5話
起きたら、既に九時を回っていた。
まだ、訓練は始まっていないのかと気にしつつ、GUNの制服を着る。
俺が昨日着ていた物は随分とぼろぼろになってしまったが、幸い部屋にはあらかじめ一着用意されていたので俺はそっちを着た。
そういえば、食事はどうすればよいのかよく知らなかったな。まあ、支部と同じように食堂とかがどこかにあるだろう。
そんなことを考えながらドアを開けたら、彼女の姿がすぐ目に入った。
「あ…」
やっと来た、とでも言いたげな表情を彼女はする。ということは、遅かったのか。
「えーっと、やっぱり遅かった…?」
「訓練七時からだから完全に遅刻かな」
「…ゴメンナサイ」
素直に謝る。と、彼女はにやけながら
「じゃあ、そのお詫びとして…」と言ってくる。
「お、お詫び…?」
「一緒に訓練をサボること!」彼女は笑顔で言った。「チャオガーデンでチャオと遊ぼ!」
チャオガーデンに行くと、昨日と同じように彼女は大人気だった。
自分の所にチャオが寄ってきてくれないのは少し寂しかったが、楽しそうに遊んでいる様子を見るだけでも十分ここに来た価値はありそうだった。
昨日植えた種達は昨日見た時と大して変わっていない。ゲームじゃないのだから当然ではあるが。
植えなかった種達が植えられる日は来るのであろうか。
「よくこういうことをするのか?」
「こういうことって?」
「訓練サボってここに来る」
「うん、たまに」彼女は続けて「ばれると怒られちゃうけどね」と苦笑いする。
「じゃあ、普通に訓練出た方がいいんじゃ…」
「んー。でも、この子達といる方が楽しいし」
と、彼女はチャオをなでながら言う。
「それに」彼女は俺を見て「今日サボったのは誰かさんが遅刻しちゃったからだもんねー」と言ってきた。
「すみません…」
遅れたのはこっちなので反論できず、そんな返事しか俺はできなかった。
「よしよしー」
しかし、これはこれでよかったんじゃないか。彼女が楽しそうにチャオと遊んでいる様子を見ていたらそう思えてきた。
いや、でもまあ極力出るべきだよな、訓練。
というより、初日から出ないのはちょっと問題あるんじゃないか?俺。
「ん」
チャオが高いところからジャンプし、こちらに向かって飛んでくる。
そのチャオの羽は他のチャオとは比べ物にならないほど大きな羽であった。
チャオは俺の周りを一回回った後に俺の目の前に着地した。
俺はそのチャオをなでる。チャオの目はとろんとしてきて、気持ちよさそうにしている。
改めてこう見ているとチャオってかわいいな。
そう思いながらなでていると、やがてチャオは頭の上の球体をハート型にするのであった。
「さて、そろそろご飯を食べに行こうかー」
十一時頃、彼女は言ってきた。
「まだ早くないか?」
と俺は聞くが、彼女はううんと首を横に振る。
「訓練終わってすぐご飯食べに来る人と遭遇するとまずいから、それより先に食べるという作戦なの」
「ああ、なるほど」
そんなことまで考えているとは。相当サボり慣れているようだ。
俺は一応持ってきていた地図で食堂の位置を確認する。
食堂もまたチャオガーデンと同じように兵士の部屋があるエリアの近くであった。
違う点と言えばチャオガーデンと反対の方向であることだろうか。