05 -The Truth That Was Told-
「さて、これが、僕が会ってもらいたい人、浦川さんの家だ」
運転手と別れた2匹は、ようやく目的地へと到着しました。
それは、大きな洋館でした。
玄関口についたチャイムを押すと、
「どうぞ」
と声がして、中から出てきたのは、30代ぐらいの男性。
浦川さんに言われるがままに、エミーチャオとギャラクシーは、その洋館に足を踏み入れます。
入ってすぐの居間のソファを勧められ、そこに座る2匹。
浦川さんはその向かいのソファに座ると、口を開きました。
「まずは自己紹介といこうか。ギャラクシー、そちらのエミーチャオの名前は、なんなんだ?」
答えるギャラクシー。
「小説のナレーションから推測するに、名前ないんじゃないの?」
「そうか」
このやりとりに、エミーチャオは、ちょっと拍子抜けしました。
だからこそ、次の浦川さん言葉の意味が、すぐには理解できなかったのかもしれません。
「申し訳ないが、今、エミーチャオとギャラクシーが出会ってから、2日間が経過している。
いや、もう0時を回ったので3日になるか。要するに、ちょっとタイムスリップしている」
「へ?」
ぽかんと口を開けるエミーチャオ。
ギャラクシーが新聞を取り出してエミーチャオに渡します。
そこに載っているのは、まぎれもなく、エミーチャオが覚えている日付の2日後です。
「え?え?どういう意味ちゃお?あたし、2日も気絶してたってことちゃお?」
指を組む浦川さん。
「実は、今ギャラクシーが手にしているのが、タイムマシンだ」
言われてエミーチャオは、ギャラクシーの手の中をのぞき込みました。
そこにあるのは小さなチップと大きな宝石が一つ。カオスエメラルド。
浦川さんが、話を続けます。
「実は我々は、ちょっと厄介な立場にあるんだ。そして、それが全ての原因のチップ、タイムマシン。
疑うかもしれないが、タイムマシンは事実なんだ。私自身、そのチップを10年前に使った。
わずか3日間の時間旅行で、未来という感覚はほとんどないかも知れないが、そういうものだと理解して欲しい」
「え、ということは、オマエら未来人ちゃお!?なんの目的があって、あたしを誘拐したちゃお!?」
興奮するエミーチャオを、手で制す浦川さん。
「ちょっと待って欲しい。順を追って説明するから」
「『タイムパラドックス』という言葉を、知っているだろうか?
私が10年前、時間旅行をしたおかげで、この言葉と私は、切っても切り離せない関係になった。
私は、未来から過去へ旅をしたんだ。だから、未来の世界を知っている。
そして、その未来が正しく迎えられるように、努力しないといけない」
「・・・でも、それとあたしに何か関係があるちゃお?」
「UFO襲来は、私にとって、過去の記憶として確かに残っている。
そして、そのUFOを退散に導いたのは、GUNだった。そう記憶している。
でも、これでは不都合が生じると、最近になって気付いた」
ギャラクシーに渡された新聞の一面は、破壊活動を行う、進化暴走体。
「UFOを退散に導いたのは、おそらくGUNではなく、ここのギャラクシーとエミーチャオ。つまり君だ。
我々は複数の情報源から、そう判断した。私の過去の記憶と、完全につじつまを合わせる手段がそれなんだ。
それに、エミーチャオは、特殊なチャオ。UFOに十分対抗できる力を持っているかもしれない」
エミーチャオは腕を組みます。
「でも、それとあたしのタイムスリップに、何か関係が?」
ギャラクシーが代わってそれに答えます。
「チャオガーデンに行って、エミーチャオがどうしているか聞いたんだけど、2日前にラーメン屋に出かけたきりだそうだ。
偶然だが、俺も2日前に、ラーメン屋でエミーチャオの姿を見ているんだ」
「・・・2日前っていうと、あたしが小野進化暴走体に襲われて・・・そのあとで確かに、ラーメン屋へ行っているちゃお・・・」
エミーチャオは思い出しました。あのときクレープが自分を差し置いて注文を取りに行った客、
そういえばこんな奴だったかもしれないと。
「とすると考えることは一つだ。2日前に行ってエミーチャオを連れてくる。
そしてUFOを退治してもらう。これで、全てのつじつまが合う」
「なるほどちゃお・・・」
と、納得しかけたエミーチャオでしたが、また首をひねります。
「でも、どうしてあたしじゃなきゃだめちゃお?ほかにもエミーチャオはいたと思うちゃお
そいつらがUFOをやっつけたとは、考えないちゃおか?」
「あー、それはちょっと違って、だが・・・またにしてもらえないだろうか」
ことばを濁す浦川さん。
そう言い終えると、浦川さんは立ち上がった。
「今日の所は、この辺りでどうだろう。夜更かしは体に悪い。」
見ると時刻は、既に午前一時にかかりかけています。
「でも、あたしはまだ眠くないちゃおけど」
エミーチャオが不満を漏らします。
うなずくギャラクシー。
「俺が昼間から連れてきたんだから、当然だろ」
「寝室は2階だから、この部屋は自由に使ってもらって構わない」
浦川さんとギャラクシーは、それだけ言うと、2階へと上がっていってしまいました。
彼らを見送って、エミーチャオは何も出来ずに、ソファーに突っ伏すのでした。
今無理にでも寝ておかないと、明日がきつそうです。