3話
声がする。女性の声だ。
俺は目を覚ます。そして、今まで寝ていたことに気付く。たぶん、いや、確実に疲れていたのだろう。
さっきまで生死の境にいたから、自分が気付かなかっただけで身も心も悲鳴をあげていたに違いない。
「おはようございます」
さっき目が覚めた時に聞いた声が聞こえる。その声の主はさっき治療をしてくれたあの子だった。
ぼやけている視界も段々とはっきりしてくる。
そこは見たこともない場所だった。だけれども、天井があったから建物の中だということはわかった。
そこは特にこれといったデザインは無く、灰色で殺風景であった。
ここと似ているどころか全く同じデザインの場所を俺は知っていた。
「もう本部ですよー」
やはり、そうだったか。と俺は一人で納得する。
俺のいた支部もまた、ここと同じように灰色で殺風景であった。
荷物を片手にトラックを降りる彼女の後を、俺はついていく。
GUNの本部は、何故か懐かしかった。支部から離れてまだ一日すら経過していないのに。
それから俺が自分の部屋に着くまでにかかった時間は約1時間。
GUN本部は嫌になるほど広い。設備も良し、一人一人に部屋が与えられるのも良し、武器も良し、機械の量も良し。その分広い。
支部でも広いと感じていたもんだから、俺にとってここは広いを超えていた。
全ての場所を見て回ろうとしたらそれだけで一日使ってしまいそうだ。もしかしたら、まだ行ったことのない所があるという人も少なくないのかもしれない。
そして、そのとっても広いGUN本部の説明はというと、
「覚えてないうちはこの地図を見ればたぶん大丈夫…かな」
そう言ってさっきの子は俺に地図を手渡した。それだけで説明終了。とっても短かった。
当の彼女は用事があると言ってどっか言ってしまったので一人ぼっちで見知らぬ場所を歩くはめになってしまったのだ。
さっきの子がそう言いながら地図をくれただけでもましだったと思うべきなのだろうか。
問題はそれからだった。なんと現在地がわからなかったのだ。
普通は駐車場を探せばすむ話だ。だがここはGUN本部。駐車場が様々な場所にあるのだ。
何故一ヶ所に統一しないのかと文句を言いたくなる。
まず、歩き回って現在地を把握することから初め、そこからどうすれば部屋に着くのかを地図を見ながら考える。
そこから、道に迷わないようにどこにいるかをしつこく何度も地図を見て確かめつつ、少しずつ歩いていく。
こうやって思い出していくだけでも嫌になってくる。
そこらへんをうろつく人達の視線も痛かった。見ていないで俺に道を教えてくれればいいのにとも思ったが、それをする勇気がある人にめぐり合うことはできなかった。
途中で道を引き返したりだとかしていたから、余計人目が気になった。
大丈夫。変な人だと思われたとしても次会う時には忘れられているに違いない。そう自分に言い聞かせる。
さて、何をしようか。そういえば訓練とかいつあるのかとか何も知らないな。
ふとした衝撃で左肩が痛む。さっきまでここまでくることに必死で見事なまでに忘れていたようだ。
まずは医療室か。治療とかは好きではない。というより、好きな人はいたとしても少数だろう。俺はその少数の中の一人ではない。
傷は比較的浅いと言っても、結構出血した。トラックの中で治療されるまでに結構時間はあったし、その治療も簡単な物であった。面倒なことになっていなければいいけれど。
完治するまでずっと忘れていたままでよかったのにな。
俺は軽く溜息をついて、地図を手に取った。