13 -Respective Ways-

戻ってみれば、進化暴走体は池から脱し、舞台を空中に移して、テイルスチャオと戦いを続けています。
飛びっぱなしでランチャーを担いでいたテイルスチャオには、疲労の色も見え隠れします。

「小動物、持ってきたちゃお!」
エミーチャオの声にうなずきながらも、進化暴走体の動きに目を離せない、テイルスチャオとギャラクシー。
進化暴走体も、エミーチャオの復帰に気付いたのか、エミーチャオとテイルスチャオの間を横切るように飛んできます。

テイルスチャオに接近できないエミーチャオ。歯を食いしばりながらも、テイルスチャオに指示を出します。
「あたしがやつを引きつけるちゃお!」
「わかった!」

エミーチャオは、進化暴走体に向かって、一直線に飛んでいきます。
進化暴走体の目の前を横切り、やつの視線を引きつけます。

「いまだ!」
「よーし!」
進化暴走体の意識がエミーチャオに移った所で、テイルスチャオはランチャーの引き金を引きました。

同時に、エミーチャオは、進化暴走体の下をくぐるように旋回します。
進化暴走体が下を向いたとき、後頭部に直撃する弾丸。
落下しかけた進化暴走体の下を、エミーチャオは危なげなくくぐりきり、テイルスチャオに無い親指を突き出します。

しかし、ここまでやられて、進化暴走体が黙っているわけがありません。
エミーチャオらの意図に気付いたようです。崩れた体制を立て直し、エミーチャオに向かってきました。
進化暴走体の手が、エミーチャオを握ります。人質にしようという策のようです。
エミーチャオは、もがきますが、進化暴走体にがっちりと押さえられ、何も出来ません。
これでは、テイルスチャオも手を下すことが出来ません。

そこに、ギャラクシーが飛び出しました。
「エミーチャオ!小動物を!」
エミーチャオ、言われるがままに小動物を取り出すと、それを目の前の進化暴走体の手にすりつけました。
光の粒がほとばしり、動揺する進化暴走体。その体がわずかに縮みます。
隙を見せた進化暴走体に、ランチャーを打ち込むテイルスチャオ!
弾丸は、正確に進化暴走体の顎を捉えました!

進化暴走体は、思わずエミーチャオを手から放します。
すかさず、エミーチャオが進化暴走体の上側に回り、小動物をぶちまけます。
「これで、終わりちゃおっ!」

しかし、進化暴走体は、素早く体勢を立て直していました。
小動物を、軽くよけます。
無惨にも、雪山の上に散らばって消える小動物達。

「うそ・・・」
絶句するテイルスチャオに、エミーチャオが叫びます。
「早くもっと撃つちゃお!」
言われるがままに、テイルスチャオは弾を放ちます。
進化暴走体はそれを易々と回避。が、その行く手に回っていたのが、エミーチャオでした。

エミーチャオの蹴りが、進化暴走体の頭へと入ります。
失速した進化暴走体、その首を押さえ、そのまま真下へと落下します。
目指すは、元来た池。


巨大な水柱を上げて、真っ逆さまに池に落ちる2匹。
エミーチャオは、水中で進化暴走体を前にし、手を振り上げます。
その手にあるのは、小動物オウム。

「まだ持ってたのかよ!!」
ギャラクシーのツッコミに、にやりと笑うエミーチャオ。
「海が出来るまで、キャプチャしていいちゃお!」
そして進化暴走体を前にして、持ってきた小動物全てをぶちまけます。

光の粒は、今度こそ思い切り飛び散りました。



辺りはもう、かなり暗くなってしまいました。
元のミズチャオに戻った進化暴走体を、傍らに置き、ギャラクシーが口を開きます。
「で、どうする?このあと」

「ボクはこれから、ちょっと試してみたいことがあるんだけど・・・」
そう答えたのは、テイルスチャオです。
「この元進化暴走体、ボクが引き取ってもいいのかなぁ?」

うなずくギャラクシー。
「少なくとも俺たちはいらないもんな」
「うん」
エミーチャオも、同意します。


そのとき不意に、何か耳に触る音が、エミーチャオらの耳に届きました。
音のした方向を見上げると、それは、GUNの戦闘機。
轟音を立てて空を横切ります。

眉をひそめるギャラクシー。
「GUNって、ひょっとして、UFOが向こうにいるってことなのか・・・?」
「え、向こうって、レッドマウンテン?」
エミーチャオが、有名な渓谷、山岳地帯の名を、口にします。
「そうだよ、きっと」
テイルスチャオも、うなずきます。

「GUNが出てこないのを不審に思ってたけど、UFOの方を追いかけていたんだ。どおりで。」
「なるべく早く、黒幕には、決着をつけさせてもらわないとな」
ギャラクシーが、拳を固めます。
「そうそう、いつまでもキャプチャのたびに変身していたんじゃ、かなり不便ちゃお」

レッドマウンテン方面を見やる、テイルスチャオ。
「念のため、GUNに感づかれないように、変身は解いていくべきだね」
エミーチャオも、うなずきます。

「わかったちゃお。じゃあ、これでいったん、おわかれちゃおね」
「うん、また」

テイルスチャオは元進化暴走体をひきずって、雪の斜面を下っていきました。
それを見送ると、ギャラクシーとエミーチャオは、レッドマウンテンへの道を歩み始めます。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第269号
ページ番号
14 / 19
この作品について
タイトル
矛と盾の間で
作者
チャピル
初回掲載
週刊チャオ第269号