15 -Despair-
「でも!」
他方から声がしました。それは、クレープです。
「そんなの邪道でしょ!チャオとして本当にうまいなんて、キバさんは言うけど、
進化暴走体になったとして、それのどこがチャオよ!
結局チャオじゃないやつが作ったラーメンじゃない!今と同じじゃない!
チャオにとっては、人間に与えられたラーメンと、進化暴走体から与えられたラーメンでしょ!
そんなことじゃ、絶対ダメなんだから!!」
エミーチャオは、ここまで熱弁をふるうクレープを初めて見ました。
それと同時に、クレープを応援したい気持ちが、あふれ出てきました。
「そうちゃお!」
エミーチャオは叫びます。
「もしお前がなんとしてでも進化暴走体になりたいというのなら、
あたしは何度だって、相殺して、普通のチャオに戻してやるちゃお!
もしお前がそれでもあきらめないなら、あたしはもう二度と!お前のラーメン食べてやらないちゃお!
二度と店に足運ばないちゃお!お前は一生チャオの偽物として、ラーメンの偽物作り続けるちゃお!
クレープの言うこと訊いたちゃお!?もっとちゃんと考えて!周りのことも考えて!
確かにお前は!それで自分の望みを叶えられて満足かもしれないちゃお!道を究めるのは大事なことちゃお!
でも!もっと大事な、基本的なことがあるちゃお!幼稚園でも習うちゃお!
クレープを泣かせたら、あたしは絶対に許さないんだから!!
そんな所を無視して目標に向かっていたって、何の意味にもならないちゃお!」
ギャラクシーも応戦します。
「俺の飼い主、ご主人は、浦川さんという人だ。彼のよく言う言葉に、こんなものがある。
『もしも、未来がゆがんだら、生まれるはずだった笑顔も、消えてなくなるだろう』と。
キバさんには、もっと未来に目を向けて欲しい。いま、進化暴走体になる道を選んでしまったら、
キバさんはきっと、エミーチャオの言うように、永遠に孤独な暴走体だ。
チャンスだけは、捨てないで欲しい。孤独になったら、たくさんで出来たはずのことも、出来なくなってしまう!」
今までまっすぐだったキバさんの目に、ちょっとした揺らぎが見えました。
が、それもほんの一瞬でした。
「そんな屁理屈は通用せん。これでうまいラーメンが出来る、それだけだ」
そう吐き捨てると、UFOを見上げます。
「でも!あたしは絶対、そんなラーメンなんて、掃いて捨てるもんね!」
エミーチャオが叫んだときでした。
紫の閃光が走りました。
突然の展開に、誰もが状況を理解することが出来ませんでした。
UFOのビームが、今まさに光ったのです。
受けたのは、キバさん。
「そんな!」
キバさんの頭部が、みるみる変形し、
腕部もどんどんふくらんでいきます。
思えば、一瞬の出来事でした。
そして、あっけなく消える、紫の光。
エミーチャオの目の前で生まれた、新たな進化暴走体。
そしてGUNも当然、この次第を見ていたのです。
谷間から出てきていたガンホークが、突然向きを変え始め
瞬く間に、エミーチャオとキバさん、いや、進化暴走体は、GUNのガンホークに取り囲まれました。
エミーチャオは、思わず後ずさりします。
キバさんには、動じる様子が見られません。
そのとき、ギャラクシーから声が飛んできます。
「エミーチャオ!奴らのねらいはキバさんのみのはず!動いても大丈夫!」
「な、なるほどちゃお!」
エミーチャオは、ガンホークに向かってタックルを仕掛けます。
当然のごとく、ぽよんと跳ね返るエミーチャオ。
ですが、これだけでは終わりません。
空中に浮いたガンホークは、そのまま地を滑るように移動し、隣のガンホークと激突!
大破します。
そしてエミーチャオ、そこから出てきた赤のカオスドライブをキャプチャ!
きゅぴーん!!
大きくなった腕を振り回し、次々にガンホークを打ち壊していきます。
とりあえず、辺りを取り囲んでいたガンホークを一掃し、キバさんに向き直りました。
「もう、これがお前の望んだ姿ちゃお!」
「エミーチャオ!上!」
「えっ」
見上げると上からは、戦闘機ブルーイーグルによる爆撃が!
エミーチャオはキバさんに向かってダッシュ!キバさんを脇に抱えて、横方向に転がります。
傍らに落下していく爆撃。「くそっ、明らかにあたしたち狙いちゃお!」
悔しがるエミーチャオに、ギャラクシーからの指示が飛びます。
「エミーチャオ!とりあえず、キバさんのタイプを確かめないと!」
「ああ、そうちゃおね・・・えーっと」