2話 抜けない剣
平和という理想 2話 抜けない剣
「さて、ここがこの町の城のようだが、シンギ、訊いていいか?」
いかにもRPGゲームに出てきそうな形の城。何故、今の時代にそんな建物があるのだろうか。それは、支配する側として色々と好都合だからだ。例えば、複数の部屋での戦闘と次の階へ行くための階段で、体力を消耗させることができる。さらに、城から出てくる時にも、増援が入り口で待ち伏せすることも可能だからだ。
「お前は、さっき倒れる時どんな状態だった?」
シマの質問。それは、何が原因で倒れるかを把握しておかないと、戦闘中にまた倒れる可能性が高いからである。
「えっと、何か、声が聞こえて…そう、自分の斬ったチャオの呪いの声…?」
「ふむ。死にたくなかったのだろうな。おい、こいつは霊とか見えるやつか?」
と、今度はムホウに訊く。ムホウは無言で頷く。
「わかった。じゃあ、行くぞ」
シマが槍を構える。そして、城のドアを突き破った。ドアを開けると、すぐに広い部屋になっており、ろうそくや肖像画などが壁にあり、まるで自分達がRPGゲームの登場キャラになったかのように感じさせていた。
「でやぁぁぁ!」
「動揺もせず、襲ってきたか。だが!」
シマは槍を振り回し、ダークチャオ達を振り払う。その隙にムホウも斧を取り出す。
「シンギ!剣は握れるか!?」
「………」
シンギは震えながら首を振る。
「うぁぁ!?さっきより多い数相手にこっちはさっきより少ない二人で!?」
「安心しろ。そのくらい、ドアを突き破る前から大体わかっていたさ」
と、シマが緑色のカオスドライブを取り出す。緑のカオスドライブは小動物より効果は薄いが、走りの能力だけを上げることができる物である。
「なんでそんな物をっ!!キャプチャーしても効果は薄いだろっ!?」
「お前は時間稼ぎをしていろ!」
と、シマは緑色のカオスドライブをキャプチャーし始める。だが、キャプチャーはすぐには終わらなかった。
「だぁ~!!あ~!!くそぉぉぉぉ!!」
ムホウががむしゃらに斧を振り回す。しばらくして、カオスドライブはキャプチャーされた。
「キャプチャーには、二つの種類がある。一つは、基本キャプチャーだ」
そう言い、シマは走り出す。その速さはさきほどと比べ物にならないほど速くなっていた。
「もう一つは効果は一時的だが、効果は大きい、一時キャプチャーだ」
シマが走りながら敵を槍で倒していく。瞬く間に、全てのダークチャオはマユに包まれ、消えていった。
「さて、どんどん行くぞ?」
シマとムホウは、シンギを守りつつ、最上階まで上がっていった。最上階は、さきほどの部屋とは違い、狭めで奥には大きな台座まである。待ちかまえていたのはシャドウチャオと二人のダークチャオで、全員槍を持っていた。
「フム。お前らは、あの斧と鎧を狙ってろ。俺は奥のやつを狙う」
シャドウチャオがそう言うと、ダークチャオ二人はムホウとシマに激しい攻撃をして防御しかできないようにする。そして、シャドウチャオがシンギを狙う。
「グッ!!」
「ムホウ!?」
ムホウは、シンギの盾となり、シャドウチャオとダークチャオの槍に刺された。しかし、槍を抜かれてもムホウは立っていた。
「いい、か?お前、は、敵が傷つかなければ、たとえ、仲間が、やられ、ても、いい、の、か?」
「………!!」
「敵を、斬るのを、ためらう、の、は、仲間、を、守れるように、してからに、しやがれ」
ムホウが言い終えた瞬間、ムホウはマユに包まれずに消滅した。おそらく、言い終わるまで必死に堪えていたのだろう。
「フライアタック」
シンギは剣を両手で握り、天井まで飛んだ。そして、急降下しながらシャドウチャオを切り裂いた。それは、まるで雷のようだった。シャドウチャオは、何が起こったのかもわからないまま消滅した。そして、同時にシマも二人のダークチャオを倒したようだった。
「いいか?チャオの消滅にはマユ内消滅と、即消滅がある。お前は、即消滅をさせることができる数少ないチャオだ。その力で、これから増えていく仲間を助けろ」
友人の死に泣き崩れるシンギにシマが言った。二人は無言でその城から出て行った。