04 -This Noted Place-

ラーメン屋を出た2匹は、かの有名なる、シティエスケープの下り坂へと向かいます。
「彼の家は、あの坂を下ってしばらくいった先にある」
ギャラクシーは、そう説明しました。

が、そのとき、街が不気味な静けさに包まれていたことに、2匹は気付いていたのでしょうか。
どこからか、ガラスの割れる音がしました!
2匹が音のした方向を見ると、そこには黒い光沢を放つ、1匹のチャオが。
そのポヨの色は、真っ黒です。

「進化暴走体だ!」
「け、今朝見たやつちゃお!」
エミーチャオが、悲鳴を上げます。
「早く逃げないと!」
Uターンして、後ろにダッシュするギャラクシー。
その様子を見て、エミーチャオは思いました。
「ハシリ、遅っ!」

あわててギャラクシーを追いかけるエミーチャオ。
しかし、相手の方がまだ何倍も早いのです。猛烈な勢いで突っ走ってきます。
「あぶないちゃおっ」
エミーチャオは、のろのろ走るギャラクシーの手を引き、すぐそばにあった公衆ポストの陰に隠れます。
がつんっ。鈍い音がして、めしゃめしゃと萎れるポスト。

進化暴走体は、その衝撃で上にはじき飛ばされましたが、すぐに空中で体勢を立て直して、
今度は、真下のエミーチャオらに向かって急降下!
エミーチャオはギャラクシーの手を引いたまま、横に転がります。
しかし急降下の風圧で、大きく吹っ飛ばされる2匹。
いっきに名物の急な下り坂まで到達してしまいました。

「あれま」
驚いた様子のエミーチャオ。
「いやあ、手間が省けたちゃおねぇ」
「そんなのんきな!ほらまた来たぞ!」

2匹は、攻撃をよけやすいようにと、車道の真ん中へと飛び出します。
幸いにも、今は夜。路上駐車は多くても、交通量は、少ないのです。

地上を切るように飛び来る進化暴走体を避け、
ちょうどいいタイミング出来たバスの手すりを掴む2匹。そのままバスに飛び乗ります。
坂を下っていくバス、がらがらの車内で、驚いたようすの運転手。

「ふう、一段落ちゃお」
エミーチャオはひとまず深呼吸。
しかし、そうはいきませんでした。
「あれをみろ!」
ギャラクシーが坂の上を指さして叫びます。
見れば坂の上からは、路上駐車されていた車が、雪崩のように滑り降りてくるではありませんか!

「くそっ、進化暴走体め。むちゃくちゃやりやがる」
エミーチャオは運転手の元へと駆け寄ると、前方を手で指します。
「急げちゃお!!」
「は、はい!」
運転手は若干しどろもどろになりながらも、ギアをトップにチェンジ!
アクセルをめいっぱい踏み込み、メーターを振り切らんばかりに、坂を駆け下りていきます。

エミーチャオは、ギャラクシーと同じくバスの後を見上げました。
車の雪崩は、ほかの車も巻き込んで、どんどん大きくなっていきます。
相手は自由落下、どんどんスピードが上がるります。徐々に、雪崩が背後に迫ってきました。

「このままじゃ巻き込まれちゃうちゃおー!」
「ど、どうするっての!」
「オマエが何とかしろちゃお!全てオマエが悪いちゃお!」
「いや、ねらわれているのはそっちだろ!」
「そんなことないもん。だからオマエが盾になってくれればいいちゃおけど・・・頼りない盾ちゃおねえ」
「そんな言い方ないだろー」
「さっきだって、ダークハシリのくせに、ハシリめっちゃ遅かったし・・・」
もはやパニック状態です。

「運転手さん、何とかしてちゃおー」
エミーチャオに泣きつかれた運転手、目を伏せて、なにやらにやりと、意味深な笑みを返します。
「ある時は片目のバス運転手、またある時は週刊チャオ表紙発行代理人、しかしその正体は・・・」
「ちゃお?」
「いっつぁ しょうたいむ!」

運転手はそう叫ぶと、巧みなハンドル操作で、バスを片輪走行へと持ち込みます。
そしてその浮いた片輪を、まだ路上に残っていた車の上に載せ、そのまま車の上にバスを持ち上げます。
車をめしゃめしゃとつぶしながら走るバス。
目の前のキャンピングカーを踏み台にして、小ジャンプ!次の車を踏んだ反動で中ジャンプ!
そして次ので大ジャンプ!地上五メートルぐらいの高さで、バスが浮かび上がります。
そして運転手は、エミーチャオとギャラクシーを見やります。
「バスの出口から飛べ!」
「運転手さんは、いいちゃおか?」
運転手は、エミーチャオの言葉を聞いて、うなずきます。

その様子を見た、ギャラクシー。
「いいわけねえだろ」
一言つぶやくと、運転手をシートから引きはなし。運転手の手をしっかりと握ります。
そして、飛び出しました。バスの出口から。
あわてて追う、エミーチャオ。羽を広げて飛び出します。

その下を、車の雪崩は、猛スピードで崩れ抜けていきました。
あとに残ったのは、何もない坂道のみ。
それを見て、宙に浮かぶエミーチャオは、ためていた溜息をはき出しました。
「ふう、危機一髪だったちゃおねぇ」
そしてギャラクシーをにらみます。
「特にギャラクシー!オマエヒコウのスキルもないのに、無茶するんじゃないちゃお!」
「でも、運転手さんのこと、見過ごすわけにはいかなかっただろ?」
そう返すギャラクシーと、エミーチャオの腕の間にぶら下がって、運転手は一人、笑顔を見せるのでした。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第269号
ページ番号
5 / 19
この作品について
タイトル
矛と盾の間で
作者
チャピル
初回掲載
週刊チャオ第269号