2話
どのくらい時間が経っただろうか。たぶん1時間も経っていないだろう。
俺はなんとか生きていた。戦闘から逃げ、隠れていたからだ。
あの後しばらくして見つけた、隠れるのに適した場所。
それは人間が隠れるスペースがありながらも、既に崩れていて敵もこれ以上攻撃しそうにない家だった。
俺はずっとそこに隠れて、この戦いが終わるのを待っていた。
やがてロボットの大群の気配もやつの気配も消え、街が静かになった。
俺はその崩れた家の中から出る。
そして、さっきの場所に戻る。そこにあるのは動かなくなった仲間達。
まだ、誰か生きているだろうか。誰も立っていない。呻き声も聞こえない。
戦闘は数秒で終わった。
前方にいた仲間達が何の抵抗もできずに殺されていった。その様子を見た時点でそうなることはわかっていた。
時間がゆっくり流れていくように思えた。まるで、死ぬ覚悟をさせるためのように。
みんな順々にその番は来て、みんな同じように倒れていく。
それから免れることはできないようだった。それを防ぐことも、そこから逃げ切ることも。
それなら、こんなゆっくりじゃなくて、もっと早く殺してくれ。早く、楽にしてくれ。
そして、俺の前に赤い物体が飛びこんでくる。ああ、死ぬ――
「!?」
俺と、そいつの間に誰かが割り込んできた。その誰かの体は引き裂かれ、赤い物体は別の標的の方へ行く。
俺は立っていた。どんどん倒れていく人間の中、何故か俺だけが立っていた。
どうして、俺は立っている?俺は、死んでいないのか?
俺の服は赤く染まっていく。しかし、その赤の中で俺の血が占める割合は、ほんのわずかだった。
対して変わってない。ほんの少しだけあった平和な時間から。
変わったことと言えば、もう動かない仲間の数が増えたくらいだった。
ロボットの影がこちらへ来るのが見えた。おそらくまだ破壊していない建物を徹底的に破壊するつもりなのだろう。
少しの人数で戦っても意味はないか。そう思って辺りを見回すと、立っているのは俺一人だけだった。
俺はため息をつく。
そうか。これじゃあ戦ってもどうにもならないな。
銃の中にはまだ弾が入っていた。本当はまだ戦える。きっとGUNの人間として戦うべきなのだろう。
勝てないのにたった一人で戦って意味があるのか?ふと疑問が頭に過ぎる。
そんな意味の無いことで死にたくはなかった。
だから、そんな言い訳をして俺は戦いから逃げることにした。
それから俺は家、中でも、既に破壊されていて奴らが狙うはずのない物、そこへ隠れていた。
この判断が正しい判断であってほしい。ずっとそんな事を考えていた。
そして今、その判断が正しかったと、身体が動くことで感じながら、俺は俺を庇った誰かを捜している。
自分のいた位置を思い出して、その少し前にいる人間を捜す。
自分の周りに何があったかは少しだけ覚えていたけれど、それらは破壊され原型をとどめていなかった。そのせいで自分がどこにいたかということすら確認するのに時間がかかった。
自分の足に何か当たる。何が当たったのか見ると、そこには見慣れたやつの顔があった。俺と同じ時期にGUNに入った友人だった。
まだ生きているかどうか確認するために、腰を下ろす。だが、俺はすぐに立ち上がる。
彼の身体は上半身しかなかった。たぶん、もう既に死んでいる。
例え死んでいなかったとしても、こんなやられ方じゃ時間の問題だろう。そう思わせるかのように彼の倒れていた場所は彼の血で染まっていた。
そして、やっとのことで俺を庇った人間らしき物を見つける。俺はそれの体の方を先に見つけた。首から上は少し離れた所まで飛んでいた。
俺はヘルメットを取って顔を見る。それは、見た事のある、いやそれどころかさっき見たばかりの顔だった。
「ま、故郷の地に帰れるなら本望だ」
彼の言葉が浮かぶ。
これで本望だったのかよ。問い掛けても、彼は話さない。
もう話すことはない。そうわかってても、俺は何故か彼に問い掛けていた。