14 -His Mission-

レッドマウンテンは、火山活動が活発な山岳、渓谷地帯です。
地理上はミスティックルーイン地方に属し、先ほどの氷山からも、そう遠くはありません。

何らかの浸食によって生まれたのか、多彩な断崖の連なる地形が特徴です。
UFOの周りには、あの黒い進化暴走体と戦ったとき以上のGUNヘリコプター、戦闘機が飛び交っており、
無数のサーチライトを、夜空に光らせます。


エミーチャオらは、山肌に突き出た平らな地面の上で、ひとまず足を休めました。
そして、空に浮かぶ真っ黒いUFOを見上げます。
「それにしても、GUNの連中がうるさいちゃおねえ」
すぐそばの谷間からは、ホークシリーズのロボットが、続々と編隊を組んで飛び出してきます。
上空のヘリコプターからは、ロープがおろされており、GUNの兵士がぶら下がっている所を見ると、
UFOに接近を試みているようです。

「俺たちはどうする?」
エミーチャオに問うギャラクシー。
「うーん」
エミーチャオは腕組みをします。

「GUNの動向を見てからでも、いいと思うちゃお。
 無理につっこんで、GUNのじゃまをしちゃったら、市街でのあれの、二の舞ちゃお」
うなずくギャラクシー。
「GUNも今度は直接的な戦法に出ているみたいだし、ひとまず見守ろうか」
そう言って2匹は、上のUFOと、それに近づくヘリコプターを、もう一度見上げました。

ロープの兵士は、しきりにUFOに手を伸ばしています。
しかし、一向に、その手がUFOを捕らえる様子はありません。


そのときふと、エミーチャオは、向こうの岩陰に、何か影を見たような気がしました。
あわてて目をこするエミーチャオ。
しかし、そのときには既に、影は見えなくなってしまっています。
首をかしげながらも、エミーチャオは視点を空に戻そうとした、そのとき!
「止めてー!!!」

斜め下方向から、聞き覚えのある叫び声が聞こえました。
「クレープちゃお!?」
驚くエミーチャオ。
一方で、さっき見たあの岩陰から、もう1匹のチャオが飛び出してきました。
「・・・キバさん!?」

突然の2匹の登場に、ギャラクシーも、目を丸くします。
「キバさん・・・止めて!!」
クレープは、レッドマウンテンの坂道を、必死に上ってきます。
走り疲れてあえぎながらも、走るのを止めません。

クレープの言葉を受けて、エミーチャオは、キバさんの方に視線を移します。
キバさんの真一文字に結んだ口。まっすぐな眼光。

エミーチャオは、キバさんに向かって呼びかけます。
「なにがあったちゃおか!?」
が、キバさんは、クレープやエミーチャオの言葉には耳もくれず、
ただ近くの崖をよじ登って、より高い足場へ向かい始めています。

クレープがふらふらになりながらも、坂道を上って何とかエミーチャオらの所までやってきます。
その体を支えるギャラクシー。ギャラクシーが聞きます。
「何があったんだ?」
「進化暴走体に、なるなんて言って、キバさんが・・・」
クレープはあえぎあえぎ、やっとの思いでそれだけを口にしました。
そして、ぐったりとギャラクシーに向かって倒れ込みます。

聞くやいなや、エミーチャオは、キバさんに向かって駆け出します。
キバさんは崖を登り切り、見晴らしのよい高場に立たんとしていました。
UFOの真下にあたる、高場です。

エミーチャオもそれに続いて登り切り、キバさんの肩を掴んで押し倒します。
そして倒れるキバさんに向かって、言葉を投げかけます。
「どういうことちゃお!!!」

キバさんは砂を払って立ち上がると、エミーチャオを見つめました。
「ラーメンのために、不可欠なんだ」
それを聞いて、動きが止まるエミーチャオ。

「いまのラーメンは、あくまで人間が開発したものの二番煎じだ。
 それを、私は変えるのが、ここ数年の目標だった。
 チャオとして、チャオにとっても本当にうまいラーメンがないと、それはラーメン屋とは呼べん。
 チャオの主食である、木の実の類をうまく使って、ラーメンを作る、そのためには、
 進化暴走体並みの有り余るチカラが必要だと言うことが、最近の経験で分かってきた。
 だから必要だ!どうしても!よりよいラーメン屋を目指すのが、俺の使命だと思っている!!」

キバさんの迫力に、エミーチャオはうろたえます。
「で、でもっ、進化暴走体になっちゃったら、意識を失っちゃうちゃおよ!
 ラーメンのこと、忘れちゃうかもしれないちゃおよ!」
そのエミーチャオのセリフを、キバさんは、
「潜在意識は、進化暴走体の行動に影響を及ぼすということを見つけたのは、君だった。
 ラーメンに対する情熱なら、私は、誰にも負けないつもりでいる!」

切り捨てました。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第269号
ページ番号
15 / 19
この作品について
タイトル
矛と盾の間で
作者
チャピル
初回掲載
週刊チャオ第269号