『ピューマの夢』2

約3年前の5月

屋敷の外は、雑草が沢山生えていて、庭は広く感じられなかった。
メルトはせめて屋敷に行くまでの道のりの雑草を刈っていたが、その周りはずっと生え続けていた。


メルト「・・・この庭もどうにかしないといけませんね。」


そう思って、屋敷の入り口をふと見てみると・・・一匹のチャオが倒れていた。


メルト「誰でしょうか・・・。」


そうメルトは思い、屋敷の入り口の鉄格子を開けて、倒れているチャオをメルトは抱えた。


メルト「HNN型のチャオ・・・なんでこんなところに。」
???「ふわぁ~。」


倒れているチャオは目を覚ましたのか、あくびをした。
倒れているチャオはしばらくメルトの顔を見て・・・。


???「うわぁ!誰ですかあなた!?」
メルト「それはこっちのセリフです。」


倒れているチャオ・・・これがピューマとこの屋敷の出会いであった。


フィル「で、あんたは珍しい花を探しているうちにここにきて、眠くなったからあんなところで寝ていたと。」
ピューマ「はい・・・ご迷惑をおかけしましたぁ・・・。」


屋敷の中の食堂で、フィルとメルトとピューマは椅子に座って話していた。
フィルはため息をついた。


フィル「厄介な奴いれたわね、メルト。」
メルト「それは・・・。」


それは、フィルの命令によって屋敷にいれたのであるが、彼女は素直ではないため・・・。


フィル「黙れ。」
メルト「黙りたくないのですが。」
フィル「だったら、そのことを言うな。」
メルト「かしこまりました。」


このようにいいくるめられてしまった。


フィル「とりあえず、あんた確か元庭師だって?」
ピューマ「はい・・・そうですぅ・・・。」
フィル「今は誰かに雇われているのかしら?」
ピューマ「誰にも雇われていません・・・たまに人に頼まれたりするだけで・・・。」


そもそも、雇われることはなかなか無い。
チャオの家に庭がある家はなかなか無いためである。
そのため、庭師というのは珍しいのである。


フィル「・・・・・。」
メルト「どういたしましたお嬢様?」


メルトがそう聞いてみると、フィルは意外な返答をした。


フィル「ピューマだったけ?あんた、ここで働かない?」


それには、メルトも少し驚いていた。
彼女自身がそのようなことはめったに言わないからだ。


ピューマ「え?本当ですか!?」
フィル「本当よ。ここにも住まわせてあげるし、食料もあげる。給料はどうしようかしら・・・。」
ピューマ「住まわせてもらえるなら給料はいりません!この屋敷の庭を好きにしてもいいんですね!」
フィル「まぁ、綺麗にしてくれるならいいわ。」
ピューマ「ありがとうございますー!」


ピューマはとても喜んでいた。
その隣でメルトはフィルに話しかけた。


メルト「どういうことです、お嬢様?」
フィル「この屋敷の庭がうっとしくなっているから、誰か雇いたかっただけよ。」
メルト「・・・本当にそれだけですか?」


そう聞くと、フィルは椅子から降りて、食堂の出口の扉に向かった。
すぐにメルトはついていって、ピューマにはここで待つようにメルトは指示した。

そして、二人は食堂からでて廊下を歩き始めた。

少しの間二人とも無言であったが、いきなりフィルはメルトの方に振り向いた。


メルト「お嬢様?」
フィル「手をみせなさいメルト。」
メルト「え?しかし・・・。」
フィル「いいから見せなさい。」


そういわれると、メルトはしぶしぶ手をフィルに見せた。


メルトの手は・・・・・傷がたくさんついていた。


フィル「あんたは無理をしすぎよ。せめて、庭の掃除だけは減らしたかったのよ。」
メルト「お嬢様・・・。」
フィル「それにね・・・。」


フィルはメルトに背を向けた。


フィル「この屋敷には3人しかいないでしょ・・・・・私だっていろいろと寂しいのよ。」


そう言って、フィルはどこかにいってしまった。


メルトは、フィルの本当の気持ちを初めて知った。

あのようなことがあったのならば・・・寂しいに決まっている。

そのことに気づけなかった自分を・・・少し悔いた。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第339号
ページ番号
21 / 41
この作品について
タイトル
月光のメイド
作者
斬守(スーさん,斬首,キョーバ)
初回掲載
週刊チャオ第331号
最終掲載
2009年9月16日
連載期間
約1年1ヵ月20日