第6話 チャチャチャ

 週末になるとチャオガーデンや瑠加の家で遊んでいたが、一ヶ月もするとデートという感じがしなくなってきた。
 特にチャオガーデンなんて、付き合う前から頻繁に来ていたから、特別な感じがしない。
 私たちは遠出をすることにした。
 初めは二人きりで出かけるつもりだったのだが、せっかくならチャオも連れていってあげようという話になった。
 隣の県にある、チャオや小さな子供のためのアスレチックをたくさん用意したテーマパークに、私たちは行くことにした。
 この日も朝早くに瑠加の家に行った。
 開園する時間には向こうに着いていたかったのだ。
 駅まで、瑠加のお父さんとお母さんが送ってくれる。
「行ってらっしゃい。チャオが転生するには幸福感が重要と言われているからね。もっとここにいたい、と思う気持ちで転生するって、ロマンチックなことを言う人もいる。だからって言うわけじゃないけれど、チャオに楽しい経験をたくさんさせてあげることには、凄くいい意味があるんだ」
「そうじゃないでしょう」
 助手席に座っている瑠加のお母さんが呆れて言った。
「転生とかチャオとかどうでもいいから、楽しんでね」と瑠加のお母さんは私に言う。
「頑張ります」
 私は笑顔で答え、車から降りる。
 普通列車に乗って、さらにバスで三十分くらい移動すると、そのテーマパークに着いた。
 チャチャチャアスレチックパーク、という名前のテーマパークだ。
 チャオ、チャイルド、チャレンジ、でチャチャチャという名前になったらしい。
 チャオと小学生くらいの子供をターゲットにしたアスレチックではあるが、チャオや小さな子と一緒に来た客にも遊ばせたいらしく、中学生以上を対象としたルートも作られていた。
 チャレンジコースと名付けられたそのコースのスタートは、通常のスタートの真横にあって、ゴールは通常のコースと同じだ。
 たとえば縦や横の移動が激しくなるように作ってあって、基本的には通常のコースの周りを縫うように進んでいくようになっているようだった。
「なんか面白そうだな」
 瑠加はチャレンジコースに興味を持って、連れてきた三匹のチャオよりも興奮している様子だった。
 最初のアスレチックは、木の吊り橋をイメージしたアスレチックだった。
 通常のコースは揺れる橋を進んでいくというもの。
 そしてチャレンジコースは、遊具のうんていみたいな、木のはしごを曲げたり組み合わせたりして作ったようなコースだった。
「競争するか」
「じゃあ私は普通のコースで」
「そっちはチャオ用だから。お前もこっち」
 瑠加はナガレ君とトウマを通常のコースのスタートに立たせて、二匹がスタートするのを見てからチャレンジコースに入る。
 普通のはしごのように上に行き、そこからうんていの上に乗っているような感じで進んでいく。
 私も同じようにチャコをスタートさせてから、チャレンジコースに入った。
 こんな運動は小学生以来だ。
 三年程やっていないだけで、大変に感じる。
 老化したか、と思うのだが前を見ると瑠加はすいすいと進んでいっている。
 下の通常コースをゆっくり進んでいるチャオたちとも圧倒的な差を付けて、瑠加はゴールした。
 一方で最初のコースで大変な思いをしている私。
 今日は凄く疲れるぞ、と思った。
 一通り園内のアスレチックを遊んで、私たちはテーマパークを出た。
 帰り道、疲れ切っているのはチャオたちだった。
 瑠加はあの調子で、全部のアスレチックを面白がりながらクリアしていった。
 私は疲れたら、低めになっている所から外に出たり、はなから挑戦しなかったりしていたおかげで、まだ体力に余裕があった。
 だけどチャオたちは瑠加のテンションに引っ張られて全力で挑んでいたから、相当疲れたのだと思う。
 泥のように眠っているチャオたちは、ぬいぐるみのように見えるほど身動きを取らない。
「ああいうのもたまには面白いな」
 瑠加はチャオを起こさないように小さな声で、だけどテーマパークにいた時と同じように、凄く楽しそうな顔をして言った。
 この中で一番転生しそうなのは瑠加だと私は思った。
 二番目は、一応私だろう。
 チャオたちのためになったかわからないけれど、でも私は楽しかった。

このページについて
掲載日
2016年12月16日
ページ番号
6 / 7
この作品について
タイトル
ハートの実
作者
スマッシュ
初回掲載
2016年11月20日
最終掲載
2016年12月16日
連載期間
約27日