続続編 ~天上の音~

もうそろそろなのかなぁ・・・
最近、ご主人様は、自分のチャオを見つめては、そうつぶやくようになりました。
もちろん、本人のそのチャオは、何のことだか分かりません。
でも、もうそのチャオは、実年齢6歳、精神年齢も6歳。
もうそろそろ、転生の時期です。

始まりの唄 続続編 ~天上の音~

そう、そのチャオも、もう6歳。
チャオはこのごろが一番やんちゃ盛りです。
まだかわいらしく積み木で遊んでいたのならいいものを、
悪戯して積み木を投げたり、また、積み木にラクガキしたり。
いままでにこにこほほえましく、チャオの遊びを見ていればよかったご主人様も、
今はそういうわけにもいきません。

外は、真っ赤な紅葉で色づいています。
ところどころに、ちらほらと、黄色い葉も見えます。
赤い光をたたえた夕焼けの光が、優しく庭を照らしました。
秋は、街をやさしく包み込みます。

だというのに、今日も、そのチャオは、悪戯三昧。
それも、ご主人様のお気に入りの、大切なビーズの指輪のヒモをはさみで切って、
バラバラにほどいてしまったんですから、もう大変です。
ご主人様は、別の意味で顔から火を噴いてそのチャオを叱ります。
また、別の意味でのどからも手を出して、チャオの涙が枯れるまで、いや、完全に枯れても叱り続けます。

ご主人様は、そのチャオがいつものように部屋の隅にかけていって、うずくまるまって泣きはじめると、ドアを乱暴に閉めて、二階へ上がっていってしまいます。
そして、今日も決まり決まって二階で近所迷惑になりそうなほど音量を大きくして音楽を聴きました。
でも、ご主人様は、あるかどうかイマイチな肩を震わせて泣いていたチャオを思い出すと、
あれぐらいであんなに怒るんじゃなかった、まだコドモなのに・・・と、いつも後悔しているのです。

でも、最近は、それだけの後悔だけしている場合ではありません。
転生は、チャオがご主人様のことを好きでないと、できません。
でも、そのチャオは、時々、叱られたあとに、
「ご主人様なんか、嫌いだ~!」と言って、走り去っていくことがあります。
結局その後はにこにこと夕飯を食べていることがほとんどなのですが、
心配性でチャオを飼うのが初めてのご主人様は、気になって仕方ありません。
そんな心配をよそに、そのチャオは、今日も積み木を、生まれてはじめて持つ彫刻等で削って、床を木片だらけにしてしまいました。

たった1匹の鈴虫が、さみしそうにひとり鳴いています。
みんなと合唱したくて、誘おうとして、ひとり鳴き続けています。
満月は、もう昇り始めていました。

でも、そのチャオは、そんな鳴き声なんかものともせずに、すやすやと眠っていました。
家には、だれもいません。

そのときは、突然でした。
ご主人様の知らない間に、ちょっと出かけている間に。ただ、コンビニへいっただけの間に。

そのチャオは、やっぱり、そのときも一人ぼっちでした。
目が覚めたら、どんどん自分の周りがぼやけて、と思えば、目の前にマユが現れて、そしてそれはどんどん、そのチャオをおおいつくします。
そのチャオは、周りをくるくると見回していました。半透明なマユごしに。
そして、しだいに、そのチャオは泣きそうな表情をうかべていきます。
まるで、そのチャオの頭には、自分がひとりぼっちにされて、自分の世界が、飲み込まれてしまうような、そんな不安な思いが、こみ上げていきました。

泣きたい。でも、なぜか泣けません。
こんなに、まあるい目頭が熱いのに。
まるで、涙が足りていないみたい。

叫びたい。でも、なぜか叫べません。
こんなに、助けがほしいのに。
まるで、声を落としてきたみたい。

いますぐ、ご主人様に、会いたいのに─

でも、そのとき───



もう、そのときには、始まっていました。
あのマユが、どんどん、あのチャオを飲み込んでいっているのです。

でも、そのマユは、ちょっと変わった色をしていました。
なんというか、ピンクに見えれば灰色だし、灰色に見えればピンクだし。
まるで、ピンクと灰色の間を、さまよっているみたい。

チャオは、転生するとき、そばになついている人がいないと、転生できないそうです。
でも、途中でご主人様が駆けつけたときは、どうなるんでしょう?
そう、なんだか、テレパシーのようなものが届いて、つい、不安になって、駆けつけたときは。

もし、そばにご主人様がいなくても、とってもチャオとご主人様同士が愛し合っていたら、どうなるんでしょう?

このページについて
掲載号
週刊チャオ第134号
ページ番号
4 / 5
この作品について
タイトル
始まりの唄
作者
ぺっく・ぴーす
初回掲載
週刊チャオ第116号
最終掲載
週刊チャオ第134号
連載期間
約4ヵ月21日