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「じゃあな、店番頼んだぞ」
「ゲゲッ」
チャオブリーダーご用達、闇の取引所。
幼稚園内の掃除ロッカーに陣を構えるそのお店は、グラサン店長と半漁人が経営しています。
ではこれから、半漁人がお店のお留守番中に起きた、ちょっとした出来事をお話しましょう。
~半漁人のとある一日~
グラサン店長は、コレから商品の仕入れに出かけます。その間、店を守るのは、
「ゲゲッ」
ちろちろと、頭上に青白い炎を灯す、半漁人です。
「ゲゲッ」
店長が出かけて数十分、お客は一人も現れません。
半漁人はその間、「ゲッ、ゲッ」と鳴きながら、体を左右に振ったり、突然電池が切れたように止まったり、かと思ったらまた動き出したりしました。
ころりん
「ゲッ?」
後ろから、何かが転がってきたのに半漁人は気づきました。
それは、ずいぶん前に入荷した、緑色のチャオの卵でした。
「ゲッ」
半漁人は、転がってきた緑の卵をもとあった場所に戻そうと、手を伸ばしました。
しかし、その手は途中で止まってしまいました。
卵に、ヒビが入ったからです。
ぱりぱり、ぱかん
「…チャオ?」
「ゲッ!」
ひょこっと、チャオは生まれてきてしまいました。
卵と同じ色、深い緑色をしたチャオです。
「ゲッゲッ、ゲッ」
さて、どうしましょう。
半漁人は、右に左に体を振ります。そして考えます。
生まれたばかりのチャオは、狭いロッカーの中を、不思議そうに見渡します。
「ゲー…ゲッゲッ」
とりあえず、園長先生に知らせよう。
そう考えた半漁人は、緑のチャオを連れて、ロッカーを出ようとします。その動きを止めたのは、
ぐぅ~
緑のチャオの、おなかの音でした。
「チャオ~…」
おなかを押さえて、ポヨをぐるぐるにしています。おなかが減っているのでしょう。
「…ゲッ」
半漁人はロッカーの奥のほうで、何かをガサゴソと探し始めました。
そして振り向いたとき、手に持っていたのは、
「ゲッ」
一つの木の実でした。
その木の実を、緑のチャオに差し出します、
「チャオ~?」
緑のチャオは不思議そうに眺めた後、木の実に手を伸ばしました。
チャオが木の実を手に取ろうとした、そのときです。
きゅぴ~ん
「ゲッ?」
緑のチャオと半漁人の手が触れた瞬間、半漁人は急に体の力が抜けて、その場にへたり込んでしまいました。
半漁人は、失念していました。相手はチャオで、自分は小動物。触れれば当然、
「ゲッ!?……ゲゲッ……」
キャプチャーされてしまいます。
目の前で、木の実をおいしそうに食べる緑のチャオを脳裏に焼き付けながら、半漁人の意識は無くなって行きました。
…
…
「……ゲッ?」
誰もいない、見慣れたロッカーの中で、半漁人は目覚めました。
とても静かです。半漁人は、しばらく現在の状況が把握できませんでした。
自分は何故ココで寝ていたのでしょう?
自分はココで何をしていたのでしょう?
しばらく寝ぼけていた半漁人でしたが、横に転がっている卵の殻を見て、全て思い出しました。
――そうだ!チャオは!?
「…ゲ…」
チャオは、傍にはいません。
半漁人は、慌ててロッカーを出て行きます。
そこで、幼稚園の入り口が開け放たれているのを、見つけました。
きっと緑のチャオは、ココから出て行ってしまったに違いありません。
「ゲゲゲッ、ゲッ!」
半漁人は、急いでチャオを探しにいこうとしました、しかし…
『じゃあな、店番頼んだぞ』
店長の言葉が頭をよぎります。
そう、自分は店の留守を任されたのです。自分が店を離れてしまったら、誰も店を守るものはいません。
「ゲーッ…ゲゲ……」
半漁人は、少しの間考えました。そして…
「ゲゲッ!」
やっぱり、あの子を放っては置けない!
半漁人は、幼稚園を駆け出していきました。