『月光のメイド』3
ジェイド「想像はしていたけど・・・・・やっぱり広いな・・・。」
浴室は、もはや大浴場となっていた。
これなら人間が20人は余裕に入れるだろう。
メルトさんは僕をここに連れて来た後、掃除をしにいったようだ。
風呂につかってみた・・・すぐに分かる。
これは天然の温泉だ。たいしたものだ。
チャオは綺麗な水がなくては暮らしていけない。
そのため、水がどのような状況かはすぐに分かる。
おそらくジェイドもチャオであるから、天然でできた温泉だということが分かったのだろう。
ジェイド「あのお嬢様といい、変な屋敷だ・・・。住んでいる人は少なすぎるし、メイド服着ているチャオもいるし、人間でも十分暮らせる広さといい・・・。」
ジェイドは浴室・・・・・いや、大浴場でいろいろ考えた。
この屋敷のこともまだ気になるし、自分はこれからどうすればよいのかも分からない・・・・・下手に外を出歩くと、また捕まってしまう・・・。
・・・・・今後のことについてフィル・・・いや、メルトさんに相談することにしよう。聞きたいこともあるし。
そう考えをまとめ、大浴場でゆっくりすることにした。
メルト「今後のことについて・・・・・ですか。」
ジェイド「いつまでもここにいても迷惑でしょうし・・・・・。」
フィル「えぇ、迷惑よ。」
時は夕方。
食堂で、メルトさんとフィルで今後のことについて話し合うことにした。
ちなみに脳内でフィルと呼び捨てにしているのは、僕的にあの人が気に入らないからだ。
今もすっぱりと言われて反抗したいが、我慢することにする。
メルト「とりあえず今日一日はここに泊まって、明日にあなたの親の所へ行きましょう。一日経てば、その人攫いもどこか違うところを探すと思いますし。」
ジェイド「はい、分かりました・・・。」
メルト「ということでよろしいですね、お嬢様。」
そう言って、フィルに確認をとる。
また、ポヨがぐるぐる巻きになっている。
フィル「はぁ・・・一日だけよ。明日になったら、さっさと帰れ。」
ジェイド「なんだ・・・・・ぁ・・・・ありがとうございます。」
途中で反論を返そうと思ったが、凄い目つきで睨まれたため、反論できなかった。
本当に怖かった。
ジェイド「・・・ところで、この屋敷は誰が働いて稼いでいるのですか。」
フィル「・・・・・。」
メルト「ジェイドさん、すみません。そこのところの話は、あまりお嬢様もしたくはないようです。」
とメルトさんに言われ、
ジェイド「あ、はい。分かりました・・・。」
と返答をした。フィルは怒った顔をしていた。
フィル「少しは発言する時は、人を傷つけないような言葉遣いになるようにしなさい。」
あんたがそういうのか。
フィル「とりあえずディナーにしましょう。メルト。今日は何かしら?」
メルト「今日は和食となっております。」
和食?なんだそれ・・・・・。
料理は白い粒の物体に、赤い刺身がのった料理だった。
フィル「ほら、あんたも食べなさい。」
ジェイド「あ、はい。」
そう言われて食べてみた。
食べたことはなかったのだが、とてもおいしい食べ物だった。
ジェイド「こ、これは何という料理なんですか!?」
フィル「寿司よ。なんだ、あんたは人間にあったことがないのね。」
ジェイド「へー、人間はこんなもの食べているのか・・・ってことは、フィル・・さんは人間にあったことがあるんですね。」
フィル「なんでそうなるのよ。」
あきらかにさっき言ってることと矛盾している気が・・・・・。
フィル「こういうお金持ちは、世界の食べ物を食べることも可能なのよ。今日は珍しく和食だっただけで、寿司を食べたくなったのよ。」
どうやらフィルはいろんな食べ物を食べているらしい。
メルト「では、私はピューマさんとジェネリクトを呼んできますね。」
と言って、部屋を出て行く。
だが、ある侵入者のせいでその行動は遮られた。
扉が強くメルトの前で開けられた。
ダーク1「ようやく見つけたぜ。糞小僧が。」
そこには、ジェイドの人攫い達がいた。
ジェイド「お前らどうしてここを・・・。」
ダーク1「勘だ。長年こんなことやってるとすぐに分かるんだよ。」
ジェイドは椅子から立ち上がった。
フィル「ちょっとあなた達。」
ダークチャオ、3人ともフィルの方を向く。
ダーク3「何だお前?」
フィル「玄関前の鉄格子の扉にある、インターホンを鳴らしてきた?」
ダークチャオ達は微笑した。
ダーク3「そんなものするわけないだろ。」
ダーク2「というか、あいつも結構高そうな感じするぜ!こいつもさらっていかないか?」
