『失敗ゆえの成功』3

その瞬間、メルトさんが俺を抱えて走り始めた。
ちょ!え!?なになになになに!?


メルト「ジェネリクト。どういうことですかこれは?」


メルトさんは走りながら、ジェネリクトさんに向かって問いかけていた。
後ろを見ると、炎の龍が追いかけてきていた。


ジェイド「おおおえあ!?なんで俺を襲ってくるんだ!?」
ジェネリクト「御免。失敗のようだ。」
フィル「たまにあるのよね・・・まぁ、おもしろそうだし、今回は黙って見ておくわ。」
ジェイド「フィルてめぇ!?」
フィル「あぁ、メルトとデート楽しそうねぇ・・・。」
ジェイド「こんなデートがあるかあああああああああああああああ!!」


そう言いながらもメルトさんは走って逃げていた。
てか、メルトさん早すぎるだろ!走りタイプの俺よりも早く走っているぞ!?


そして、メルトさんはメイド服のポケットの中からスーパーボールを取り出し龍に投げつけた。

燃え尽きただけで効果がない。

トランプを取り出し、手裏剣のように投げつけた。

燃え尽きただけで効果がない。

石を取り出し、投げつけた。

効果がないようだ。

リングを取り出し、投げつけた。

効果がない・・・・・てか、お金を投げつけるなよ!


他にもメイド服から、いろんな物を出して投げつけていたが効果がないようだ。
そんなにいろんなものを持っているのが凄いのだが・・・。


フィル「ほれー頑張れ頑張れ。」
ジェイド「お前・・・他人事と思いやがって!!」
フィル「他人事じゃない。」
ジェイド「てめぇ!!」
フィル「おぉ、怖いわ・・・でも何もできやしないくせに。」
ジェイド「後で覚えとけよお前・・・。」
フィル「悪役が逃げる前に言うセリフねそれ。なんも怖くないわよ。」


決定。あいつ一回後でぶん殴ってやる!

そう思った瞬間、メルトさんは俺を抱えて柵を越えて屋上から飛び出した。


ジェイド「え・・・。」


死んだかと思いきや(と言ってもチャオは転生するかどうか繭になるだけだが)、メルトさんは空を飛び始め、ゆっくりと屋敷の庭に降りた。
なんでもできるんだな、この人・・・。

そして、一本の木の前で止まった。


ジェイド「メルトさん!炎の龍こっちに来ますよ!逃げないと・・・。」
メルト「いえ、消滅させないときりがありません。」


と言ってもどうやって消滅させるんだ・・・?
そして、龍が俺達を襲う瞬間にメルトさんは俺を抱えて横に避けた。


そして木に炎の龍が当たり、木が燃えた・・・・・。
炎の龍は消滅したようだ。


ジェイド「助かった・・・・・。」


そう思っていたのはつかの間だったらしい。
木に水がかかって、火が消滅した・・・。
水がきた方向をみると・・・HNN型のチャオがホースを持って立っていた。


ジェイド「あ・・・ピューマさん・・・。」


HNN型のチャオ・・・ピューマはニコニコしながら言った。


ピューマ「そこの二人・・・ちょっと話がありますから座って下さってもよろしいでしょうか?」
メルト「ピューマさん。これには訳がありまして・・・。」
ピューマ「いいからそこに正座してくださいー。」
メルト「しかし・・・。」
ピューマ「いいから正座しなさいー。」


そうして、俺とメルトさんは正座して、ピューマさんの説教を聞き始めた・・・。


その様子をフィルとジェネリクトは屋上から見ていた。


フィル「この屋敷の庭師のピューマだったら、いくら温厚とはいえそれは怒るわよ。自分で育てた木を燃やされたわけだからね。」
ジェネリクト「燃やした犯人は僕だけどねぇ。ピューマって普段はかわいい子なのにねぇ・・・。」
フィル「・・・あいつら二人を助けにいかないの?」


そうフィルは言ったが、ジェネリクトは首を横に振った。


ジェネリクト「僕まで説教受けたくないんでね。」
フィル「ふーん。でも、後からあの二人に怒られるわよ?特に親友のメルトだったらなおさらじゃない?トランプで真っ二つにされるかもよ?」
ジェネリクト「そこまで彼女はしないよ・・・だけど、死なない程度にやられそうだから怖いね・・・。」


そう言って、本を開いて何かを書き始めた。


フィル「何を書いているの?」
ジェネリクト「まさかあの術にホーミング機能がつくとは思わなかったからね。ある意味術は大成功だよ。だからメモをとっておくのさ。」
フィル「そんな暇あるなら、さっきの龍を幻闘術で消せば良かったのにね。」
ジェネリクト「・・・・・確かにそうだったね。でも、お嬢様は楽しめたんじゃないかな?」


フィルは薄く笑ってこう答える。


フィル「まぁね。あういう事を見ているの暇がつぶせて面白いし。」
ジェネリクト「Sだなぁ・・・。」
フィル「Sって何?」
ジェネリクト「知らなくていいと思うよ・・・・・じゃあ、僕も叱られにいくよ。後からメルトに何されるか分からないし・・・ピューマだけですむならそっちの方がいいよ。」


そう言って、ジェネリクトは屋上から出て行った。
屋上にはフィルが一人残った。

フィルは屋上から叱られている二人を見て、独り言を言った。


フィル「おもしろいやつらね・・・・・ありがとう、そしてごめんなさい。」


そう言って、屋上からフィルも出て行った。
屋上には誰もいなくなった。


ちなみに、ピューマの説教はジェイド、メルト、ジェネリクトの三人で聞いて、約1時間程度聞かされていた。

だけど、ジェネリクトにとっては失敗から生まれた成功を手にいれたのだから、そこまでつらくはなかった。


第三話「失敗ゆえの成功」              終わり

このページについて
掲載号
週刊チャオ第333号
ページ番号
13 / 41
この作品について
タイトル
月光のメイド
作者
斬守(スーさん,斬首,キョーバ)
初回掲載
週刊チャオ第331号
最終掲載
2009年9月16日
連載期間
約1年1ヵ月20日