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さて、半漁人がまず向かったのは、ヒーローガーデンでもなく、ダークガーデンでもない。いわゆる中間のガーデン、チャオガーデンです。
人探し、もといチャオ探しで重要なのは、情報収集です。自分の足で歩いて、自分で情報を集める、半漁人は、ちょっとした探偵気分に浸りながら、チャオガーデンのみんなに話を聞いて回りました。
「ゲッゲッ、ゲゲッ、ゲッゲッゲ」
「チャオ~?チャオ、チャオ~」
傍で聞いているとこんな感じの会話(恐らく)が、しばらくチャオガーデンのあちこちで続きました。
全員に聞き終えて、半漁人はチャオガーデンを出ました。
出たところで、半漁人は、
「ゲェ~……」
と、呻くように鳴きながら、肩を落としました。収穫は、無かったようです。
しかし、気を落としてはいられません。
次は、ダークガーデンへ行こう。
そう決めた半漁人は、ずんずんと、ロビーの階段を下りていきました、
…
半漁人が、ダークガーデンに消えていった時でした。
ロビー中央のワープ装置から、誰かが出てきました。
「お~寒ぃ…」
店長でした。
店長は、両手の袋に何やらいろいろ詰め込んで帰ってきました。
そのままのそりのそりと、幼稚園へ、正確には自らが経営するお店、闇の取引所へ向かいました。
「……ん?」
掃除ロッカーの辿りついた店長は、怪訝な表情を浮かべました。
店番をしているはずの半漁人はそこにはいなく、緑色のチャオの卵の殻が転がっています。いったい、どうしたことでしょう。
「なんだこりゃ。…アイツ、どこ行った?」
『アイツ』は今、いなくなったチャオ探しに奔走していますよ。
といった具合に教えてくれる人は、もちろんいません。
店長は珍しく、ポヨをはてなマークにするのでした。
…
さて、半漁人は今、ダークガーデンにいます。
チャオガーデンの時と同じように、その場にいるチャオ全員に聞き込み開始です。
あっちでゲッゲッ、こっちでゲッゲッ。
半漁人は、精力的に動き回りました。
「ゲッ、ゲゲゲッ、ゲッ」
「チャオ、チャオチャオ、チャオ~」
「ゲッ、ゲーッゲッゲッ、ゲッ?」
「チャオ~、チャオチャオ、チャオ~」
「ゲッゲッ、ゲゲッ!」
おや、さっきまでよりちょっと長いです。
半漁人は話を終えると、ダークガーデンを出て行き、階段を駆け上がってヒーローガーデンへ向かいました。
どうやら今話したチャオが、緑のチャオはヒーローガーデンへ行ったと教えてくれたようです。
半漁人は、全速力でヒーローガーデンへ向かいます。
ヒーローガーデンには、静寂な時間が流れていました。
ヒーローガーデンのチャオ達は今、幼稚園でお稽古の真っ最中です。ヒーローガーデンには現在、誰もいません。
いませんでしたが、いました。
小さな影が二つ。一つは、息を切らせて走ってきた半漁人。そして、もう一つは――。
「ゲゲッ!」
「チャオ~」
もう一つは――そうです。半漁人が探し回った、緑のチャオです。
緑のチャオを見つけて、安堵の胸をなでおろそうかとしましたが、そうもしていられない状況だというコトに気づきました。
今、緑のチャオは、高台の上にいます。
細長い、両側に柵も何も無い台の上を、ハイハイでふらふら動き回っています。
万が一、落ちてしまったら大変です。
「ゲッ!」
半漁人は、高台へ走っていきました。
階段を駆け上がり、高台の上に登ります。
「ゲゲッ!」
半漁人は驚きました。
緑のチャオは、細長い足場の、先のほうへ行ってしまっています。
半漁人は、その高さに一瞬目がくらみましたが、意を決し、ゆっくり緑のチャオへ近づいていきます。
緑のチャオは、後ろから半漁人が近づいているコトも知らずに、ぼーっと空を見ています。
緑のチャオに、そろり、そろりと、半漁人は近づいていきます。
そして、あと少しで手が届くという――その時でした。
ずるっ
緑のチャオがその場を動こうとして、足場を踏み外してしまいました。
「ゲッ!」
半漁人はすかさず飛びついて、緑のチャオの両手を、自分の両手で掴みます。その瞬間、
きゅぴ~ん
半漁人は、また緑のチャオにキャプチャーされてしまいました。半漁人はまた、力が全部抜け出ていく感じに襲われました。しかし……
「ゲ、ゲ、ゲ、ゲ、ゲェ~……!」
半漁人は、その手を離しませんでした。
半漁人の上半身は完全に足場の外にはみ出して、下半身だけで自分と、緑のチャオを支えます。
「ゲェ~……ゲ、ゲ、ゲ…」
半漁人は苦しそうです。
何とか上に引き上げようとしますが、力が入りません。ぶら下がっているチャオも、苦しそうです。
もうダメだ……半漁人が諦めかけた、その時――