀬が歩いて現れた。
【田名部】「あらあらあら、大野木さん…ポヨがハテナマークを連発してますよ~?」
と、田名部がチャオに例えてつつ笑う。

【大野木】「あれ、皆さん!い、今、何が…」
ここまできてやっと、大野木が目の前にいる人たちを宝蔵寺たちだと認識する。
ようやく大野木が落ち着いてきたところで、宝蔵寺たちが説明をはじめた。

【宝蔵寺】「まぁ、京都は歴史ある街やさかい、こーいうのもようあるんや…一般的には幽霊だとか妖怪だとかいうやっちゃな。」
【天ヶ瀬】「私たちはチャオ普及活動の他にも、副業みたいな感じでこういうこともやってるんです。」

そこで大野木は少し考えて、あることに気がついた。
【大野木】「え、じゃ、じゃあ、私も、こんなことやらなきゃいけないんですか!?」
そう、昼間にこの組織に自分から入ったばかりであることを思い出したのだ。

それについては田名部が補足する。
【田名部】「ああ、それは気にしなくていいわよ~。あくまでもメインはチャオの普及。こういうお仕事はこういうことができる人に任せればいいの。」
【宝蔵寺】「…まぁぶっちゃけ、多少の訓練は積んでもらうことになるけどな。詳しくはおいおい話すけど、まぁ色々あるんや。」
【大野木】「な、なるほど…」
分かったような、分からないような表情を見せながらも、とりあえず大野木は納得することにした。

【天ヶ瀬】「…さて、大野木さん、そろそろ戻らないとまずいのでは?」
【大野木】「あ!そ、そうだった!!」
大野木は今の騒ぎで忘れかけていたが、ただでさえ旅館から抜け出してきているのだ。バレないうちに戻らないといけない。
【天ヶ瀬】「私が旅館まで送りますので、2人は見回りの続きをお願いします。」
【宝蔵寺】「了解や。」
そう決めると、天ヶ瀬は大野木を連れて旅館の方へと戻っていき、宝蔵寺と田名部はそのまま歩いていった。


京都は再び、新月の静かな夜。
天ヶ瀬と一緒に歩きつつ、大野木はようやく自らが今日、人生の大きな岐路にあったことを理解していた。

【大野木】(鳳凰チャオ躍進委員会、か…)
しばらく下を向いていた大野木だが、何かを決めたようにふと星空を見上げた。
その表情はどこか悲しく、しかしながらどこか明るくもあった。

≪終わり≫

このページについて
作者
ホップスター
掲載日
2010年1月16日
ページ番号
6 / 17
この作品について
タイトル
鳳凰チャオ躍進委員会
初回掲載
2010年1月10日
最終掲載
2010年3月16日
連載期間
約2ヵ月7日