続続編 ~天上の音~ つづき。
そのチャオは、真っ暗な闇の中にいました。知らない、闇の中です。
でも、ときどき、光あふれる空が見えることもあります。なんだか懐かしい、光の中です。
そして、闇の中では、誰かの「ありがとう」の気持ちが、
光の中では、だれかの「大好きだよ」の気持ちが、ちらほらと。
なんだか、どっちに行けばいいのやら、分からなくなってしまいました。
でも、「ありがとう」の気持ちには、なんだか、これでお別れというような響きがありました。
そして、「大好きだよ」の気持ちには、これからもずっと一緒だよ、という声も、一緒に、まるで聞こえてくるようです。
そのときです。彼方から、懐かしくって、あたたかい、そのチャオの大好きな声が、響きます。
─終わりの唄は悲しいけれど 終わりのときこそ 始まりの唄─
─その唄と共に 風になり 星になり そして始まりを導いて─
それは、聞き覚えのある声でした。
そう、そのチャオは、ほんとは愛されていたことが分かったのです。
だって、一緒にいるときは、たとえ叱られているときでも、暖かかったから。
─終わりは悲しいだけじゃない でも 終わるのは やっぱり悲しいから─
─「ありがとう」って言ってあげるけど やっぱり「大好きだよ」とも言いたいから─
ココロの中だけで、涙がぽろぽろ落ちました。
そして、ココロの中だけで、チャオの声が響きました。
─さぁ ここから帰っていって─
─さぁ こっちへ帰っておいで─
でも、それは、悲しみの涙じゃありません。
でも、それは、恐れた叫びじゃありません。
─大好きだよ、キミの事は、ずぅっと、ずっと。そう、また、いっしょにあそびたいから─
それは、旅立ちの声の後に響く、始まりの唄でした。
そう、そのチャオは、やっと分かったのです。
だって、ご主人様も、そのチャオも、お互いのことが、大好きだということを─!
マユは、ピンク色に光り出し─
あたりは、光り輝きます─
気がついたら、チャオは、ご主人様の腕の中にいました。
あたたかな、ぬくもりの中、ご主人様といっしょに。
~fin~