ダーク3「あぁ、それはいいな。」
とダークチャオ達は会話をし始めた。
ジェイドは情けない姿で怯えていた。
すると、フィルがこう言い始めた。
フィル「金に目が眩んだ悪党どもが。人を傷つけて、自分は金を手に入れてそれで楽しいとは、あんた達の人生はろくでもない屑だった人生だったのね。」
ダーク1「なんだとこらぁ!?」
フィル「金以上に大切な物を見つけられない人は、もう金しか信用できないろくでなし。そんなやつ悪役で結構、そして無様にやられろ。」
ダーク3「・・・おい。あいつの口、二度と開かないようにぶち殺せ。」
フィル「そしてムカついた奴は、とりあえず殺すという・・・なんとも分かりやすい連中・・・。」
フィルは椅子から立ち上がった。
そして、ジェイドと一緒に机のもの影に隠れた。
一度フィルは顔をだし、メルトに言った。
フィル「メルト、ひさしぶりの大きな命令よ。あいつらを追い返しなさい。」
そしてメルトは手を地面につけて、
メルト「了解しました。」
手を天空に向かって、手を上げた。
僕はその時始めてみた光景にびっくりした。メルトさんとフィル以外の人のポヨは!をしていた。
そして辺りはすぐに夜になり、月光がメルトを照らしていた。
その姿はあまりにもかっこよく、全てのチャオが一時見つめていた。
メルト「全てはお嬢様のために。」
メルトは、メイド服の中からボールを取り出し、あちこちに投げ始めた。
ダーク1「どこに向かって投げてやがる!!」
ダーク1はメルトに向かって走り出したが、後ろからの衝撃が来て倒れてしまった。
衝撃を与えたものはボールだった。
ダーク1「ッ!?なんでこのボールが後ろから!?」
ダーク2「気をつけろ!そいつはただのボールじゃない!かなりはねるぞ!!」
ダーク2の言うとおり、ボールはあちこちはねまわり、そして的確に当たっていったのであった。スーパーボールを使ったのだろう。
ダーク3「くだらん攻撃・・・。」
ダーク3はナイフを持ってメルトに襲い掛かったが、布状の物でナイフを刺さらせ、大きく布を振り払って上手く攻撃をそらした。
その布状の物の正体は、窓に飾られていたカーテンだった。
メルトは、椅子をダーク2に投げた。
ダーク2「うわっと!・・・へへ、がら空きだぜ!!」
そう言って、ダーク2はナイフでメルトを襲おうとしたが。
ダーク2「がッ!!」
後ろから衝撃で、倒れてしまった。
ダーク2が、ピンク色の繭に包まれていった。
チャオは危険になると、(例えば寿命など)繭に包まれていく。ピンク色の繭は人生が幸せの証。そして転生することができる・・・。
メルト「・・・こんなことしていても、幸せだったということですね。」
だが、転生したところで能力をほぼ失うチャオにとって、敗北と同じ事なのであろう。
ダーク1「こいつ・・・椅子をブーメランの代わりにしやがった!」
メルトの投げた椅子は、ブーメランのように戻ってきて、ダーク2に当たっていた。
そして、ダーク1にフォークが刺さった。
ダーク1「・・・なん・・・だとッ・・!?」
音速の速さで投げたフォークがあたったのだろう。
それが倒れる前の遺言だった。
もっとも、ピンクの繭に包まれたのだが・・・。
ダーク3「お前・・・・・只者じゃないな・・・。」
メルト「それは褒め言葉として受取っておきましょう。」
そんな会話をしている最中、フィルとジェイドは隠れて戦いを観戦していた。
ジェイド「メルトさん・・・強い。まるでマジックのようだ。」
フィル「メルトにとってはマジックなんじゃないかしら?」
そうフィルが言った。
フィル「メルトはね、戦うときに何故か月光が照らす夜になるの。その時点でマジックでしょ。そしてもう一つ、特殊な戦いをするの。」
メルトは、ポケット中から小さい黒いケースを取り出した。
黒いケースの中身はトランプだった。
ダーク3「ふざけるんじゃねぇ!!」
そうやってダーク3はナイフを投げたが・・・・・。
フィル「メルトはね・・・・・どんなものでも全ての道具を武器として扱うことができるの。」
メルトはトランプを投げて、ナイフを真っ二つに破壊してしまった。
ダーク3「!!!!??」
驚いている間にトランプを投げられ、ダーク3の額に刺さった。
そして、ピンク色の繭に包まれていった。
ジェイド「トランプで、ナイフを破壊!?」
ダークチャオ達は全てやられてしまった・・・。
フィル「メルトはそこら辺のメイドとは全然違う。人はみんな彼女のことをこう呼ぶのよ。」
月光を呼び出し、月光の似合うメイド。
月光のメイドと・・・・・。