12 -Big Bigger Biggest-
進化暴走体は、また別の横穴に潜り込み、先へ先へと進んでいきます。
そして、また別の池に到着します。頭上に表面に張った氷が現れた所で、水かきを止めました。
追いつくエミーチャオ。水中ですが、そのままのスピードで体当たりをかまします。
エミーチャオの攻撃を受けて、進化暴走体は、バランスを崩しました。
エミーチャオはそのままUターンし、進化暴走体に再び体当たりを仕掛けます。
しかし、進化暴走体も、同じ手を喰うことはありませんでした。
軽くよける拍子に、エミーチャオの足を掴み、そして、池の底へと引きずり込みます。
進化暴走体は、湖の底にエミーチャオを押しつけて、蹴りを入ようとします。
が、そこで進化暴走体と同じ手を使うエミーチャオ。
足を掴んで、逆に暴走体を池の底へと、ともえ投げの要領で打ち付けます。
進化暴走体は、狂った体勢を素早く立て直すと、湖の表層の氷に向かって、また泳ぎ始めました。
あわててそれを追いかけるエミーチャオ。
しかし、進化暴走体の動き初めが一歩先です。
表面の氷を割って、氷上へと飛び出します。
エミーチャオも続けて氷上へと飛び出します。
が、エミーチャオがそこで見たものは、想像の範疇を超えていました。
そこにいたのはなんと、氷の地面を覆う、膨大な数のペンギン。
進化暴走体は、それらを片っ端からキャプチャしていきます。
飛び散る光の粒。
進化暴走がこれで加速したのでしょうか。
進化暴走体の体は、どんどん異形へと変形しています。
体の大きさ自体も、何倍にもふくらんできています。
2メートルは超えたでしょうか。元が40センチだったのに。
「エミーチャオー!」
エミーチャオの頭上から、ギャラクシーの声がしました。
「助太刀にきたよ!」
と、見れば一緒に飛んでいるのは、テイルスチャオ。
「さすがテイルスチャオ!いざというときに、くるじゃないかちゃおか」
ニッと笑うエミーチャオ。
ギャラクシーの声も聞こえます。
「エミーチャオ!!キャプチャするなよ!キャプチャしすぎると、やつのように、意識を失いかねない!」
「エミーチャオ!離れて!」
「了解!」
エミーチャオはバックステップで、その池から遠ざかります。
もはや、それは、チャオとは思いたくないほどのものへと成長していました。
自分より圧倒的に大きいそやつの姿を見上げて、エミーチャオは一抹の不安を感じます。
テイルスチャオは、背後から巨大なランチャーを取り出しました。
そして狙いを定めると、どこに指があるのか分からない手で、引き金を引きます。
爆音を上げて発射された弾丸の軌道が敵の頭部に鈍い音を当てて屈折し、
バランスを崩した進化暴走体は、後ろ足で氷を割り、水没します。
ランチャーを肩にかけて叫ぶ、テイルスチャオ。
「ボクがこれで時間を稼ぐから、エミーチャオはウィンディバレーへいって!ヒコウの小動物を集めて!」
エミーチャオは、テイルスチャオに投げつけられたオウムを受け取って、ヒコウタイプに変身!
そして大きくなった翼を広げて、飛び立ちます。
「じゃあ、よろしくたのむちゃお!」
ウィンディバレーはそう遠くありません。
今のエミーチャオにしてみればわずかな距離でした。
ただ、巨大な進化暴走体のために、膨大な数の小動物を集めるのには、かなり時間を食ってしまいました。
雪の降っていた山中では分からなかったのですが、
戻る途中のミスティックルーインでは、既に夕日が地平線に没しようとしています。
エミーチャオはあせりつつも、テイルスチャオらの元へと、羽の動きを急ぎます。
そのとき、エミーチャオは、眼下に見覚えのあるチャオの姿を見かけました。
「あれは・・・キバさん?」