プロローグ 始まりの静けさ
平和という理想 プロローグ 始まりの静けさ
数百年前、その星に住む生命はある組織に支配された。
最初は、暮らしの急変に苦しむ者が多数いた。しかし、数百年経った今では、そんなことはなかった。
組織の決めたことに従い、平和に過ごす者。
組織に反発し、戦う者。
組織に協力し、戦う者。
そして、組織の決めたことなど興味もなく、ただ強さを追い求める者。
どの生き方が正しいということは誰にも分かるはずもなく、ただ自分の決めた通りに生きていく。
数多くの反発者。全ての町や村の城で待ちかまえる大勢の賛成者。
両者一歩も引かない戦いは、最高潮を迎えようとしていた…
「長さは…木の直径と同じか」
「いや。3mm長くしておいたぞ」
「わからねぇよ。そんな差」
ナイツチャオが錆びた剣を持って木を睨みながら言う。彼の師匠、のダークカオスは、煙草を吸いながら言う。
「いいか?木は、切れていない部分があったり、倒れたりしたら減点。また、何cmずれたかも見る」
「この剣だと、かなり厳しいな」
「それを承知で試験しているんだ。まずは、木の目の前で立って切れ」
ナイツチャオは頷くと、剣を横に振る。木は見事に切れたのだが、倒れない。
「ふむ。切れてない部分はないな。だが、1cmずれた」
「うはぁー。せいぜい1mmだと思ったんだけどなー…」
ナイツチャオがくやしそうに言う。だが、木が倒れない時点でかなり凄いとも言えるだろう。
「次は、基本中の基本、紫電(シデン)で切れ」
紫電とは、「紫電流」の基本となる斬り方である。目標に走りながら丁度良いところで斬る。というものである。ついでに説明しておけば紫電流とは、星を支配した組織の初代ボスが使った「無想流」の亜流である。大きな違いは、無想流はあまり動かないのに対し、紫電流は地上、空中関係なく動き回ることである。
「ここらへんで、いいか」
と、数十cm離れ、呟く。そこから思い切り走り、木を斬る。
「ほぉ。0.8mmか」
「で、結果は?」
「ん~?決めるの面倒だな。まぁ、合格でいいや。もう来なくてよし」
と、曖昧に言う師匠。そのため、ナイツチャオはなんだか複雑な気分になる。
「さて、この剣でも使って戦え。死ぬんじゃねぇぞ」
と、剣を投げ渡し、師匠は去っていく。ナイツチャオの複雑な気分は新しい剣をもらえた喜びに変わった。彼は、踊るようにして町へ帰っていく。
「ただいまー」
と、ナイツチャオが友人の家のドアを合い鍵で開ける。彼は、飼い主の反対を押し切って修行をすることにし、家出したので帰るわけにはいかないのである。
「よぉ。どうだったんだ?」
と、赤いニュートラルチカラタイプのチャオが玄関に入ってすぐ言う。
「おう。合格。もう来なくてもいいとさ」
と、簡単にナイツチャオは説明する。
「おぉぉ!?やったじゃねぇーか!」
と、ナイツチャオの肩を思い切り叩く。ナイツチャオはあまりの痛さによろめいた。
このままの平和な生活を捨てて、これから二人は戦闘の場に乱入していく…