『失敗ゆえの成功』2
フィルは無理やりなれないパンチをしたためか、手が痛かったせいか、手をぶんぶんと左右に振っていた。
話の内容をまとめるとこうだ。
俺が扉を押して開けた。
すると、そこにフィルがいて扉におもいきりぶつかった。
そして追いかけられた。
この程度の理由であった。
だけど、こいつのあの怒ったときの感じは本当に怖かった・・・。怒りのオーラがフィルの周りにあったかのように、口ではなにも言ってなかったが、それだけで怖かった。
フィル「とにかく、次からは気をつけなさい。」
ジェイド「どうやって気をつけるんだよ・・・。」
フィル「うるさい。いいから気をつけろ。」
扉の向こうを透視しろとでも言っているのかこいつ・・・。
ジェイド「それにしても・・・・・ここに来たのは初めてだな・・・。図書室とかあったのか・・・。」
メルト「そういえば、ジェイドさんここにきたことありませんでしたね。」
ジェイド「はい、地下とかあったのですね・・・。」
メルト「では、ジェネリクトと会うのは初めてですね。」
ジェイド「ジェネリクト?」
メルトは、図書室の奥のほうに向かって指を指した。
見ると、DSS型のチャオが食事をしていた。
ジェネリクト「やぁ。おはよう。」
それが、ジェネリクトさんとの出会いであった。
ジェイド「へー、じゃあいろいろと技をあみだしているわけですか・・・。」
ジェネリクト「まぁ、そういうことだね。」
俺達はジェネリクトさんの仕事について語っていた。
元は自分の興味からだが・・・・・。
ジェイド「いつからこの屋敷に?」
ジェネリクト「う~ん・・・・・メルトがこの屋敷に来た頃かなぁ・・・。」
メルト「確か、私がきて1ヵ月後にこの屋敷にジェネリクトが住み着きました。」
フィル「別に入れるつもりはなかったけどね。」
そう淡々と答えるフィル。
まださっきのことが怒っているのか・・・。
フィル「メルトが勝手にいれたのよ。」
メルト「しかし、許可をだしてくれたのは・・・・・」
フィル「うるさい、黙れ。」
と黙らせるフィル。
この様子からすると、ジェネリクトさんをこの屋敷に住んでいいことを許可したのはフィルらしいな。
素直になればいいのに・・・。
そう思いながら、図書館の辺りを見渡した。
沢山の本が納まっており、天井まで本が続いていた。
読めなそうな本も多そうだった。
ジェネリクト「・・・本に興味があるのかい?」
ジェイド「え?・・・う~ん・・・・・微妙ですね。興味があるのは読みますが。」
ジェネリクト「この本読んだことあるかい?」
そう言って、ジェネリクトさんは一つの本を取り出した。
茶色い本で、『幻闘術の全て』と書かれてあった。
・・・どこかで見た気がするんだが・・・・・。
ジェイド「・・・あ。思い出した。じいちゃんがその本持っていたような。」
ジェネリクト「おじいさんが持っていたのかい。どんなおじいさんなんだろうね・・・。」
そう言われると、ばりばり元気なじいちゃんだと答えるしか他ならない。
今でも、大きな岩を破壊するほどの幻闘術を扱える人だからなぁ・・・。
ジェネリクト「この本は僕が書いたんだよ。」
ジェイド「へー。凄いですね・・・。」
その時、ジェネリクトさんは何かを思いついたように言った。
ジェネリクト「そうだ。幻闘術の開発練習をするから、屋上にきてくれないかな?」
そう言われてもちろん俺はついていくことにした・・・。
屋敷に屋上まであるのかよ・・・。
屋上は、やはり広く・・・というか狭いところがあるのかこの屋敷。
柵で囲まれており、屋上の入り口の部分を見てみると大きな時計が壁についてあった。
ジェネリクト「庭で実験してもいいんだけど、ピューマさんに怒られるからね。」
あのピューマが怒るのか・・・・・。
そう思っていると、なにかぶつぶつとジェネリクトさんは唱え始めた。
ジェネリクト「ちょっと危ないから離れていてね・・・。」
そして、ジェネリクトさんの周りに氷と雷の力が集まってきた。
そう思った次の瞬間、ジェネリクトさんの目の前に氷の柱ができ、その周りを雷がバチバチと鳴り響いた。
俺のポヨが!に変わった。
ジェイド「な!?」
ジェネリクト「『雷氷の柱』・・・・・上手くいったようだね。」
そして、雷が落ちて氷の柱は砕け散った。
ジェネリクト「でも、合成でできる術だから二人以上いないと無理だね・・・。」
ジェイド「一人じゃできないのですか?」
ジェネリクト「普通、チャオは一つの属性の幻闘術しか使えないんだよ。僕は特別で6つ扱えるけどね・・・確か、もう一人6つ扱えるチャオもいるらしいけどね。」
幻闘術か・・・・・。
俺のじいちゃんは使えるけど・・・俺も含めて家族全員使えないんだよな・・・。
フィル「まぁ、扱えても普通の人達にはなにも役にたたないんだけどね。」
と後ろからフィルの声がした。
振り返ると、フィルとメルトさんがいた。いつの間に後ろに回りこんだんだ?
ジェネリクト「お嬢様は厳しいねぇ・・・。戦争になった時は役立つかもしれませんよ?」
フィル「戦争なんて、チャオがするはずないわよ。するのは人間のみ。」
ジェネリクト「まぁ、現実はそうなんですけどね。前にチャオの森を救ったチャオ達は幻闘術を使っていたらしいじゃないですか。」
何の話だ?
フィル「あれは特別でしょ。あんな天変地異になるような出来事、めったにないでしょうに。」
ジェネリクト「お嬢様は厳しいなぁ・・・。」
フィル「お嬢様が厳しくて何が悪い。」
ジェネリクト「・・・・・この人に口で勝てる人はいないだろうな。」
フィル「あたりまえよ。」
よく分かんないが、とにかくフィルに口喧嘩で敵う人はいないだろう。
とにかく、幻闘術に興味をもった俺はジェネリクトさんに頼んでみた。
ジェイド「ジェネリクトさん。他に思いついた術はないんですか?」
ジェネリクト「ん?あぁ、もう一つだけあるよ。」
そう言って、ジェネリクトさんは手に持っていた本を読み始めた。
しばらく読んだ後、本を閉じる。
ジェネリクト「じゃあ、行くよ・・・・・『ファイヤードラゴン』」
そう言うと、ジェネリクトさんの腕から炎の龍が現れた。
この人本当に凄いなぁ・・・・・。
?
あれ?この龍、俺に向かってきていないか・・・?