続編 ~旅立ちの声~

始まりの唄 続編 ~旅立ちの声~

ある晴れた朝。

そのチャオは、ベットからのろのろと起き上がります。
そのチャオは前のご主人様に飼われていたころにくらべて、一つお姉さんになりました。

今日は、前のご主人様の、一年忌です。

一つお姉さんになったとしても、一年忌だなんて、まだやっぱりコドモのチャオは分かりません。
それで、いまのご主人様に、
「前のご主人様が、風になった日─もしかしたらお星様かもしれないけど─から、ちょうど一年たったのよ。」
と、教えてもらいました。
そのチャオはみじたくをすませると、ご主人様に手を引かれて、外へ飛び出しました。

そのチャオは電車に揺られて外の景色をぼんやりとみています。
ご主人様は、となりで本を読みながら、そのチャオを片手でつつみこんでいます。
その本は、ご主人様の一番お気に入りの、素敵な本でした。
その本を見ていると、そのチャオの頭に、また、前みたいに、その本に載っていた詩が思い浮かびました。

─風になるのは 優しい人 星になるのは 素敵な人─

今のご主人様が口ずさんでいた詩です。
この本に、ときおりでてくる、ご主人様の大好きな詩。
その詩は、優しい人も素敵な人も、この世の者に愛された人は、みんな優しくて素敵なものになれる、と言っているんだよ、とご主人様は言っていました。

─風になるのも 星になるのも みんなあなたが 愛を持つ証─

もちろん、そのチャオも、この詩は大好きです。
ご主人様の好きなものは、なんでも好き。
ご主人様は、優しくて素敵な物を知っているから!
そのチャオは、この詩とめぐりあってから、いつもそう言うようになりました。
まぁ、それでも、ご主人様の大好物のにんじんだけは好きになれないみたいですが・・・

─あなたが誰かを幸せにすれば みんながあなたを幸せにする─

前のご主人様は、いろんなことを教えてくれました。
でも、今度のご主人様も、負けないくらいいろんなことを教えてくれます。
この詩のことだってそう。
前のご主人様みたいに、にこにこしながら教えてくれます。
まるで、前のご主人様の生まれ変わりみたい。
きっと、今のご主人様も風か、星かのどっちかだ、と、そのチャオは思うようになりました。

─幸せにして 幸せになって 空気になって 夜空になって─

電車は、時折駅で止まりながら、あの幼稚園のある町へ向かいます。
最初に乗る予定の電車には遅れてしまいましたが、なんとかこの電車でも間に合いそう。
前の幼稚園の先生と、朝のうちに集合です。

電車は、どんどん速度を落としていきます。
もうすぐ、乗り換えの駅です。
電車が止まる前に、人ごみに流されないよう、ご主人様はそのチャオをだきあげてくれました。
案の定、電車が止まったとたん、人々は出口に波のように向かいます。
最初の駅までは電車はすいていたのに、都会のほうへ近づくにつれてこんなにも乗客が増えるだなんて、そのチャオはつゆとも思っていなかったのに・・・
なれない人ごみのなかで、ご主人様の手に抱かれて、不安そうな表情を浮かべるそのチャオ。
それに気がついたご主人様は、にっこりと微笑んで、そのチャオのポヨをなでてくれました。

─あなたが幸せになったのは あなたを見守る ものがいるから─

今のご主人様も、そして前のご主人様も、同じ。

─そよぐ風と きらめく星が あなたを 幸せへ みちびくから─

この詩の通り─いや、それ以上に─そのチャオを、幸せにしてくれます。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第122号
ページ番号
3 / 5
この作品について
タイトル
始まりの唄
作者
ぺっく・ぴーす
初回掲載
週刊チャオ第116号
最終掲載
週刊チャオ第134号
連載期間
約4ヵ月21日