第4話 勇者の剣を抜け
ソニクサは説明した。
必ず、かの暴虐な異世界転移の経緯を伝えねばならぬと決意した。
ソニクサにはチャオワールドがわからぬ。
ソニクサはそっくりさんハリネズミである。
ソニックのものまねをして平和に暮らしてきた。
けれども保身に関しては人一倍に敏感であった。
王という地位の者の同情を得られれば今後の生活は安泰であろうと、そうソニクサは思ったのだ。
ソニクサは説明した。
「かくかくの~~しかじかぁっ!!」
「異世界でハリネズミだったのがこちらの世界に来たらチャオになっていただと? そんな話、にわかには信じられんな。まあ信じてやらんこともないが」
「どっちだよ」
「少なくとも言えることは、チャオを飼う霊長類という生物はこの世界にいないことだな」
「わっつ?」
「このチャオワールドはチャオこそが霊長類である。ゆえに貴殿の望みに近い形と言えば、奴隷や使用人ということになろう。そのような生き方を望むのであれば、良き者を紹介するが、しかし我々にも気になることがあるのだ」
王チャオは鋭い目でソニクサを見た。
面妖な話をするソニックチャオに内在するものを見抜こうとしていた。
「この世界には遥か高い空より落ちてくる勇者の伝説というのもある。そして今この世は混迷を極めておる。ならば伝説の勇者の再来は信じたくなるものであろう?」
「ひゅー! 俺がソニックみたいに勇者ってわけ? じょーくが過ぎるぜ!」
「だがそれを確かめる必要がある。勇者の剣をここに!!」
王が呼びかけると一人の兵士チャオが仰々しい鞘に納められた剣を運んできた。
剣がソニクサに差し出される。
「それは選ばれし者のみが抜くことのできる勇者の剣。ソニクサよ、試してみよ」
「ははっ、まさか俺が選ばれし勇者なんてこと」
ソニクサが剣を持ってみると、そのまますっぽり鞘が抜けた。
「すっげえ楽に抜けた!?」
「だが剣が抜けただけで勇者とは判断できん。次の物を持ってこい!!」
次の兵士チャオがソニクサに物を差し出す。
「こちらは選ばれし者にしか抜けない勇者のジェンガです」
「はぁー、どこのブロックを抜いても崩れそうな状態で持ってきやがって……。これのどこが勇者の……抜けたああっ!!」
「選ばれし者にしか抜けない勇者の根菜です」
すぽーん
「選ばれし者にしか抜けない勇者の毛髪」
りすぽーん
「選ばれし者にしか抜けない勇者の食事」
すっぽーん
「選ばれし者にしか抜けない勇者のスクープ」
すぽぽぽぽっ
「選ばれし者にしか抜けない勇者の三遊間」
すぽー
「選ばれし者にしか抜けない勇者のレジの中のお金」
すっ……
「選ばれし者にしか抜けない勇者の服のシミ」
すすすっ
「勇者じゃ! この者は間違いなく勇者じゃあああああ!!」
王チャオがそう叫び、ソニクサは兵士たちの歓声が浴びた。
その夜は勇者の到来を祝う宴会が開かれるのであった……。
つづく!!
ついに勇者と認められたソニクサ!
これからどのような冒険が待ち受けているのか!?
次回を期待してください!!
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